JR東日本は2026年3月14日に運賃改定を実施します。全体の改定率は7.1%ですが、割安な「電車特定区間・山手線内」の運賃区分が廃止されるため、首都圏の利用者にとってはインパクトの大きな改定となります。値上げの対象となるのは普通旅客運賃と定期旅客運賃で、これに伴い新幹線定期券「FREX」「FREXパル」やグリーン定期券、入場券の発売額も変更となります。一方で、特急料金やグリーン料金などは据え置きです。
また、東京駅~熱海駅間における東海道新幹線と在来線の運賃計算を別々に行う「別線化」や、JR他社にまたがって利用する際の「通算加算方式」の導入など、利用方法に関わる変更が含まれています。

この記事では、発表された主な変更点について詳しく解説します。運賃改定前に定期券を購入するなど、知っていれば少しお得な情報も確認しておきましょう。

【参考】JR東日本、2026年3月に運賃値上げへ 電車特定区間・山手線内は「幹線」に統合、オフピーク定期券はエリア拡大(※2025年8月1日掲載記事)
https://tetsudo-ch.com/13007643.html

運賃改定イメージ
運賃改定イメージ

「電車特定区間・山手線内」の運賃区分を「幹線」に統合

運賃改定の目玉は「電車特定区間・山手線内」の運賃区分廃止による「幹線」への統合です。これらの運賃区分が導入されたのは国鉄時代のこと。当時の運行状況や他社との競合状況を踏まえ、基本となる「幹線」の運賃から据え置くかたちで、一部区間で割安な運賃設定を行っていました。

以来、約40年にわたり当時の運賃水準のまま据え置かれていましたが、すでに他の鉄道事業者は値上げを行っており、運賃区分を分けて設定する意味合いは薄れています。またこれらの区間は今後も重点的な設備投資を行う必要性が高いエリアです(設備投資の約7割が首都圏エリアに集中しています)。そのような事情から古い運賃体系を見直そうというのが、今回の改定になります。

2つの運賃区分を廃止して「幹線」に一本化

なお、「幹線」「地方交通線」では家計負担に配慮し通学定期運賃を据え置きますが、「電車特定区間・山手線内」は「幹線」に統合されるため、「幹線」の運賃区分が適用されます。したがって、このエリアの通学定期運賃は実質的な値上げとなります。

東海道新幹線と在来線(東京~熱海間)が別線扱いに

今回の改定で大きな変更点となるのが、東京駅~熱海駅間における東海道新幹線と東海道本線(在来線)の扱いです。現在、この区間は運賃計算上、同一の線路とみなされていますが、改定後はそれぞれ異なる線路として扱われることになります。

参考:2つの線路は別のものとして発売(イメージ)

これに伴い、この区間を含む普通乗車券は、「東海道新幹線経由」と「東海道本線(在来線)経由」で区別して発売されます。利用者は実際に乗車する経路どおりの乗車券を購入する必要があります。また、この変更により、特定の3区間で適用されていた、どちらかの経路の乗車券でもう一方に乗車できる「選択乗車」制度は廃止となります。

選択乗車区間(3区間)廃止(イメージ)

JR他社にまたがる場合の運賃計算方法を変更

JR東日本の路線からJR他社の路線へまたがって利用する場合の運賃計算方法も変更されます。改定後は、全利用区間の営業キロで算出した基準額に、JR東日本区間の営業キロに応じた加算額を加える「通算加算方式」が導入されます。

通算加算方式の計算方法(イメージ)

※JR北海道・四国・九州にまたがって利用する場合、各会社のキロ数に対応する加算額を加える(JR東海・西日本には加算額はなし)

往復乗車券・連絡乗車券および往復割引を廃止

往復乗車券・連続乗車券については2026年3月13日限りで発売を終了します。これに伴い、片道の営業キロが601キロ以上の区間を往復利用した場合に適用される往復割引も終了となります。交通系ICカードの普及や紙のきっぷの利用減少、インターネット予約の割引商品などで利用者の選択肢が増え、往復乗車券・連絡乗車券を利用される方が減ったことが背景にあるようです。

学生割引や「ジパング倶楽部」「大人の休日倶楽部」割引は改定後も適用。ただし内容に少し変化が生じており、学割は往復割引との重複適用を終了、「ジパング倶楽部」「大人の休日倶楽部」は割引適用の基準が「片道の営業キロが101キロ以上となる場合」になるなど、細かな変更点があります。

運賃改定は2026年3月14日購入分から

新しい運賃が適用されるのは、2026年3月14日の購入分からです。改定日前の3月13日までにきっぷを購入すれば、たとえ乗車日や有効開始日が3月14日以降であっても、改定前の運賃で利用することができます。「えきねっと」の場合は「決済日」が「購入日」となります。

JR東日本の場合、定期券は有効期間の開始日の14日前から購入することができます。3月13日までに購入する定期券は有効期間の開始日が3月14日以降であっても改定前の運賃で発売するため、運賃改定直前に買えれば少しおトクになります。

ただし、改定日の直前は駅窓口および定期券が購入できる券売機が大変混雑したり、そもそも運賃切り替え作業などで券売機の稼働時間が短くなる恐れもあります。その場合は「モバイルSuicaアプリ」の利用も検討しましょう。

「JR東日本 運賃改定」まとめ

今回の運賃改定は2026年3月14日に実施されます。対象となるのは普通旅客運賃と定期旅客運賃で、これに伴い新幹線定期券「FREX」「FREXパル」やグリーン定期券、入場券の発売額も変更となります。一方で、特急料金やグリーン料金といった料金については、今回は改定されません。

また、これまで運賃に上乗せされていた鉄道駅バリアフリー料金は、東海道新幹線(東京・品川間)を除き廃止されることも発表されています。

2026年3月に実施されるJR東日本の運賃改定は、特に東海道新幹線を利用する利用者や、複数のJR会社にまたがって移動する利用者にとって、ルールが大きく変わる重要な変更です。改定後の運賃を調べられる特設サイトも公開されているため、対象となる区間を利用する予定のある方は、一度確認してみてはいかがでしょうか。

(画像:JR東日本、TOP写真:PIXTA)

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