「トーマネは、銀座本社でマネキン原型師が粘土からの原型を制作し、まず1/4サイズのミニチュアをベースにイメージを固め、等身大の粘土原型制作に入ります。

また、3Dモデリングによる原型制作技術も取り入れながら、両輪で開発しています。

3Dプリンターでもつくれるけど、わたしは粘土でもつくれるクリエーターでいたいと思っています」

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―――ファッション業界をめざす大学生たちに、そう語るのは、1934年創設 マネキン人形制作会社大手、トーマネの執行役員 岩下沢子 社長室 室長。

ここは、1926年創立以来、日本のファッション・アパレル産業界で活躍するクリエーターを育成・輩出する杉野服飾大学。

マネキンを主軸にファッション・アパレル業界をけん引するトーマネがこの日、杉野服飾大学学生に向け授業を展開し、同社 岩下室長が、FRP(強化プラスチック)製のマネキンのマテリアルリサイクルやレンタルシステム運用といった環境を配慮した取り組みや、茨城県常陸大宮市にある無形文化財「西ノ内和紙」を素材として採用した脱プラスチック和紙マネキン「Waltz」の優位性などについて語った、

FRP (強化プラスチック) マネキンのメリットとアドバンテージ

トーマネ 岩下室長は、同社が積極展開してきたFRP (強化プラスチック) マネキンと環境問題について学生たちに紹介。

「FRPは100%リサイクルが可能な製品で、彩色に適した素材です。大型造形や美しい色合いで、さまざまに『楽しいステージ』を演出できます。

しかも軽くて強く、熱による変形もなく、 修理が可能でありながら、 着色も自由にでき生産性も高く、ローコスト。

そして日本のマネキンは、世界で唯一「レンタル」 というシステムを採用しています。

レンタルでマネキンを貸し出す際には、お客様の希望でメンテナンスや塗装替えをその都度行わなければなりません。

FRPは、このようなメンテナンスなどに対応できる魅力的な素材で、マネキン人形に非常に適した素材です。

採用する顧客側には、ストックする倉庫や、資産計上の必要がないこと。また、季節やイベントごとに肌の色やメイクを自在に変えることができること、必要はときに必要なだけそろえることができる、などがあります」(トーマネ岩下室長)

FRP (強化プラスチック) マネキンと、トーマネの環境への取り組み

またFRP (強化プラスチック) マネキンの環境性能と、トーマネ独自の環境への取り組みについても、岩下室長はこう教えてくれた。

「現状のFRP性のマネキンは 「マテリアル」「サーマル」リサイクルとして100%リサイクルされています。

これは日本の文化の「レンタル」 があるから成り立っています。お客様にレンタルしているマネキンはすべて回収されています。

メンテナンスを繰り返し、寿命をまっとうしたマネキンは、破砕処理して鉄などのジョイント部分はマテリアルリサイクルを、ガラスクロス
部分は燃料として、セメントなどの原燃材料として生まれ変わります。

マネキンはプレジャーボートやバスタブと異なり、単体で扱うことができて、塩分が非常に少ないため、セメントの原燃材料には非常に適しているといわれています」(岩下室長)

トーマネ独自のパルクールとエックスが、米NYメトロポリタン美術館へ!

杉野服飾大学の学生たちがとくに注目したのは、トーマネのマネキン人形 Parkour-series(パルクールシリーズ)と X-series(エックスシリーズ)6体が、アメリカ・ニューヨーク『The Metropolitan Museum of Art , New York(メトロポリタン美術館)』ファッションフェス「MET Gala 2022(メットガラ 2022)」に渡った話題。

ファッションデザイナーで映画監督のトムフォード(TOM FORD)が、トーマネのパルクールシリーズ・エックスシリーズを高く評価し監修。

躍動感あふれるシルエットや、アクロバティックなスタイルで独創的なトーマネ製マネキンが、ニューヨークへ渡った歴史的なトピックスだった。

5つの改題をまるっと達成させたトーマネ和紙マネキン「Waltz」も実物も

そしてトーマネが、「ナチュラルな素材」「圧倒的な軽量化」「労働環境を改善」「リサイクル」「地域貢献」の5つを達成させた最新ブランド「Waltz」(ワルツ)について。今回は杉野服飾大学に実物品を持ち込み、岩下室長がその優位性や環境性を学生たちに伝えた。

茨城県常陸大宮市にある無形文化財「西ノ内和紙」(那須楮 100%)を素材とした、トーマネの和紙マネキン「Waltz」(ワルツ)は、FRP(強化プラスチック)の自社製品と比較し、約80%減の軽量化に成功。

脱プラスチックも達成させ、有機溶剤不使用による労働環境の改善も実現させた最新ブランドで、日本文化と環境に配慮し、成形したマネキンは再び和紙に戻すこともできる。

圧倒的な軽量化によって、輸送コスト・組み立てに関する重労働・労働時間の削減にも貢献し、さらに製造の過程で有機溶剤を不使用、研磨の必要性もないことから、粉塵が発生しないのも画期的。

また、前出のFRP(強化プラスチック)製マネキンは、製造工程やリサイクル過程で有機溶剤の使用は避けられず、有機溶剤は揮発性が高く、蒸気になると作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、皮膚からも吸収されやすいことから、有機溶剤を取り扱う職場で就業する作業者にとっては中毒性やシックハウス症候群などの疾病を引き起こす弊害も課題だった。

こうした課題を、このトーマネ和紙マネキン「Waltz」(ワルツ)がクリア。

「Waltz」の製造過程では、和紙の他ナチュラルなものを基本材料とし、有機溶剤を一切不使用に。作業者は安全な労働環境のなかで製造に取り組めるようになった。

「湿度による強度変化をいかに抑えるかなど、これからも研究を継続」

杉野服飾大学の学生たちも「うわめっちゃ軽っ」と驚く、トーマネ和紙マネキン「Waltz」(ワルツ)。

このサスティナブルで画期的な和紙マネキンの開発を振り返り、苦労した点について、トーマネ岩下室長は学生たちにこう伝えた。

「いままでのマネキンとまったく違う素材を使用するため、和紙の特性を生かした組み立て方や立たせ方を研究し続けてきました。

紙貼りは、既存の技術として民芸品などで存在していますが、ファッションの世界で通用する表現に仕上げる工夫が必要でした。

成形には、独自配合の水性ボンドを使用していますが、原料の組み合わせやその割合を決めるのに、何十ものパターンで実験を繰り返しを強いられ、より良い結果を求めて試験検査も含め、いまもなお継続しています。

使用に耐える程度の強度は出ていますが、呼吸をする和紙だからこそ起こる、湿度による強度変化を、いかに抑えるかなど、これからも研究を継続する課題はあります」(トーマネ岩下室長)

ワルツを横展開し、増産・海外展開めざす

トーマネは今後、受注生産を想定した和紙マネキン「Waltz」(ワルツ)の量産体制を整え、増産をめざしていくという。

「ワルツの製造方法は、形のあるものだったらすべてに対応できることから、マネキン人形だけではなく、あらゆる造形に置き換えることにチャレンジし、環境に配慮した造形を、ものづくり企業として提案しいきます。また海外にも Made in Japan としトーマネの技術をアピールしていきたいと思います」(トーマネ岩下室長)

和紙マネキン「Waltz」(ワルツ)の「ナチュラルな素材」「圧倒的な軽量化」「労働環境を改善」「リサイクル」「地域貢献」でイノベーションに挑むトーマネ。

杉野服飾大学の学生たちにも、その軽さや環境性・リサイクル性のインパクトが届いたはず。

◆トーマネ
https://www.tomane.co.jp/