6名の学生が5か月にわたり東京駅に向き合い、制作した写真が、東京駅グランルーフを彩る―――。

JR東京駅グランルーフB1通路(八重洲地下中央口改札外)で3月29日~4月20日の23日間、「未来に種をまく」をテーマとした写真展『東京駅:SOW THE FUTURE(未来に種をまく)』が開かれる。主催は東京ステーションシティ運営協議会と T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 。

同企画は、東京ステーションシティ初となる、学生との連携プロジェクトで、6名の学生が5か月にわたり東京駅に向き合い、制作した写真を発表する。

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細田歌乃(東京工芸大学)、齋藤亮太(東京工芸大学)、中島陽和(東京工芸大学)、土性愛美(日本写真芸術専門学校)、孫佳奈(日本写真芸術専門学校)、塩見和政(日本写真芸術専門学校)の6人が、「東京駅の未来の在り方とはどんなものか?」「日常のなかで見過ごしてしまっている、あるいはまだ言葉になる前の風景を探してみると、より魅力的な場所になるのでは」という視点で、制作した力作が展示される。

これまで気づかなかった視点や風景の切り取りに

東京ステーションシティは、2021年より東京駅東側エリア(八重洲・日本橋・京橋)を舞台に開催される国際写真祭「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」と連携し、国内で写真を学ぶ学生たちの作品発表の機会を提供してきた。

2022年には、全国13の大学、専門学校から選抜された各校1名の学生による作品展「T3 STUDENT GALLERY」を開催。

同企画はこれまでの関わり方から一歩前進させ、展示場所としてだけではなく制作の被写体あるいは場所として、東京ステーションシティを使ってもらう、という新たな取り組み。

制作にあたり、学生たちは東京ステーションシティ運営協議会のスタッフや T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO チームによるメンターシップのもと、エリアのリサーチを行い、その内容をベースに写真を制作するプロジェクト型で展開。

活動を通じて、東京駅利用者にとって「これまで気づかなかった視点や風景の切り取りとなること」、学生にとって「写真制作のプロセスそのものが、モノ・コトの視点を提示する方法として有効な取り組み」になることが期待されている。

学生たちの作品と想いが、これだ↓↓↓

「Crystal JCT」塩見和政(日本写真芸術専門学校)

「TOKYO STATION DOOOOOOOORS」中島陽和(東京工芸大学)

「海苔をモチーフとした作品で、少し奇妙で新しい東京駅を感じてほしい」細田歌乃(東京工芸大学)

「約500年前、今東京駅がある土地は浅瀬の海でした。当時海苔漁業が盛んだった事実を元に海苔をモチーフとした作品を制作しました。

東京駅の未来という不可視なものを表現するために、より外側からの視点を持って東京駅を観察し、まず自分自身が新鮮に感じられるような作品を作ることを目指しました。

この作品を見てくださる方々にも、少し奇妙で新しい東京駅を感じていただけると嬉しいです」

「東京駅から持ち帰る“お土産”で広がり、繋がっていく輪を表現」土性愛美(日本写真芸術専門学校)

「今までは交通手段として東京駅を利用することが多かったので、このプロジェクトを通して、日本の伝統や文化を残しながら、新しい形・街へと変化し輝き続けている東京駅の魅力に惹かれていきました。

東京駅に何度も訪れ、撮影していく中で、駅から街へと変化していく東京駅の姿をモノ・コト・ヒトがそばで支えていると私は考え始めました。

そこで東京駅ならではのお土産に着目し、東京駅から広がり、繋がっていく輪としてお土産の存在があると感じ撮影を行いました。

また、コロナ禍だからこそ、持ち帰ることで東京駅の魅力を誰かと共有することが出来る手段だと考えていました。

正方形の写真はそのお土産を見つけるまでに辿ってきた視線を集めていて、スマホで撮影したことで観光客の方と同じ視線で撮影することも意識しました。

この写真に触れることで東京駅の魅力を再認識し、そこから新しい発見や出会いが生まれたらうれしいです」

「駅や街の魅力を再発見し、未来へ紡ぐ取り組みとしていきたい」

東京ステーションシティ運営協議会は「東京駅が街になる」をコンセプトに、東京駅を起点に駅や駅周辺エリアの個性を引き出し、街や人が有機的につながる、心豊かな都市生活空間を創り上げていく取組みを推進。

そのなかで「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」に2021年度から参画し、社外パートナーと共創しながら、駅というリアルな「交流拠点」の強みを生かし、写真やアートの普及に努めてきた。

同協議会は今回、初の産学連携プロジェクトとして、同パートナーや写真を学ぶ学生といっしょに、改めて駅や街の魅力を再発見し、未来へ紡ぐ取り組みにしていくという。

「新しい写真の使い方を示すプロジェクト」

また、T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 学生プロジェクト 菅沼比呂志ディレクターは、「“現在”を撮った瞬間に“過去”のものになる写真で“未来”を示す、新しい写真の使い方を示すプロジェクト」と伝えている。

「ひと言でいうと、写真の新しい使い方を考えるプロジェクトです。わたしたちは普段それほど意識せずに写真を使っていますが、写真にはさまざまな機能があります。

報道写真のように「出来事を伝達する」、家族写真のように「記録する」、身分証の写真のように「証明する」、レントゲン写真のように「分析する」など。

しかし今回のミッションは、東京駅の「未来を示す」ということ。

本企画は上記のいずれの機能にも該当せず、誰もが知っての通り、写真は目の前の「現在」を撮った瞬間に、「過去」のものになってしまいます。

そのなかで「未来を示す」というミッションをこなすためには、写真の新しい使い方を検討する必要があります。

学生たちは、想像以上に自由な発想で、東京ステーションシティと写真そのものに向き合い、学校の課題かそれ以上に熱心に取り組んでもらいました」