「新幹線は、午前6時新大阪発鹿児島中央行き「みずほ601号」の自由席の乗車率が200%に」(朝日新聞)、「東名高速道路は松田バス停を先頭に55キロ、関越道は嵐山小川IC付近で37キロ、常磐道は千代田PA付近で30キロ渋滞」(日テレ)といったお盆の混雑が伝えられているなか、早朝から多摩川ちかくのスタジオへ。

曜日はもちろん、盆暮れ正月といった節目に関係ない仕事場にいると、想像を超える渋滞・混雑のニュースを横目に、いつもと同じ電車に揺られ、いつもどおり居眠りして、またも乗り過ごして……と相変わらずな毎日。

そんな刺激も成長もない毎日のなかで、スタジオの現場へと向かうなかで、2つの新発見がありました。ひとつは京王特急の乗り味、もうひとつは列車撮影と最新ムービー撮影の意外な共通点です。

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◆速くなった京王特急を勝手にインプレッション

京王特急が、8000系が出てきたばかりのころよりも、速くなってました。都電荒川線や東急世田谷線と同じ軌間1372ミリというだけでなぜかドキドキするのに、めいっぱいこまめに加減速して、所要時間がわずかながらも体感的に縮まっているのがわかります。

スタジオ仕事の日、まず初列車で東京へ出て、京王新宿から特急に乗ります。京王新宿のホームは、小田急と並んで行き止まりホームを持つターミナル。小田急の2層構造と違い、フラットなつくりですが、改札口フロアから階下のホームへと続く吹き抜け空間は京王だけの眺め。

ホームの先はすでに右へカーブしていて、笹塚までの地下ルートは、軌道時代を想わせる小さな曲線が連続し、加速できず我慢して走る電車の姿も印象的です。

特急だから、Limited Expressかと思いきや、Special Express。新幹線は Super Express。京王はスペシャルなんだ……。そんなアホなことを思っていたらドアが閉まり、VVVFの起動音を響かせて、意外と力強くグッと加速。「明大前の次は調布にとまります」。地下区間は、力行、ニュートラル、力行、ニュートラルを繰り返して駆け抜けます。

力行が長めに入ったなと思うと、線路は登り坂で、突然、車内がぱっと明るくなって笹塚。「このあとは区間急行橋本行が続いてまいります」。ひとつめの停車駅、明大前を出ると、下高井戸の急カーブはゆっくりすり抜け、桜上水に構える車庫と本線を結ぶポイントも、慎重に渡る。桜上水を過ぎると、こっちのもの。ドカーンと再加速し、カタカタカタカターーーっと突っ走る。

上北沢の高架線を速めに駆け、芦花公園で再び減速。坂を下り始めたと思ったら車内が暗くなり、地下化された調布駅へ一気に下っていく。相模原線と京王線の結節点として、見事な平面交差アートを見せていた地上時代が懐かしい。いつしか地下2層化されて、調布はいま、アーバンな雰囲気を放っています。

地下化や高架化といったプランがある京王。車両も新しくなる。ロング・クロス転換可能車両5000系が、座席指定列車を担う前に、ロングシートでフライングデビューするというし……。

◆スタジオ撮影で気づいた撮り鉄との共通点

「みなさんよろしいでしょうか!」
「はいじゃあ行きましょう。本番!」
「はい、まわしたーっ。本番!」

そんな声が響くスタジオに朝から夜遅くまでいて、気づいたことがあります。ムービー撮影でも、「置き」というワードがある、と。この日、ディレクターとカメラマンが、ランスルー確認中に、こんなやりとりがありました。

「えーっと、このカットはフォーカスは置きなんでしょ?」
「いえ、追います!」
「あっ、そうなの。じゃあもう、期待しちゃっていいのかなー」
「フォーカスあわさせてくださーい」

そこで撮り鉄。鉄道の世界を画像などで切り取ることが好きな人たちには「置きピン」というワードがあります。たとえば、走ってくる列車を、ココ!という位置で射止めたいとき。その止めたいポイントの線路や架線、架線柱などに、あらかじめピントをあわせておき、走ってきた列車を狙いどおりにシャッターを連続させてとらえるという撮り方です。ピントを置きに行くという動きから、こう呼ばれています。

ただ、ムービー撮影の世界では、ピントではなくてフォーカスと呼ぶみたいです。フォーカスを被写体にあわせて追いかけるという作業のようだけど、実際は、アシスタントをすべての立ち位置に立たせて、フォーカスを事前に合わせていくという作業が行われていました。だから、基本は置きピン。

撮影所には、営業路線とは違ったレールもあります。カメラが走るレールで、その軌間は1メートルも満たないもの。何度も押したり引いたりするカメラ舞台は、一日じゅう大汗。照明の熱でクーラーがまったく効かない現場では、“置きピン”を想わせる「置くの?」といったディレクターの声、照明グループのまなざし、プロダクションマネージャーの汗、プロデューサーやクリエイティブディレクターの視線、演者の魂こめたパフォーマンス、そしてスポンサーの厳しい目……。京王特急のリアルな走りを体感したあとの、“現場の意地”が垣間見えました。