2026年10月~12月に開催される「山口デスティネーションキャンペーン(山口DC)」。注目エリアのひとつが、山口県最古の歴史を誇る「長門湯本温泉」です。新幹線や飛行機を利用した各地からのアクセスルートをはじめ、星野リゾートとの協働で「オソト天国」として再生を遂げた温泉街の歩き方や滞在の魅力を知れば、一度訪れてみたいと感じるはず。本記事では、足元から源泉が湧き出す名湯「恩湯(おんとう)」や、SNS映えする「竹林の階段」などのスポット、楊貴妃伝説が残る名宿「玉仙閣」での宿泊体験を解説。歴史ある温泉情緒とライトアップ、空き家再生で誕生したショップなどが融合した、新しい長門湯本温泉の楽しみ方をお届けします。

【参考】【山口DC】運休中の美祢線沿線を次世代モビリティ「e-Palette」で巡る?「美祢ぐるっと号」秋吉台・秋芳洞など絶景日帰りツアー体験レポ https://tetsudo-ch.com/13039002.html

長門湯本温泉アクセス

長門湯本温泉は、山陽新幹線「新山口駅」や「厚狭(あさ)駅」、「山口宇部空港」などからアクセスできます。

新山口駅経由ルート

山陽新幹線新山口駅

新山口駅北口と長門市内を結ぶ直行便バス(ジャンボタクシー)を1日4往復、毎日運行しています。長門湯本温泉までは、約1時間5分でアクセスが可能です。

厚狭(あさ)駅経由ルート

山陽新幹線停車駅の厚狭駅

山陽新幹線「厚狭駅」からJR美祢線代行バスで長門湯本駅まで約1時間10分でアクセスできます。厚狭駅には「のぞみ」が停車しないため、新山口駅などで「こだま」に乗り換えが必要です。また、長門湯本駅から温泉街は、徒歩10分程度です。

山口宇部空港経由ルート

山口宇部空港(画像:Pixta)

山口宇部空港と長門市内を結ぶ直行便バスを、週4日(金・土・日・月曜日)1日2往復運行。完全予約制で、長門湯本温泉まで約1時間20分でアクセスできます。運行日以外は、空港から新山口駅まで路線バスで約35分。新山口駅から直行便バスを利用しましょう。

福岡・博多からの直行高速バス「おとずれ号」ルート
九州方面から向かう場合や、福岡観光と組み合わせる場合は、博多バスターミナル、もしくは西鉄天神高速バスターミナルから西鉄高速バス「おとずれ号」に乗り、約2時間45分でアクセスが可能。1日2往復運行しており、乗り換えの手間なく温泉街まで直行できます。

長門湯本温泉ってどんなところ?

約600年の歴史を誇る、山口県最古の温泉

音信川添い、千代橋のたもとにある「恩湯」。音信川には飛び石が整備され、美しい景観とまちあるきの楽しさを高めています

昔ながらの温泉情緒が漂う「長門湯本温泉」。約600年の歴史を誇る、山口県最古の温泉であり、そのシンボル的存在が元湯として知られる「恩湯(おんとう)」です。大寧寺の三代住職・定庵禅師が長門国一宮(下関)の住吉大明神からのお告げにより発見した「神授の湯」として伝えられており、立ち寄り湯として気軽に利用できます。

恩湯から少し石段を上がったところに、住吉大明神を奉る住吉神社・興阿寺があります

かつては公設公営でしたが、施設の老朽化や多額の赤字により営業を終了。2020年に民設民営へ切り替え、平屋造りのモダンな建物となって再スタートを切りました。

筆者は事前に宿泊先の玉仙閣で入浴券を購入して訪問。少し安く入浴できました

恩湯の湯は無色透明ですがとろりと滑らか。pH 9.5~9.9のアルカリ性単純温泉で、ほのかに硫黄の香りが。温泉法で「硫黄泉」認定される基準には満たないため「ほんのり硫黄湯」と謳われています。

浴槽の足元から源泉が自然湧出する「恩湯」(画像:山口県長門市)

源泉の温度は39℃、浴槽内は36~38℃のぬる湯の源泉かけ流しで、ゆっくりと入ることができます。源泉が湧く場所の上に位置し、岩盤の割れ目から直接温泉が湧き出る「足元湧出泉」により、生まれたての温泉を楽しめる贅沢な環境。深さ1メートルの浴槽で体は芯からポカポカに。岩盤の上には住吉大明神の像が鎮座しており、まさに「神聖な入浴体験」ができます。

