JR東日本は次世代の新幹線専用検測車「E927形(7両編成)」に関する最新情報を発表しました。2029年度中の検測開始を目指すこの新型車両は、East-i(E926形)の後継にあたり、最高速度320km/hでの高速検測を可能にします。さらに、日本初となる「PQ推定システム」や48台のカメラを駆使した「新幹線車上撮影装置」を新たに搭載。AIなどの最新技術を活用し、より効果的な予防保全と将来的な省人化・無人化の実現を目指す、鉄道業界大注目の最新動向を解説します。

現行の電気・軌道総合検測車「East-i」

次世代の新幹線検測車「E927形」の概要

JR東日本グループは、経営ビジョン「勇翔2034」で掲げるモビリティ分野における「究極の安全」の実現に向け、新たな新幹線専用検測車の開発を進めています。2025年10月には新たな新幹線専用検測車の開発に着手することを発表しており、その具体的な概要等が固まったことから今年7月の社長記者会見で詳細なデザイン等が明らかになりました。

新たに導入される車両の形式は「E927形」で、愛称は「SOAR」。次期「こまち」車両をベースとした7両編成で、検測の開始は2029年度中を予定しており、「East-i(E926形)」同様にJR東日本が有する5方面の新幹線ネットワーク(東北、上越、北陸、山形、および秋田新幹線のエリア)をカバーします。

現在の電気・軌道総合検測車である「East-i(E926形)」の最高速度が275km/hであるのに対し、E927形は最高速度320km/hでの検測に対応。営業列車と同じトップスピードで走行しながら、設備の健康状態をチェックできるようになります。

台車の揺れや傾きなどを測定する「PQ推定システム」

新型検測車の目玉となる新技術の一つが、鉄道総合技術研究所が開発した「PQ推定システム」です。

これは台車に複数のセンサを取り付け、走行中の台車の揺れや傾きなどを測定することで、車輪とレールの間に作用する力(上下方向=P(輪重)、左右方向=Q(横圧))を推定する画期的な技術です。

このシステムを用いて最高速度320km/hで検測を行うのは、日本初の取り組みとなります。得られたデータを線路状態の評価に加えることで、設備の整備が必要な箇所やその優先度をより明確に把握でき、効果的な予防保全と安全レベルの飛躍的な向上が期待されています。

PQ推定システム装置の構成
PQ推定システム装置の構成
PQ推定システム複数のセンサにより台車の動きを測定
複数のセンサにより台車の動きを測定
PQ推定システムを活用した効果的な予防保全のイメージ
PQ推定システムを活用した効果的な予防保全のイメージ

48台のカメラとAIが支える「新幹線車上撮影装置」

もう一つの大きな進化が、「新幹線車上撮影装置(仮称)」の導入です。

E927形には、1号車と7号車の前頭部、3号車の側方および天井部分に、合計48台ものカメラが設置されます。これらのカメラで高精細な画像を連続して撮影し、設備の状態や沿線環境の変化を詳しく記録します。

過去の画像と比較することで検査業務の効率化を図るほか、列車の運行に支障をきたす恐れのある沿線の樹木などをいち早く発見することが可能になります。今後は、撮影した画像に対してAI技術を用いた自動判定や抽出システムの導入に向けた開発も進められます。

新幹線車上撮影装置(仮称)の概要
新幹線車上撮影装置(仮称)の概要

このほか、電車線設備の良否判定を行う「電車線金具モニタリング装置」を新開発しています(2025年10月発表済み)。JR東日本は今後、AI・DXの技術も活用し、省人化や遠隔からの無人検測の実現にも取り組むといいます。

デザインは社員とtangerine社が共同で制作へ

気になるE927形のデザイン(カラーリング)と愛称は、JR東日本グループ社員からの応募作品の中から決定しました。

白を基調としたデザインはEast-i(E926形)から継承し、緑と赤はそれぞれグループ経営ビジョン「勇翔2034」から、「勇=勇気をイメージした赤系統」「翔=羽ばたき伸びていくイメージから緑系統」の色で表現しています。もちろんコーポレートカラーである緑とEast-i(E926形)の赤色も意識しているということです。側面は線路・架線などが常に同じ状態ではないことと、それらを検測し安全につないでいくという「検測車の使命」を表現するため、アシンメトリーなデザインを採用しました。

E927形のカラーリング
E927形のカラーリング。白をベースに緑・赤系統の色を用いています

愛称の「SOAR」は英語で「翔ける」という意味を持ち、安全を基盤としたうえで、安心と感動の実現というかつてない高みを目指して勇ましく翔けて行くことをイメージ。アルファベットの「O」には、究極の安全を目指す事故事象「0」という表記・意味も込められています。

現在は、デザインの原案を考案した社員と、次世代車両E10系のデザインも担当したtangerine社が連携し、2026年秋頃の完成を目指して実車のデザインの細部をブラッシュアップしています。愛称に合わせたロゴデザイン等も今後検討されていく予定です。

【参考】東北新幹線の新型車両は「E10系」 JR東が設計着手、2030年度の営業開始目指す https://tetsudo-ch.com/12997667.html

最新のテクノロジーを詰め込んだE927形、実車の登場が今から待ち遠しいですね。これからの新幹線の安全を支える新たなシンボルに、引き続き注目していきましょう。

現行の電気・軌道総合検測車(East-i)との比較
現行の電気・軌道総合検測車(East-i)との比較

(画像:JR東日本)

鉄道チャンネル編集部
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