「都会のお客さまはローカル線に新しいものを求めない」

いすみ鉄道のキハ28は1964年製で、鳥取県の米子機関区に新製配置。山陰線の急行「だいせん」、「伯耆」などに使用されました。

1972年に冷房改造。1985年には石川県の七尾機関区に転籍し、七尾線電化後はJR西日本の富山鉄道部道部、北陸地域鉄道部などを経て、2012年7月に廃車になった後、いすみ鉄道に譲渡されました。

それでは、いすみ鉄道は国鉄・JRの中古車をなぜ購入したのか。キーワードは「観光鉄道化」です。

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「鉄道の歴史はスピードアップの歴史、そして近代化の歴史でした。車両も設備も新しくすることで、安全で快適な輸送が実現できます。でもローカル線は、近代化してダメになっているのかも。都会のお客さまは、ローカル線に新しいものを求めていない。だからあえて古いものということで、昭和の国鉄形気動車を採用しました」。

キハ28導入を決断した、鳥塚亮いすみ鉄道前社長(現えちごトキめき鉄道社長)は、こう回顧します(交通環境整備ネットワークの会報「地域交通を考える」第10号への寄稿から)。

ランチクルーズ・トレイン、ウエディングプラン

今は多くの鉄道会社が運転するレストラン列車。いすみ鉄道は先行集団を走りました(画像:いすみ鉄道)

いすみ鉄道のキハ28は、鉄道ファンや旅行ファン、ファミリー客などにたちまち評判を呼びました。2013年3月から観光列車として営業運転に入りましたが、それに先だって大多喜駅でお披露目イベントを開催。地元千葉県はもちろん、関東一円から約500人のファンが訪れました。

キハ28を活用した観光列車が「レストラン・キハで楽しむイタリアン・ランチクルーズ・トレイン」で、走行中の車内でイタリア料理を提供。羽田空港発着のバスツアーも組まれました。

もう一つの企画が、列車内で結婚式を挙げる「いすみ鉄道ウエディングプラン」。名称的に縁起のいい大多喜駅を出発、終点の上総中野からJR外房線と接続する大原までの全線を走行します。

ケーキカットに代わるのは、新郎新婦が招待客のきっぷにはさみを入れる鉄道ならではのセレモニー。地元のウエディングプロデュース会社が、アイディアを出しました。