福島市と福島駅東口地区市街地再開発組合は、JR福島駅東口再開発ビル複合棟の基本設計を公表しました。再開発ビルは駅東口から徒歩1分の敷地にある、公共エリアと民間エリアを併せた大規模施設となり、コロナ禍や工事費高騰などで当初より規模を縮小した計画で進められています。
公共エリアにはフレキシブル・ホールや大屋根広場、屋上広場、まちなかリビングなど、人々が集まって交流できるスペースが配置され、民間エリアにはカフェやフードホール、シェアラウンジなどが配置される計画です。

街なか再生の起爆剤に

福島駅東口の再開発事業の中心となる複合棟は、民間エリアと公共エリアの2つからなる建物が計画されています。
福島駅周辺では、大型店舗の撤退や利用者・店舗の減少が続き、中心市街地全体の賑わいの低下に直結すると懸念の声が上がっていたといいます。この再開発は、地権者らによる再開発組合による民間事業ですが、そこに市の交流・集客拠点を組み込んで整備することで、市は国や県とも協調して補助をしながら具体的な計画に関与し、完成した交流・集客拠点施設を市が買い取る形で整備を進めます。この公民連携での再開発は、県都の玄関口としての魅力を維持・向上させるための起爆剤としても期待されています。

再開発のコンセプト「FUKUSHIMA EGG(にぎわい・文化・つながりが生まれる)」は、卵が新たなストーリーを生むように、市民や観光客にさまざまな体験を提供する拠点を目指しています。

公共エリアは多機能スペースとして整備へ

総事業費は当初の約492億円から約100億円増の、約580億~620億円を見込み、現在は2026年度内に実施設計を固め、同下期に着工、2029年度中の開業を目指すとしています。

建物の概要

複合棟の公共エリアは地上3階建て(一部4階)、14,500㎡で整備される予定です。
1階は、大屋根広場とフレキシブル・ホールが配置され、街とつながり人びとと交わる「まちなかリビング」が併設されます。最大1500人収容の「フレキシブル・ホール」には3つのホールとホールをつなぐ2つのスペースにより7パターンの空間構成を実現し、音楽ライブ、産業展示会、企業セミナー、学会など多用途な催事への対応を想定しているといいます。

イメージパース フレキシブル・ホールの利用シーン

「まちなかリビング」は、客間、居間、こども部屋をイメージし、訪れる人が福島を知ったり、本を読んだりおしゃべりしたり、遊んだり、居心地の良い空間を予定しています。

屋上の4階まで、変化に富んだスペースが道のようにつらなります

屋上広場は、2階デッキから公共エリア屋上の4階まで、変化に富んだスペースが道のようにつらなる空間が計画されています。色とりどりの花々が楽しめ、福島市らしさが感じられるよう植栽が計画され、4階へ上がると、座ったり寝転んだり、ちょっとしたイベントもできる、親子でもゆっくりくつろげる広場になります。

4階屋上広場

民間エリアには「SHARE LOUNGE」も

民間エリアは、地上10階建ての建物が計画されています。
1階にはオープンテラスがあるカフェや福島の特産品をそろえる常設の物産スペースが、2階には福島の食とお酒が楽しめる体験型フードホールが計画されています。
3階にはTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ提供の「SHARE LOUNGE」が県内初出店し、ドロップイン利用可能なカフェ兼コワーキングスペースとして整備。高速Wi-Fiや電源を完備し、打ち合わせや読書、リモートワークに活用できるといいます。
上層階には医療クリニック、オフィス区画が入ります。
敷地内には、この複合棟の他にも、約500台の駐車スペースなどが設けられる駐車場棟と、住宅棟が計画されています。

「東西一体のまちづくり」

再開発ビルが、ビジネス・文化・交流のハブとなり、地域産品の物産展や音楽ライブ、学会、セミナーなど、多彩なイベントが日常的に開催されることで、観光振興や若者の中心市街地定着、地域経済の持続的発展が期待されます。

福島駅

さらに、駅西口の大型商業施設跡地や公共空間と連携し、県都の玄関口である駅周辺の活性化に取組み、その効果を周辺に波及することにより、好循環を生み出すことによる中心市街地の活性化が求められています。

屋上広場上空から駅前広場方向を見下ろす イメージパース

こうした中、福島市とJR東日本は7月25日、福島駅東西一体のまちづくりを推進するための覚書を締結しました。
覚書は、新東西自由通路の整備と駅前広場の再構築に関する調査検討を相互協力して行うことが盛り込まれています。

福島駅の新東西自由通路等の調査検討を推進

これにより、駅東口から駅舎を経て自由通路、駅前広場、さらには西口の大型商業施設跡地までがシームレスにつながり、訪日観光客やビジネス利用者の回遊性向上が期待されます。

(写真:福島市)
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