官民連携のまちづくりで魅力ある温泉街へ

老舗旅館の跡地に2020年開業した、星野リゾート「界 長門」

宿泊者数が減少して廃業する旅館も出てくるなど、衰退しつつあった長門湯本温泉街。かつての賑わいを取り戻すため、2016年から山口県長門市と星野リゾートが協働する温泉街再生へ向けての取り組み「長門湯本温泉街〜長門湯本温泉観光まちづくりプロジェクト」がスタートしました。

新しくなった長門湯本温泉を象徴するスポットのひとつ「竹林の階段」

前述の「恩湯」再建や、音信川を中心とした自然景観を整備し、2020年春には訪れる度に楽しい、そぞろ歩きを楽しめる温泉街に生まれ変わりました。テーマは「オソト天国」です。

ライトアップされた「竹林の階段」。日中に訪れた場所も、夜にもう一度訪れたいと感じる絶景です

「竹林の階段」の先、国道316号添いには駐車場を新設。車で長門湯本温泉を訪れた人は、竹林の階段を降りて温泉街に足を踏み入れる動線を作りました。

山口DC期間中は美しい紅葉を楽しめそうな「紅葉の階段」

竹林の階段よりも一足早く整備が完了した「紅葉の階段」。両サイドにはイロハモミジが植えられていて、毎年紅葉シーズンにはライトアップを実施しています。2026年は10月23日〜11月29日の⽇没(18:00頃)〜22:00まで「秋の夜長のそぞろ歩き」を開催予定です。

紅葉の階段の対岸にある「おとずれ足湯」

音信川沿いには、2つの足湯を整備。無料で気軽に利用できます。

2017年に空き家リノベーション第1号としてオープンした「cafe&pottery音」

古民家を改装した萩焼のギャラリーカフェ「cafe&pottery音」やクラフトビール醸造所「365+1 BEER(サンロクロクビール)」など、まちづくりとともに空き家の活用や移住者の受け入れも進み、魅力ある店舗が増えつつあります。

2021年にオープンした「365+1 BEER」

「楊貴妃浪漫の宿 玉仙閣」に宿泊

温泉街を見おろす高台に佇む「楊貴妃浪漫の宿 玉仙閣」

今回宿泊した宿は「楊貴妃浪漫の宿 玉仙閣」。山口県長門市油谷町の向津具(むかつく)半島に楊貴妃が漂着したという伝説があり、そこからヒントを得て、1991年にオープンしました。

エントランスには楊貴妃の像がありました

名物「貴妃湯」をはじめとする入浴施設

遺跡をそのまま再現した「楊貴妃のお風呂(貴妃湯)」

玉仙閣と言えば、「楊貴妃のお風呂(貴妃湯)」で有名。中国・西安にある華清池で発掘された遺跡に基づき、楊貴妃が入浴を楽しんだとされるお風呂を忠実に再現しています。入れ替え制のため、女性は夜、男性は朝に入浴が可能。階段を降りると深さが120センチあり、立ったまま肩までお湯に浸かれました。

ハンモック風呂と露天風呂

唯一無二の「楊貴妃のお風呂」が魅力的なのはもちろん、木製ハンモックに寝そべり、浮力によりゆらゆらとしながら入る「ハンモック風呂」もひそかにお気に入り。大寧寺川に面した「露天風呂」もあります。源泉100%の弱アルカリ単純泉で柔らかな肌触りも心地よく、幸せな入浴タイムでした。

夕食は薬膳を取り入れた会席料理を

豪華な料理に舌鼓

夕食は、先付けや造り、熱々をいただく長州鶏のつみれと季節野菜のゆずきち薫る出汁鍋、彩り野菜を添えた厳選国産牛ロースステーキ、帆立貝柱と紫蘇の磯辺揚げなど豪華なラインナップ。長門ゆずきちはカボスやスダチの仲間で長州鶏との相性抜群! デザートのゆずきちゼリーも〆にぴったりでした。

甘めで飲みやすい「楊貴妃ワイン」

この宿ならではの逸品が、桂花陳酒をベースとしたオリジナルブレンドの「楊貴妃ワイン」。飲めば楊貴妃のように美しくなれるかも!?

