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イメージ画像:東芝
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ガラガラガラガラ……という一定のディーゼルエンジン音、ヒーンというVVVF制御とモーター起動音……。これまで体感したことのない鉄道車両の発進サウンド。

JR東海が2022年7月1日に在来線特急に投入する新型ハイブリッド車両 HC85系。

そのキャラクターは後半で記すとして、今回は燃料消費率に注目。

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特急ひだ・南紀などで活躍する従来のJR東海 特急型気動車(ディーゼルカー)キハ85系は、エンジンの動力を変速機・推進軸を通して伝え、車輪を直接駆動させる、一般的な気動車と同じ仕組み。1両に2機のディーゼルエンジンを載せ、1機で1台車を駆動させていた。

今回の新型車両 HC85系は、発電用のエンジンが1両に1機になり、変速機や推進軸も不要に。メンテナンス軽減やそのほかの機材を搭載するスペースをつくりだした。

また、駅停車中は発電用エンジンを停止(アイドリングストップ)し、その前に回生ブレーキでつくった電力をバッテリーに蓄電し、その電力を車内の空調や照明に使う。

これで、駅停車中などに排気ガスや騒音をおさえられ、ホーム上や駅周辺の環境へも配慮。

こうした設計によって、ディーゼルエンジンを1両に2機搭載する現行気動車キハ85系に比べて、HC85系は燃費が約35%も向上することが確認されたという。

JR東海 在来線特急用 新型車両 HC85系

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JR東海 HC85系は、ディーゼルエンジンで発電した電力と蓄電池の電力とを組み合わせ、電動モーターを回して走る、シリーズハイブリッド方式採用車。

シリーズハイブリッド方式の鉄道車両としては国内初の最高速度120km/hの営業運転を想定して設計・製造。2023年3月期に58両、2024年3月期に6両を日本車輌製造でつくる予定。

4両編成を基本とし、各車の形式は、クモハ85-0(Mc1)+モハ84-0(M1)+モハ84-100(M2)+クモロ85-0(Msc)。

この形式のとおり、パンタグラフを搭載しないHC85系は、非電化区間(架線がない線路)も走れる電車(モ)という位置づけ。クモロというように、一部グリーン車座席もある。

各車両に載るエンジンは、横型6気筒直接噴射方式(電子制御)で、定格出力は336kW。

エンジンの出力で電力を生む主発電機は、永久磁石同期発電機で定格出力は245kW。

台車のなかに組み込まれた主電動機も永久磁石同期発電機で定格出力は145kW。

鉄道用として国内で初めてモーターと発電機の両方に全閉式永久磁石同期機を採用している。

このHC85系は、2022年度から営業運転に入るべく、先行導入された試験車両が試運転を重ねている。

登場後は、特急ひだ(名古屋・大阪~高山・富山など)や、特急 南紀(名古屋~新宮・紀伊勝浦)を担い、現行の特急用気動車(ディーゼルカー)キハ85系を置き換えていく。