暮らしやすく幸せ感じる沿線づくり(阪急)

続く阪急電鉄。上村正美専務・都市交通事業本部長が、「次世代の鉄道と沿線まちづくり」のタイトルで、暮らしやすく幸せを感じる沿線づくりの取り組みを紹介しました。

阪急電鉄にも、新線計画があります。「阪急なにわ筋・新大阪連絡線(仮称)」は、うめきた~十三―新大阪間の鉄道新線。関空に降り立った訪日客に十三経由で京都、宝塚、神戸を訪れてもらいます。

もう一つの新線が、「阪急大阪空港線(同)」。宝塚線曽根と伊丹空港を結び、梅田―伊丹空港間を直行できます。各線とも開業時期などは未定ですが、上村専務は実現に向けて努力する考えを示しました。

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阪急グループの北大阪急行にも新線計画があります。北大阪急行線の千里中央―箕面萱野間約2.5キロの延伸。開業目標は2023年度です。

期待される整備効果は、「道路渋滞の緩和」と「バス交通に比べた所要時間短縮」。北急はOsaka Metro御堂筋線の相互直通路線で、路線延伸で大阪市中心部へのアクセスが大きく向上します。

ある時は架線集電、またある時は第三軌条集電。その正体は?(近鉄)

近鉄の戦略を明かしたのは、安東隆昭取締役常務執行役員・鉄道本部副本部長。「『選ばれる近鉄』に向けた戦略・取り組み」の特別講演で、鉄道ファンが関心を持つのは多分これ。「可動式第三軌条用集電装置」と「フリーゲージトレイン(軌間可変電車=FGT)」でしょう。

本サイトでも技術開発の方向性が紹介された、可動式第三軌条用集電装置は架線電化の近鉄奈良線と第三軌条電化の近鉄けいはんな線・Osaka Metro中央線を直通運転する集電システムです。

可動式第三軌条用集電装置概要(画像:近鉄)

近鉄の部内的な呼び方は「IR列車」。大阪市が、此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)への誘致を構想する、IR(統合型リゾート)への来訪客を奈良や京都に誘います。

国交省からの委託で開発に取り組むのがFGT。線路幅1435ミリ(標準軌)の近鉄橿原線と、1067ミリ(世界的には狭軌ですが、日本ではJR在来線など幅広く採用されます)の近鉄吉野線を直通運転できるようにして、京都、奈良(標準軌)などから、吉野方面(狭軌)へ乗り換えなしで向かえるようにします。

近鉄が最近、力を入れるのがざん新な車両デザイン。「青の交響曲(シンフォニー)」には、一般的な工業デザイナーに代わり、店舗デザイナーを起用。「ひのとり」プレミアム車両の本革シートのメンテナンスには、自動車関連メーカーのアドバイスを受けます。

RDEで阪急の観光特急「京とれいん雅絡」のこだわりを語る(アルナ車両)

最後にワンポイントですが、技術展2日目に開かれた「レイルウェイ・デザイナーズ・イブニング(RDE)」。メーカーや鉄道事業者に加え、デザイン事務所、フリーで活動するデザイナーが情報交換する場として今回、8回目を迎えました。

全体テーマは「心地よさをデザインする」。日本鉄道車輌工業会の「鉄道車両デザイン研究会(RDA)プレゼンテーション」では、阪急電鉄が2019年3月にデビューさせた観光特急「京とれいん雅洛(がらく)」をインハウス(社内)デザイナーとして手掛けた、アルナ車両第1事業部営業・技術部(設計)の大村知也部長が、車両へのこだわりを語りました。

大村部長がデザインを手がけた「京とれいん雅洛」(写真右)。神戸線の通勤用7000系電車を改造。コンセプトは「乗車したときから京都気分」で、リニューアル前の3ドアから2ドアに。中央ドア部は丸窓に変えて京扇を表現します(写真:鉄道チャンネル編集部 2019年3月撮影)

雅洛は、「和モダン・京町屋」がデザイン面のモチーフ。料金が不要の特急として、リピーターや雅洛ファンを確保するのがデザイナーのこだわりです。

列車は6両編成ですが、車両ごとにデザインを変えて行きと帰り、さらに乗るたびにフレッシュさを感じてもらう趣向。大村部長は、「七宝紋」「更紗」「業平菱」「鱗(うろこ)文様」といったキーワードを例示。「ぜひ一度ご乗車いただき、列車の魅力を感じてほしい」と参加者に呼び掛けました。

コラム前編はここまで。後編では、出展者や会場で見つけた新技術をご紹介します。ぜひご覧ください。

記事:上里夏生