JR東日本・ JR西日本 鉄道運行や駅でのノウハウから得た最新技術を CEATEC2023 で展示 <海浜幕張駅 / 幕張メッセ>
千葉県千葉市にある幕張メッセにて開催されている最新技術の展示会 CEATEC(シーテック/Combined Exhibition of Advanced TEChnologies)に行ってきました。家電メーカーや電機関連会社、大学などの研究機関が多いイメージでしたが、鉄道会社であるJR東日本、JR西日本のブースが出展されていたのでレポートいたします。
JR東日本
「駅カルテ」
JR東日本で展示されていたものの一つが、「駅カルテ」という駅をSUICA(スイカ)で通過した人の流れ分析するレポートのサービスです。駅をSUICAで利用する人の、月ごとの駅利用者数や、性別・年齢といった属性を把握できることに加え、通勤や通学といった該当駅の利用目的や、駅への到着時間や駅からの出発時間、その駅周辺での滞在時間といったものを基にした各駅の利用者層の分析を提供するサービスとなっています。
それにより、調査したい駅の通勤・通学圏や商圏が分かったり、どのような時間帯にどこから来た人がどの程度の時間その駅の周辺に滞在しているのかという事が把握できます。その駅の周辺で出店を検討している商業施設・小売店が営業計画の立案時に利用をしたり(「予想される顧客はどこから来ているどのような年齢性別の人が多いか?」や「営業時間を何時から何時までにしよう」などでしょうか)、新規ビルなどの需要見込みの検討資料として利用したり、その駅の周辺で行う旅行・観光プロモーションの検討資料などとしても役立てる事ができるというサービスです。既にこちらのようなサービスには、いろいろな団体や企業などから問い合わせがきているようです。
「ジェイイーマップス」
もう一つ、「ジェイイーマップス」というJR東日本の鉄道車両運行の情報と、災害・気象データなどを掛け合わせた情報プラットフォームのサービスも紹介されていました。1日の乗客数1,459万人、列車本数11,883本、車両数12,375両、駅数1681駅、営業キロ数7400kmというように、いくつも世界一の数字を持つJR東日本ならではの広範囲での多くの情報を活用した、情報プラットフォームとなっています。
こちらでは、JR東日本の列車のリアルタイムでの運行状況や混雑状況がマップ上に表示されるとともに、異常気象が発生した際には気象状況のデータを重ねたり、災害が起こった際には災害地域の状況データなどを同じマップ上に重ねて表示ができるという便利なものとなっています。ただし、まだ一般の人に向けて公開されているというものではなく、あくまでJR東日本での社内利用としての情報プラットフォームとなっているようです。こちらのようなサービスは、ゆくゆくは列車が止まった際に駅のモニターで様々な情報が確認できるなど、一般の人向けにも公開されると良いなと感じました。
その他にもJR東日本ブースでは、デジタルデータでの鉄道車両の保存・利用のための取り組みである鉄道車両VRなども展示されていました。
JR西日本
JR西日本ブースでは、今昔形式でJR西日本が取り組んでいる技術やサービスなどが展示されていました。そのうちの一つが「機械故障予測AI」という技術。
「機械故障予測AI」
JR西日本が保有している約2,000台の自動改札機は、この技術が開発される以前には1台当たり年7回のペースで定期的な故障点検の実施していましたが、それでも1台当たり年平均で2回の故障が発生。また、改札機の稼働状況の把握などは実際に改札機を見なければできない状況だったようです。しかし、この自社開発の「機械故障予測AI」導入で、各改札機の稼働データをまとめてデータセンターに集約し、更にこれまでの故障履歴データなどを活用して、AIが各改札機の故障確立を予測するという方法を確立。自動改札機の点検回数は3割減り、故障発生件数も2割の減少に成功したそうです。JR西日本のこの技術を他に販売はしていないようですが、このような機械の稼働率や過去の故障歴などとAI予測を組み合わせたサービスは、他の機会などでも応用できると考えられます。
その他にも、鉄道の運行や駅の運営に関連する様々なものが展示されていました。「動揺判定システム」の展示では、線路の保守点検という人の経験値に左右される巧の技の作業だったものを、現在では列車に搭載した動揺測定装置という形式に移行をしてきたことが記され、更に通信システムやIotが発展してきている今後はより安価スマートフォンなどのデバイスを利用しての点検作業などができないかを模索中といった内容になっていました。鉄道運営の昔と今、そして未来の形を予想できる展示となっていました。
他の鉄道関連の展示
鉄道関連のものとしては、他にもJR東海の関連会社であるJR東海コンサルタンツが、名古屋駅の中や駅周辺25km2もの空間全域を、VRのデータとして制作したものを展示をしていました。駅周辺の空間データ制作は実際のセスナ機を利用して撮影され、名古屋駅の屋内データ制作には、500か所でレーザースキャンをした26,000枚の画像が利用されているもののようです。こちらは、VRゲーム上でのゲームなどにも利用でき、駅の周辺の建築物の増改築時などには参考のデータとしても利用ができるものになっているそうです。
日立では鉄道車両や路線をメタバース空間(3D仮想空間)に構築して車両・設備保全を行うという事例を展示していたり、2021年12月より営業運転を開始している台湾の都市間特急車両である・EMU3000 (日本のグッドデザイン賞ベスト100、ドイツのiF賞、台湾のゴールデンピン賞など、世界のデザイン賞を受賞)を紹介していました。
また、ソフトウェア会社のFORLUM8では、鉄道のシミュレーターを展示。地形・地図のオープンデータをVR空間化することを業務として活用している同社のサービスなので、実際の地形・景色に近いものが体験できるというものになっています。
CEATEC2023
CEATECはアジア最大級のIT技術とエレクトロニクスの展示会で、各社が持つ最新の技術を展示するショーケースとなっています。最近はコロナ禍の影響もあり大規模な集客イベントとしての開催を控えていましたが、2023年の出展は684社・団体となり、活気が戻ってきたと感じられました。
このイベント出展作品の中から選ばれる「CEATEC AWARD 2023」としては、総務大臣賞には東芝の「空間セキュリティマネジメントソリューション」が、経済産業大臣賞にはエレファンテック「金属インクジェット印刷技術を用いた環境負荷低減 PCB」が、デジタル大臣賞としてはザクティの「世界最小最軽量級のカメラが「働く」を変える。リアルタイム映像DXソリューション”Xacti LIVE(ザクティライブ)”」がそれぞれ受賞をしました。東芝の「空間セキュリティマネジメントソリューション」は、ミリ波レーダを利用したウォークスルー形式の危険物の検知装置で、多くの人が集まる駅や空港・ショッピングセンターなどでの活用が想定されています。
個人的には、2023年に多かったのは「生成AI・ChatGPT連携のサービス」や「サスティナブル社会・SDGsに貢献する」といった展示だったような気がしますが、少し以前と比較すると目に見える形でビックリするようなものは少なくなってきているという印象を持ちました。(”タケコプター”はまだ無理でも”小さな空を飛ぶ車” はもう少しで実用化して展示されるような気がします。”どこでもドア” や “タイムマシン”は、それに近い何かであっても登場するという気配は全く感じられませんでした。)
出展各社・団体の様々な先端技術が見られるこのイベント CEATEC2023 は、10/20(金)まで、千葉市の幕張メッセにて開催されています。
鎌田啓吾
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