つくばのモビリティサービスと柏の葉のレベル4自動運転バスで同日同時間帯に会見 TX沿線の綱渡り取材【コラム】

「沿線とともに進化する鉄道!」。東京・秋葉原と茨城県つくばを結ぶつくばエクスプレス(TX)が、開業20周年を記念して2025年夏に発行したパンフレットに、こんなフレーズが見付かりました。
TX沿線をみれば、起終点が電脳タウンの東京・秋葉原と研究学園都市の茨城県つくば。真ん中に多くの教育・研究機関が集積する柏の葉キャンパスがあります。先進的な研究成果が沿線から発信され、鉄道自体も技術やサービス面で鉄道界の先頭集団に立つのがTXの目標です。
そんなTX沿線で2026年1月13日、モビリティ(移動手段)をテーマにした2件の発表がありました。
1件目はつくば市による「スマートモビリティ実証事業合同発表会」、もう1件は千葉県柏市にキャンパスを置く東京大学の「レベル4自動運転出発式」。同日ほぼ同時刻というのは偶然ですが、地域の未来をモビリティ(移動手段)に託す点は共通します。
筆者は2件の発表を綱渡り取材。〝鉄分トッピング〟でポイントをお届けします。
デジタルチケットでおトクに観光
前半はつくば市のスマートモビリティで、TX、関東鉄道、筑波観光鉄道の鉄道3社が参加する「つくチケ」から。

正式名は「ハンズフリーチケッティングを活用した市内周遊実証」。1月31日までが実証期間です。TXは全線、関鉄はつくば市内ほぼ半分のバス停が対象です。関鉄と、筑波山ケーブルカーとロープウェイを運行する筑波観光鉄道は京成グループです。
TXを使った筑波山観光、通常は個別に運賃を支払いますが、つくチケの専用アプリをダウンロードして乗車すれば、鉄道、バス、ケーブルカーが同一会社の乗り物のように利用できます。
これだけなら企画きっぷのデジタル化ですが、つくチケの推しは鉄道やバスの利用で市内観光したり買い物してスマホ決済すると、自動で運賃や料金が割引になる点。
さらに、一般的なチャージ(事前支払い)に代わりポストペイを採用。帰路のTX乗車で行程全体に割引運賃や料金が適用されます。
そんなつくチケをコーディネートしたのは日立製作所。交通と地域の双方がWINWINの関係になるようなシステムを考案しました。筆者は日立から取材案内をもらいました。
2005年の開業から20周年のTX、ビジネス・通勤ラインの印象が強く、観光路線のイメージは希薄です。つくチケで、多くのレジャー客が訪れてくれることに期待します。
TX駅と筑波大を結ぶ自動運転バス
話が逆順ですが、つくば市の発表はつくチケだけにあらず。実証事業の総称は「つくばスマートモビリティ」。2022年度に国家戦略特区に認定された次世代まちづくり「スーパーサイエンスシティ構想2.0」で、次世代モビリティを実践します。
つくチケ以外は「パーソナルモビリティシェアリングサービス『つくモビ』」、「こどもMaaS」、「自動運転バス」の3件。
ワンポイントずつですが、「つくモビ」はキックボードの立ち乗り三輪車。二輪タイプに比べ走行を安定させました。こどもMaaSはゴルフカートの街なか利用。最高時速10キロで、人やモノをよけながら自動運転します。
自動運転バスの仕組みは後段の東大柏キャンパスに譲って、つくばのバスは東京都品川区のスタートアップ・ティアフォー製。つくば市、筑波大学、KDDI、関鉄の4者(社)が、2025年11月~2026年2月にTXつくば駅~筑波大の循環ルートを走らせます。

KDDIは、自動運転の絶対条件といえる通信環境を整備。現在はドライバー監視が必要なレベル2ですが、2027年度に完全自動運転のレベル4を目指します。
発表会で、つくば市の五十嵐立青(たつお)市長、「マイカーに過度に依存しない、移動の自由を実現するのが筑波スマートモビリティの狙いだ」と思いを明かしました。

東京圏の公道初のレベル4
つくば市の発表会を中座してTXで柏の葉キャンパスへ。TX駅と東大柏キャンパスをつなぐ教職員や学生用の中型シャトルバス、2019年からレベル2運行してきましたが、関係機関の認可を得ていよいよレベル4の完全自動運転が始まりました。

TX駅~東大キャンパスは2.6キロ。完全自動運転は途中の公道、約700メートル区間です。レベル4は2025年の大阪・関西万博のほか、福井県永平寺町、北海道上士幌町などが先例ですが、首都圏(一都三県)の公道は初めて。
東大生産技術研究所(生研)と、生研生まれのスタートアップ・先進モビリティが、日本信号や三井不動産などとチームを組んでドライバレス運転を実現しました。交通事業者では、東武系の地域バス会社・東武バスセントラルが乗務や運行管理を受け持ちます。
レベル4の仕組み、バスは前後方にカメラと、前後左右を監視するLiDAR(ライダー=レーザー光線の障害物検知装置)を搭載。走行中は地上側の信号と情報交換、黄信号では安全に停止できるかを計算して通過するか停止するかを判断します。

たかが700メートル、されど700メートル
ここで鉄分トッピング。生研は鉄道の自動運転も研究しているので、バスと鉄道のコラボを質問しました。自動運転が地方圏に広がると、ドライバレスのバスが踏切を渡る場面も考えられます。
そんな時に必要になるのが列車とバスの情報交換。道路交通では、複数のトラックやバスが連続走行するための車車間通信の研究が進みます。同様に、鉄道とバスの車車間通信も今後研究が進みます。
つくばと柏の葉の綱渡り取材は以上。陳腐な表現で恐縮ですが、帰路に思い付いたのは「たかが700メートル、されど700メートル」のフレーズです。
出発式で、「安全・快適な街づくりの象徴として、(自動運転バス)が未来のスタンダードになることを期待したい」と柏市の太田和美市長。つくばと柏で、TXはまた一つ進化を遂げました。
記事:上里夏生
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