楊貴妃が好んで食べていたという薬膳粥「ラバジュー」

コースのなかでひときわ異彩を放っていたのが薬膳粥「ラバジュー(臘八粥)」。鶏で出汁をとったハトムギ入りの粥に、クコや松の実、胡桃などを好みで加えていただきます。優しい味わいは、スターターにぴったりでした。

ごはんが進む「和食膳」

朝食は、一人用コンロで焼く干物と6種類のご飯のお供を中心としたラインナップ。

納豆や生卵、青のりやきのこの佃煮はセルフサービスで好きなだけ

納豆や生卵、佃煮がお替り自由で、ご飯が何杯でも食べられそうでした。

共有空間の心地よさもポイント

広島の老舗家具メーカー「マルニ木工」を代表するHIROSHIMAのチェアやテーブルが配置されたロビー

長門湯本温泉の進化に合わせて、ロビーは2020年にリニューアル。モダンで心地よい空間が広がっていて、まるでおしゃれなカフェのよう。ここで実際にコーヒーなどを飲みながらくつろぐことができます。

取材時は、長門温泉で開催する萩焼深川窯の企画展「うつわの秋」に合わせて田原崇雄氏のTシリーズの器で提供されました

ロビーでは、静岡から長門市に移住した焙煎士によるコーヒーショップ「COFFEE&ROASTER YAMA」の深煎りコーヒーを楽しめます。

玉仙閣の川床

宿の魅力は建物内だけではありません。宿の真下を流れる音信川の支流、大寧寺川(たいねいじがわ)沿いには川床が設置されており、事前予約制の「テントサウナプラン」などさまざまな用途で利用できます。

長門湯本温泉を散歩しよう!

西京ボウル

玉仙閣を出てすぐ目に入るのが、大寧寺川を挟んで斜め向かいにある「湯本観光ホテル西京」の屋上に設置された巨大なピンのオブジェ。全16レーンの本格的なボーリング場にカラオケや卓球、ゲームコーナーを完備しつつ、露天風呂も足湯カフェもあるという、ファミリーやグループで楽しめそうなスポットです。

曹洞宗の名刹「大寧寺」に到着

玉仙閣から大寧寺川沿いを歩くこと約10分。長門湯本温泉の歴史と深い関わりをもつ曹洞宗屈指の名刹「大寧寺」があります。

既にフォトジェニックなアプローチ。入口には鳥居があります

ぶらぶらと歩いていたら、大寧寺境内にまつられている「長門豊川稲荷」を発見! 1961年に、愛知県妙巖寺の豊川稲荷のご分霊を勧請して創建されました。

8つのご利益を授かることができるという8匹の狐たち。長門豊川稲荷奉賛会の設立30周年を記念して、2020年に設置されたようです

本堂の向かいに鎮座するのは、8匹の狐。それぞれに、五穀豊穣・大漁満足・交通安全・心願成就・身体健全・家内安全・商売繁盛・招福除厄のご利益があるそうです。

狛犬ならぬ狛狐が神域を守護しています

本堂の手前には狛犬のように、狐が安置されていました。

向かって右側の狐は巻物を咥えていました

ここで痛恨のミス! 前述の通り、大寧寺は神から授かった温泉を守り続ける、長門湯本温泉を語る上で非常に重要なスポットなのですが……。肝心の本堂を撮影し忘れてしまいました。江戸時代に再建された建物で、山口県の指定有形文化財に登録されています。

山口県指定有形文化財の大寧寺・本堂(画像:Pixta)

長門湯本温泉街から大寧寺へ続く旧参道の途中には、レンガ造りのトンネルと踏切があります。

現在運休中のJR美祢線トンネル。今にも列車がやってきそうですが、BRT(バス高速輸送システム)への転換に向けて進んでいます

レトロでフォトジェニックなスポットですが、線路内への立ち入りは禁止されていますのでご注意を!

JR美祢線大寧寺口踏切

【参考】【山口DC】運休中の美祢線を走る非日常体験とは? 長門湯本駅発のレールアクティビティ「Rail Run!」料金・予約方法とレールサイクル体験記 https://tetsudo-ch.com/13038367.html

古き良き温泉情緒と、現代的なまちづくりが見事に融合した長門湯本温泉。足元湧出の新鮮なお湯に癒やされ、ライトアップされた美しい階段や川沿いをそぞろ歩けば、日常を忘れる特別な時間を過ごせます。山口DCの開催を機に、魅力がさらに進化し続ける長門湯本温泉を、次のお出かけ先の候補に加えてみてはいかがでしょうか。
次回は、2026秋のNHK連続テレビ小説のモデルとなった宇野千代が生まれ育った岩国へ。宇野千代生家を紹介します。

文・写真:斎藤若菜

(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)