リモートワークやワーケーションなど、新型コロナウイルスの影響でいったんはオフィスを大幅に縮小したり、手放したりする企業もあった。

ここにきてコロナ収束の兆しがみえはじめると、オフィス回帰へと舵を切り返す企業の姿もみえはじめた。そこで直面する課題が……。

敷金の支払いで成長機会を失う「敷金ロス」なる衝撃課題!

生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なうネオマーケティングは、5月27日~6月2日の7日間、従業員規模300名未満で資本金が3億円未満の賃貸オフィスビルに入居する全国の経営者1000名を対象に調査したところ、約5割の経営者がオフィスの重要性を再認識し、オフィス移転で引越費用や敷金がネックになっていることが明らかに。

なかには2億円もの敷金を払っている企業や、敷金の支払いで成長機会を失う企業もみえてきて、まさに「敷金ロス」で苦しむ実態がみえてきた。

そこで、ネオマーケティングによる「コロナ禍でのオフィス利用と働き方に関する調査」の結果をふまえ、中小・スタートアップは無視できない、本来、成長のために使えた資金を、敷金として支払うことで、成長機会を失う「敷金ロス」の実態と、「敷金ロス」圧縮の重要性について、明治大学 政治経済学部 飯田泰之 教授・経済学者に聞く。

まずそのその衝撃結果が↓↓↓

◆リモートワークを取り入れた中小・スタートアップは6割。さまざまなデメリットも。

◆アフターコロナではリモートワークの頻度は変わらないが39.3%。リモート減少予測も32.9%と僅差に。ハイブリッド化が進む傾向に。

◆コロナ禍でオフィスの重要性増す。理想のオフィスはコロナを考慮し「ゆとりのある空間」が最多。

◆理想のオフィスを求め46.8%の経営者が移転をしたいと回答。いっぽう、移転したくない経営者は「引越し費用」「敷金(保証金)」が要因に。

◆敷金の平均は455万円。中には2億円も。経営者の64.6%が「敷金は高い」と感じつつ、49.6%が「取られて当然」という根強い考え。しかし、3人に1人が「具体額が分からない」。大きな初期コストのはずが、低い関心。

◆資金調達を行なった経営者の中で、敷金がなければ成長できたという声が45.6%。敷金が理由で39.3%が「社員雇用」をセーブし、さらに42.7%の経営者が「成長への投資」をセーブしていた。

「敷金ロス」の圧縮は重要―――明治大学 飯田泰之 教授

こうした巨額の敷金を支払うことで、本来の成長資金に使えずに成長機会を損失している事態が明らかになったいま、明治大学 飯田泰之 教授は、「敷金ロス」の圧縮は重要と説明する。以下、明治大学 飯田泰之 教授の解説↓↓↓

「敷金・保証金は事業展開の大きな足かせとなる。中小・スタートアップ企業を対象とした本調査によれば、敷金・保証金額の平均値は455万円、最大2億円となっている。こと企業のスタートアップ時に十分な余裕資金を持つ事業主は多くはない。

ごく小規模な事業を含めても、主に自己資金で事業をする経営者は28.7%にすぎず、創業から間もないほど、企業規模が大きいほどにその割合は低い」(飯田教授)

不動産オーナーも預かるメリットが薄れる敷金、見直しが進む可能性

「金融機関からの借入が主な資金調達手段となる企業においては、とくに400万円を超えるオフィス開設・移転の初期費用は無視できる金額ではない。これは敷金・保証金支払いによって失われた支出を資金調達手段別に観察することからも理解できる。

「敷金(保証金)がなければできたこと」について、金融機関から借入をしている企業は主に自己資金で経営を行なう企業に比べ、「事業成長の足かせになったと思う」という選択肢への同意が10pt以上、「借入金を増やさなくてはいけなかった」との回答で20pt近くも高くなっている。

かつては無利子で預かり、それをさまざまな形で運用することができる敷金・保証金は、不動産オーナーにとって第二の家賃ともいうべき存在だった。

しかし、低金利と金融商品の多様化により、退去時に返済する必要のある資金を一時的に預かるメリットは薄れている。

残された敷金・保証金の機能は借主の故意・過失や倒産による経済的損失を備えるためのバッファ、修繕費等の先払いとしての役割に限定されるようになっている。これらの多くは保険や債務保証によってカバー可能なリスクである」(飯田教授)

起業・スタートアップの増大というマクロの政策目標達成にも「敷金ロス」の圧縮は重要

「敷金・保証金は金融上の制約の多いスタートアップ企業・中小企業から,担保化可能資産を持つことから平均的には金融上の制約が少ない不動産オーナーへ流動性の供与という性質を持っており、資源配分上も好ましいものではない。

これは、敷金を支払うことによって、本来の成長資金に使えずに成長機会を損失する「敷金ロス」が生じている状況だといえる。

成長企業が裁量的に利用可能な資金を増大させる敷金・保証金から債務保証方式への移行は、不動産オーナーへのデメリットは小さく、企業へのメリットが大きい。

これからの起業・スタートアップの増大というマクロの政策目標の達成に向けても、その圧縮は少なからぬ効能を発揮しうるのではないだろうか」(飯田教授)

―――コロナ収束の兆しがみえ始め、都心のオフィス空室率も改善しはじめたいまこそ、働く場所や働き方について、あらめて考えてみたい。