JR北海道は5月10日、国土交通省へ鉄道事業の旅客の運賃及び料金の上限変更認可申請を行ったと発表した。旅客運輸収入全体で11.1%(税抜9.1%)、普通旅客運賃は平均で15.7%(税抜13.6%)の改定となる。

この度の運賃改定により、JR北海道は安全確保のための経費を確保しつつ、輸送サービスの向上や線区の維持を図る。申請が通れば、令和元年10月1日に予定されている消費税率の引き上げに合わせて運賃改定が実施される。

普通旅客運賃

改定される運賃額は距離に応じて異なる。

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(1)100kmまでのご利用
賃率に拠らない「対キロ区間制運賃」を導入。
他交通機関を考慮した運賃水準で設定する。
(他交通機関との比較は本記事下部参照)

(2)101km以上200km未満のご利用
賃率を1.1倍程度引き上げる。
「運賃額」=「賃率」×「乗車距離」

(3)201㎞以上のご利用
200kmを超えた区間の賃率は据え置き
「200kmまでの運賃額」+「賃率」×「200kmを超えた乗車距離」

定期旅客運賃(100㎞までの設定)

割引率は現行のまま、普通運賃の改定に伴い消費税率改定分を含め平均で22.4%(税抜き20.1%)の改定を申請した。

加算運賃

一方、運賃改定の影響が抑えられる区間も存在する。

JR北海道は新千歳空港アクセス輸送開始に伴う設備投資にかかるコストに充てるため、平成4年7月のアクセス輸送開始時より、千歳線(南千歳駅~新千歳空港駅間)を利用する乗客から加算運賃として140円を収受していた。

当該区間の利用者数は堅調に推移しており、設備投資額などの回収が順調に進捗したため、この度の運賃改定が認可された場合は加算運賃を20円に引き下げる届出を行う予定だ。たとえば、現在では札幌~新千歳空港の運賃は1,070円(内加算運賃140円)だが、改定後には1,150円(同20円)となる。

料金、その他

特急料金や座席指定料金などの料金については、消費税率の引き上げ分のみを転嫁し、増収を目的とした改定は行わない。また、特別企画乗車券(おトクなきっぷ)については、このたびの運賃改定が認可された場合、届出を行う予定である。


※図はいずれもJR北海道のプレスリリースから

利用者サービスの向上について

運賃改定により得た収入は安全確保や線区維持を除くと、以下のようなサービス向上策に充てられる。いくつかはJR北海道グループの長期経営ビジョンや中期経営計画などでも触れられている。

(1)新千歳空港アクセス輸送の強化
札幌~新千歳空港を結ぶ快速エアポートの増発

(2)車内における無料Wi-Fiサービスの実施
北海道新幹線、快速エアポートで実施

(3)261系特急気動車の新製
老朽化した特急車両の置き換え

(4)H100形一般気動車の新製
主にローカル線で運行している老朽化した一般気動車の置き換え

(5)多目的車両の新製
老朽化したリゾート車両の置き換え、キハ40形「紫水」号「山明」号を投入

(6)駅整備によるまちづくりへの協力
民族共生象徴空間開設に伴う白老駅周辺整備事業

【参考】JR北海道長期経営ビジョン発表――2031年度経営自立をめざす