2018年、日本のビジネスシーンをけん引してきた起業家は、いまどんなビジョンを描いているか―――。

月刊「Forbes JAPAN」を発行・運営するアトミックスメディアは11月22日、「新しい日本」をつくる存在として、日本のビジネスシーンをけん引する起業家を表彰する「日本の起業家ランキング2019」を発表。

11月26日には、「Forbes JAPAN CEO Conference 2018」をパレスホテル東京で開催し、日本の起業家 BEST10 の表彰、キーノートセッションなどが行われた。

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この「日本の起業家ランキング2019」は、外部審査メンバーをむかえ、その事業性、経営チームの完成度、グローバル展開、成長ポテンシャルなどから日本の次世代を担う起業家のランキングを作成し、受賞された起業家を表彰するというもの。

また今回の「Forbes JAPAN CEO Conference 2018」では、現在活躍する専門家・研究者の朝倉祐介氏(シニフィアン 共同代表/政策研究大学院大学客員研究員)、安宅和人氏(慶應義塾大学 環境情報学部教授/ヤフー CSO)、石川善樹氏(予防医学研究者)、井上浄氏(リバネス 取締役副社長CTO/免疫研究者)、竹中平蔵氏(経済学者)が登壇。キーノートセッションを展開した。

2050年の世界の姿は2パターンしかない

「日本の起業家ランキング2019」の1位は、活動限界をむかえたロケットの破片など「宇宙ゴミ(スペース・デブリ)」の除去を事業ミッションに掲げる、アストロスケールの岡田光信氏が選ばれた。

米航空宇宙局 (NASA)アジア代表をCOOに招き、2019年には実証実験を開始する予定。彼が1位を受賞するのは、今回が初めて。

岡田氏は表彰式で「2050年の世界の姿は2パターンしかない。ひとつは持続可能な社会、もうひとつは持続不可能な社会」と切り出し、こう伝えた。

「人口が98億人になり、漁獲資源は80%以上減少し、森林が50%以上消失。50億人の人々が大気汚染に悩まされる。みなさんはそんな社会に生きたいだろうか?」

「わたしたちはいま、持続可能な社会のために意識と行動を変えなければならない。わたしたちが責任を持って技術革新にコミットして、変えていくしかない」

「宇宙ゴミ問題は6年前に始めたとき、みんなに笑われた。市場がないなら創りだせばいいし、問題解決しなければならないことが山のようにあるのは、ビジネスチャンス。みなさんとともに、2050年に持続可能な社会を、創りあげたい」

異なる価値観の人々が対話の基盤をつくるようなプラットホームを

また、2位にランクインしたのは、累計ダウンロード数3500万を超えるニュース閲覧アプリ「SmartNews」を運営する、スマートニュースの鈴木健氏と浜本階生氏。

そして3位には、Eコマースプラットフォームを手がけるBASEの鶴岡裕太氏が選ばれた。

2位の鈴木健氏、浜本階生氏は、「世界中で3500万ダウンロードあるニュースアプリ「SmartNews」は、「上質な情報をバランスよく届ける」がコンセプト。それがアメリカでも受け入れられ、アメリカで一番早く成長しているニュースアプリになっている」と。

「いまアメリカは、違う価値観を持った人々によって社会の分断というものが激しくなっているが、異なる価値観の人々が対話の基盤をつくるような一種のプラットホームをつくり
あげることを目指している」

「この社会を少しでも良くしたいと思っている人たちが、実際にそれを信じることができて、実際に自分たちの力で変えていける社会。そういったものを目指していきたい」

2050年の新3大欲求は、孤独、退屈、漠然とした不安

また、キーノートセッションでは各専門科たちが、専門分野の視点から、それぞれのビジョンについてこう伝えていた。

◆朝倉祐介氏
(シニフィアン共同代表/政策研究大学院大学 客員研究員)

「2050年にむけてどういう社会を我々がつくるのか、ということが重要。若い企業が中心となって、新しい産業ができあがっていってほしい」

「自分の孫世代に、『30年前の企業ががんばってくれたおかげでいまの自分たちがあるんだ』といわれるようになりたい」

「世の中に貢献活動しないと退屈なのかなとも思う。人と金と知恵が必要なときに、必要な場所にあるような未来がいい。未来は与えられるものではなく、自ら切り拓くもの」

◆石川善樹氏
(予防医学研究者)

「どこからが未来なのかを考えることが重要かなと。『忘れられた日本人』という著書を読んで、明治の日本人はどのような生活をしていたのかが分かる」

「2050年には、新しい3大欲求が生まれていると思います。それは『孤独』『退屈』『漠然とした不安』。人間と接する機会がなくなり、長生きになり、この3大欲求をどう対処するか考えないといけない」

「また、社会のルールが変わる気がする。テクノロシーはどれだけいい時間を過ごせたか測定できるようになってほしい。今後は、自分が普段接しない人と接するように心がけることが大切だとも思う。

◆井上浄氏
(リバネス 取締役副社長 CTO)

「すべての人類が研究者として働いていてほしい。新しいこと、ワクワクすることを見つけて全員が行うということが重要」

「わたしは現在、人間の身体を調べている。自分の日常をスマートフォンに記録し、記録することで自分の身体の未来が見えてくる」

「さまざまなデータが取れると、健康が保証される未来がやってくる。最終的には金を払って働く未来があるのではないかと考える。個人がどれだけ面白い体験をするかが金になる社会になりそう」

◆竹中平蔵氏
(経済学者)

「いま、アジアが成長エンジンになっていると思うが2050年にはアフリカなどが成長エンジンになっていると思う」

「石川さんのいった、新しい3大欲求はもうすでに始まっているように感じる。国民ひとり1人が賢く生きることが大切」

「未来は正直わからない。今後はさまざまな技術が出てくると思うが、それにうまく対応できるようにしたい」

「人間という言葉は『間』が入っている。人との『間柄』がいまも未来も変わることなく重要であり、そんな未来がいい」

「自分が理解できないことを否定しないで、まずは受け入れることが、今後とも大切だと思う」
 
 
―――集合写真(敬称略)は上段左から、南壮一郎(ビズリーチ)、佐々木 大輔(freee)、太田 裕朗(自律制御システム研究所)、中島 徳至(Global Mobility Service)、浜本 階生(スマートニュース)、鈴木 健(スマートニュース)、岡田 光信(アストロスケール)、柴山 和久(ウェルスナビ)、瀧口 浩平(メドレー)、小松 周平(Aerial Lab Industries)、太田 洋(クラウディアン)、翁 永飙(Inagora)、名越 達彦(パネイル)、坂野 哲平(アルム)。

下段左から、松本 大(マネックスグループ)、谷家 衛(あすかホールディングス)、土田 誠行(産業革新機構)、高野 真(Forbes JAPAN)、千葉 功太郎(Drone Fund)、仮屋薗 聡一(グロービス・キャピタル・パートナーズ)。

「Forbes JAPAN CEO Conference 2018」の協賛は、みずほ銀行、KPMGジャパン、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル、レナウン、ポルシェ ジャパン、SmartCell & Design presented by dentsu。