【50代から始めた鉄道趣味】その1
奥手の鉄道趣味スタート
鉄道趣味にハマったのは50歳を過ぎて、サラリーマン生活に終止符を打ってからです。毎日が日曜日になって、若い頃から憧れてきた隠遁生活に近い単純な日常を嬉々として送っていました。三食を丁寧に作って食べる。晴れていれば散歩、雨が降っていれば読書という毎日です。夕方になれば庭に水を撒いて、風呂でサッパリした後は肴を並べてゆっくり一献。良い心持ちになって早々に寝てしまうので、翌朝も早く起きます。吉田兼好的というか鴨長明的に簡素で清潔な日常。
しかし、そんな理想の生活も数年続ければ飽きてきます。
この時に青春18きっぷの存在を初めて知ったのです。
中学校を卒業した春休みに、当時の国鉄に周遊券というものがあって、東北を旅したコトを思いだしました。たしか4〜5日間急行自由席以下普通列車まで乗り放題だったのです。昭和40年代半ばだったのでSLにこそ出会いませんでしたが機関車の引く客車は走行中でも扉は開きました。最後尾から後に流れて行くレールを眺めることもできました。大阪で生まれて東京で育った筆者には電車以外に乗る機会がほとんどなかったので珍しくてドキドキしました。
当時は、夜行列車も多く運行されていたので車中泊で宿代を浮かしたことを覚えています。その時カメラを忘れて持って行かなかったというのが今でも痛恨事です。
鉄道旅がめっちゃ楽しい
青春18きっぷを知ったことが、筆者のその後の10年間を根底から変えてしまったのです。
もちろん、それまでも内田百閒先生の「阿房列車」や宮脇俊三さんの本を好んで読んでいましたから「鉄道で旅がしたいな」とぼんやり考えてはいたのですが、無職の貧乏人が鉄道旅なんかできるワケがない、と漫然と諦めていたのです。
それまで筆者に鉄道趣味があったというワケではありません。高校入学前の鉄道旅は楽しかったけれどそれっきりになってしまいました。もちろん子供の頃から”乗物”は好きでしたが、鉄道関係の専門誌を読むことも無く、学生時代の専門は美術史でしたから、旅行と言えば専ら美術館を廻って絵画や彫刻を眺めることでした。
まぁ、どこにでもいる退屈なおっさんですね。
しかし、11500円(2009年当時)で5日間、始発から24時までJR全線乗り降り自由という青春18きっぷは、時刻表の鉄道地図が白紙で与えられた様な印象でした。自由に朝から晩までJR全線を使って旅ができるのです。
早速購入して旅の予定をたて始めました。これがまた、実に楽しいのです。老眼鏡をズリあげながら時刻表とにらめっこする日々が始まりました。
【50代から始めた鉄道趣味】その2 に続きます。
(写真・記事/住田至朗)