“ビットバレー”への大いなる助走? 東急電鉄、IT企業4社および渋谷区と連携し次世代教育モデルを展開を目指す

2019.06.21

東急電鉄は6月17日、渋谷のIT企業4社(サイバーエージェント、DeNA、GMOインターネット、ミクシィ)、渋谷区教育委員会と「プログラミング教育事業に関する協定」を締結し、「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」を推進すると発表しました。

「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」における東急電鉄の役割は全体の運営・取りまとめや行政・大学などの調整。カリキュラム開発や教育支援などは渋谷エリアのIT各社が、渋谷区教育委員会が区立小・中学校との橋渡しを行います。

渋谷区は2019年5月1日現在、生徒約8,500人に一人一台セルラータブレットを配布するなど、渋谷ICT教育システム「渋谷区モデル」を推進しており、新学習指導要領に基づくプログラミング教育に力を入れています。

東急電鉄の狙いは渋谷区立小・中学校でのプログラミング教育の充実を図り、次世代に必要な資質・能力を持った人材を渋谷から排出すること。

“ビットバレー”渋谷

1990年代半ばから2000年代初頭にかけて、今回の協定に参加したサイバーエージェントやDeNAのようなIT企業が続々渋谷に集結していました。一例を挙げると、ホリエモンで知られるライブドアもかつて本社を構えていたのは渋谷です。

当時のムーブメントから、東京・渋谷のIT関連ベンチャー企業が集中する地域は「ビットバレー」と呼ばれました。提唱したのは「ネットエイジ(現:ユナイテッド)」創業者の西川潔氏。「”渋”=ビター」「”谷”=バレー」をつなげた「ビターバレー」とデジタルデータの単位である「bit(ビット)」を掛け合わせ、渋谷を米国のシリコンバレーのようなIT集積地になぞらえたものです。

しかし渋谷には大企業が拠点と出来るようなオフィスが不足しており、成長したIT企業が六本木などの他都市へ移転せざるを得ないという問題を抱えていました。成長産業ゆえの悩みの種とでも言いましょうか。この問題を解決するためには、十分なオフィススペースを持つビルを建設出来るような状況が整わなければなりません。

IT企業の流出が目立ち始めた2000年代半ば頃から、渋谷を取り巻く状況は徐々に変化していきます。渋谷周辺地域は2005(平成17)年12月28日に都市再生緊急整備地域に、2012(平成24)年1月には都市の国際競争力及び防災機能の強化を図り、安全で快適な都市空間を創出することを目的として特定都市再生緊急整備地域に指定されます。

かくして、平成24年に開業した渋谷ヒカリエを筆頭に、従来の渋谷にはなかったようなオフィスプレートを持つビル群が続々建設されており、2017年にはGoogle日本法人が渋谷ストリームへ”凱旋”することを発表するなど、渋谷のIT事情は再び大きな盛り上がりを見せています。

たとえばGoogleは、先日2019年6月18日、「Google for Startups Campus」を2019年内に渋谷ストリームにオープンすることを発表しました。これはアーリーからグロースステージのスタートアップ企業に向けて支援を行うものです。また、今年の九月には昨年に引き続き東急電鉄と前述のIT4社によるカンファレンスイベント「BIT VALLEY 2019」(後援:渋谷区)が開催されます。

人材確保のための渋谷百年(?)の大計

渋谷に有力なIT企業を集中させることでIT人材の交流や関連産業の集積も期待出来るようになりますが、将来的には人的リソースが不足することは目に見えています。平成28年6月に発表された経済産業省の調査によれば、2019年をピークに入職率が退職率を下回り産業人口が減少へ向かう見込みです。

【参考】IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(PDF)

また、優秀な人材ほど好待遇で海外にヘッドハンティングされる傾向も強く、仮に人材の数を揃えられても質の維持は難しくなるでしょう。”ビットバレー”渋谷を維持しようと考えているのであれば、義務教育の段階からITに力を入れておこうと考えるのは必然、そして東急電鉄にはプログラミング教育を牽引するだけの資産と横のつながりがあります。

今秋の「渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期」開業が直近の目玉ではありますが、渋谷の再開発はまだまだ続きます。教育にも力を入れる東急が”渋谷”百年の計を成功させることが出来るか、引き続き注目ですね。


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