三セク40社が鉄印で共演

鉄印帳と愛知環状鉄道、鹿島臨海鉄道、くま川鉄道の代表3社の鉄印。(画像:日本旅行)

ツアーの目玉は、何といっても「鉄印」。鉄印帳の旅については2020年8月に本コラムで紹介させていただいたので、繰り返しを極力避け、鉄道愛好家に受け入れられた理由、さらに「鉄印帳を発想させたのは、実はある女性だった!?」という、取材秘話(?)を披露しましょう。

三セク鉄道とは、国鉄改革でJRに引き継がれず、地元に移管された鉄道。最近は整備新幹線の開業でJRから経営分離された在来線も仲間入りし、有名どころは三陸鉄道、北越急行、智頭急行、肥薩おれんじ鉄道など。三セク協には全国40社が加盟します。

鉄印帳の旅は、2020年7月に始まったイベント。田舎の鉄道に乗って、帳面に朱印を押してもらう。要はそれだけですが、テレビや新聞、雑誌などで80回も紹介されたそう(うち3回は本サイトです〈笑〉)。

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一般に鉄道の利用促進策は、沿線に絶景スポットがあるとか、○○駅のテーマパークに新しいアトラクションが登場したとか、××駅近くに名店グルメがあるとか、列車で行く目的地の情報を発信します。ところが、鉄印帳の旅は鉄印を押してもらうことが旅の目的です。

鉄印を押してもらった後、駅近隣のスポットを観光したり、お土産を買ったり、何か食べたりするので、沿線は完全に無関係といえませんが、とにかく列車に乗ってもらうのが、最大のPRポイント。これなら沿線に観光名所やグルメのない鉄道も、お客さんを呼び込めます。

鉄印帳のヒントは社長の奥様のお出掛け!?

鉄印帳を発想したくま川鉄道は2020年7月豪雨で全線運休中。先ごろ国土交通省の支援が決まり、今秋の区間運行再開を目指します。(イメージ写真:hrmk / PIXTA)

ここまでは、新聞や旅行雑誌に出ている話。せっかく再度の執筆機会をいただいたので、誰が鉄印帳を思い付いたのか、もう少し突っ込んで取材してみました。

鉄印帳を考え出したのは、実は熊本県のくま川鉄道の永江友二社長。そして、ヒントを与えたのが社長の奥さんです。奥さんは四国八十八ヶ所めぐりが趣味で、朱印を集めていました。私も四国の親戚宅で見せてもらったことがありますが、朱印帳はなかなか見栄えある冊子で、思わず人に見せたくなります。ということで、「商売の種は身内にあり」を鉄印帳の話題のオチにしましょう。

鉄旅ではほかに、クラブツーリズムの「ひとりの贅沢『九州鉄道三昧~4社共同特別企画・くまもと応援編~3日間』」がエスコート部門賞、JTBの「豊肥本線に乗ろう!阿蘇・熊本」がパーソナル部門賞、日本旅行の「せとうち広島デスティネーションキャンペーン・JRで行く!瀬戸内スペシャル」がDC(ディスティネーションキャンペーン)賞、クラブツーリズムの「とどけよう元気・東日本応援企画お座敷列車華で行く館山日帰りの旅」が国土交通省鉄道局長賞(特別賞)、小田急トラベルの「北海道から九州まで!日本列島鉄道縦断ツアー」が旅に出よう!日本を楽しもう!賞(特別賞)、東浦拓斗さんの「四国の三兄弟に会いに行く!小学生が考えた四国全県制覇の旅!!」が一般部門ベストアマチュア賞を受賞しました。

ベストアマチュア賞を受賞した東浦さん。小学生の受賞は初めてとのことです。(写真:鉄旅オブザイヤー2020事務局)