JR高崎駅周辺エリアを走る電車内で、思わず目を引く真っ赤な中吊り広告。そこには「集中力が上がるツボ」や「まずは名前書け!」といった、受験生への人間味溢れるエールが並んでいます。この広告を掲出したのは、世界トップクラスのシェアを誇る電子部品メーカー、太陽誘電株式会社。
なぜ、自社製品の宣伝ではなく「受験生応援」に徹したメッセージを届けたのか?そこには、同社のコア技術である「積層」(積み重ね)と、受験生が日々行う「積み重ね」をリンクさせた深い想いがありました。今回は、企画担当者が語った、この中吊り広告の裏側や制作秘話をご紹介します。

思わずニヤリとする「街の声」が、車内を埋め尽くした理由

受験シーズンにJR高崎駅周辺を走る電車の車内に突如現れたのは、少し変わった、これまでの企業広告ではないような中吊り広告でした。
「集中力が上がるツボ 百会(ひゃくえ)」(伊勢崎市/30歳/塾講師)
「これ、武者震いだから!」(桐生市/17歳/高校生)
「まずは名前書け!」(前橋市/36歳/高校教師)
「受験はよいじゃぁねぇやね ばあちゃん応援してっからねぇ~」 」(富岡市/88歳/祖母)
「終わったらチルしん? 西口とかで」(高崎市/18歳/高校生)
そこに並ぶのは、等身大の、それでいて圧倒的な熱量を持った群馬の人々の言葉です。あえて企業の宣伝色を消し、メッセージを主役にしたこの企画。実は、同社の採用チームが実際に群馬の学生や先生、親御さんから集めたアンケートに基づいているそうです。

同社の企画担当者によると、これまで行っていた電車内のステッカー広告では、学生の心にどこまで届いているか懸念を感じていたといいます。そこで、「記憶に残るためには、ロゴを見せるだけでなく心に響く『何か』が必要だ」と考え、あえて企業色を消したメッセージ主体のこの広告を、学生やその親に向けて企画したそうです。

受験生へのメッセージが並びます

実は「あなたのスマホや車」も支えている、“縁の下の力持ち”

実はこの熱いメッセージを届けている太陽誘電という会社、スマートフォンや電気自動車に欠かせない「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」で世界トップクラスのシェアを誇る大手メーカーです。電子機器の中で電気を蓄え、ノイズを除去するコンデンサは、いわば「機器の安定を支えるインフラ」。しかし、それらは常に製品の「内部」にあり、ユーザーの目に触れることはありません。

「私たちの製品は、見えないところで世界を支えています。この『見えないところから支える』というアイデンティティは、受験生を陰ながら支える親や先生の想いと重なるんです」とのこと。

「これまで積み重ねてきた自分を信じて、試験会場に立ってほしい」との願いが

なぜ「高崎駅周辺エリア」なのか? 群馬のこの路線で展開する理由

太陽誘電がこのエリアを選んだのには、理由があります。
同社は1950年の創業以来、榛名から始まり、高崎市街地や玉村、中之条など、群馬県内に開発・生産の拠点を置き続けてきました。そのため技術者には転勤がほぼ発生せず、群馬に腰を据えて研究などの業務に没頭できるという環境があるそうです。

また、このエリアの路線を利用する学生たちは未来の同僚かもしれない、いわば「同志」ともいえることから、最近では群馬県内高校に対する「パンチケット(パンの購買補助) 」企画など、地元学生への支援にも取り組んでいるとのこと。だからこそ、彼らの生活動線であるこの路線で、一番熱いエールを送りたかったといいます。

「積み重ね」こそが、未来を作る力になる

今回の企画には、同社のコア技術である「積層」への想いも込められています。
コンデンサの性能を高めるために数千層ものセラミックを「積み重ねる」技術。それは、受験生が毎日机に向かって知識を「積み重ねる」姿とリンクします。

名前は忘れずに書きましょう

「自分自身を疑うな。不安な時ほど他人と比較してしまうけれど、これまで積み重ねてきた自分を信じて、試験会場に立ってほしい」

企画担当者にも響いたという「まず名前書け!」というコピーには、受験生への「優しさ」と、緊張感を和らげるような「ユーモア」が詰まっています。

電車の中でふと見上げた広告に、自分の頑張りを肯定してくれる言葉がある。それだけで、少しだけ前を向ける受験生も多いのではないでしょうか。太陽誘電のメッセージは、「自分を信じることの大切さ」を、温かいユーモアとともに教えてくれています 。受験生だけでなく、毎日何かをコツコツと『積み重ねて』いるすべての人に、この温かいエールが届いてほしいですね。
(画像:太陽誘電)

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