大胆なデザインのくま鉄の観光列車

2020年7月豪雨の球磨川の氾濫(はんらん)で被災し、人吉温泉―湯前間の湯前線全線(24.8キロ)で運転を見合わせる熊本県の第三セクター鉄道・くま川鉄道(くま鉄)について、国土交通省は2021年5月18日、「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金」を活用して、復旧支援する方針を発表した。国が復旧費の97.5%を実質補助、残りは熊本県や沿線自治体が県や人吉球磨地域の市町村が負担することで、くま鉄の持ち出しをゼロにして早期の運行再開を実現する。

くま鉄の復旧手法については、熊本県と人吉市、湯前町など関係10市町村で構成するくま川鉄道再生協議会が検討。その結果、線路や用地などの施設を沿線自治体に移管、自治体側は施設をくま鉄に無償で貸し付け、同社は列車運行に専念する、いわゆる上下分離方式のスキームで復旧する方針を決定した。

これを受けて国交省鉄道局は、復旧後の鉄道の維持は可能と判断。災害復旧事業費補助の適用を決めた。

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上下分離で事業者の負担を軽減、地方鉄道の早期復旧につなげるのは、2021年3月に全線運転再開した長野県の上田電鉄でも採用された。2019年10月豪雨で流失した千曲川橋梁は、地元・上田市が再建された橋梁を保有。上田電鉄が施設使用料を市側に支払い、列車を運行する。

くま鉄は今回の支援決定を受け、早期復旧が可能な肥後西村―湯前間19.0キロについて今秋の運行再開を目指す意向だ。

文:上里夏生
(写真:hrmk / PIXTA)