岡山駅から山陽線電車で姫路方面へ30分。吉井川が流れるのどかな町、和気町。

この和気駅にはかつて、同和鉱業片上鉄道という線路が接続していて、海側へ山側へと片上鉄道の気動車が行き来していた。

山側は、ほぼ吉井川に沿って線路が敷かれ、いまもその名残がいろいろと点在している。

ADVERTISEMENT

この吉井川沿いの片上鉄道が廃止されて28年経ったいま、こんどはその上空をドローンが飛ぶ。

10月1日からスタートする「和気町ドローン物流実証実験」。運営主体はレイヤーズ・コンサルティング。

日本初の多用途型ドローンを活用した過疎地域での目視外補助者なし30㎞連続航行テストが、きょう10月1日から始まった。

吉井川上空を30km超え長距離連続飛行

その前日の9月30日には、都内で記者説明会が行われ、レイヤーズ・コンサルティング事業戦略事業部 草加好弘 統括マネージングディレクター、ファミリーマート執行役員営業本部・営業本部営業推進部 青木実 部長、コニカミノルタ産業光学システム事業本部 柴谷一弘 グループリーダー、エアロジーラボ 谷紳一 代表取締役社長・CEO、和気町 草加信義 町長らが登壇。その構成や技術、今後の展望について語った。

まずドローンが飛ぶ舞台。飛行エリアは和気ドームから北、田土、津瀬、南山方を結ぶ30.3kmという長距離ルート。ドローンはほぼ吉井川の上空を連続飛行し、和気ドームから田土・津瀬を経て南山方へと到着し、再び和気ドームへと引き返す。

で、この長距離飛行ドローンでなにを運ぶか。

「商店なし、買い物もひと苦労」という過疎地を救え

和気町は、日本の過疎地が直面する課題を共有する典型的なエリアで、まず近隣に商業施設やスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどがない。そしてクルマに乗れない高齢者が増加し、そうした高齢者は買い物難民と化している。

そこでまず、この長距離連続飛行ドローンで、コンビニエンスストアに並ぶ商品を運ぶ。配送商品はファミリーマートや天満屋ハピーズなど200品目。利用者が注文し、ドローンで品物が運ばれてくるまでの流れは、こんな感じ。

ファミマに電話注文した商品がドローンで運ばれてくる

配送対象エリア内の利用者は、津瀬エリアが17世帯44人、田土が22世帯43人、南山方が26世帯59人。

ファミリーマートに注文したい利用者は、まずファミリーマート赤磐沢原店に電話かFAX、注文アプリで品物を朝9時までに注文。

するとファミリーマート赤磐沢原店の業務用車両で、品物を和気ドームへ送る。和気ドームで待機するドローンにすべての注文品を積載し、ドローンは11時に離陸。前述のルート(和気ドーム→田土→津瀬→南山方の各ヘリポート)に品物を届けていく。

片道の航路は1時間程度。回送で和気ドームへは20分前後で戻ってくることから、注文数が多い場合は2便以上に増便もできる。

ここであらためて、この実証実験の特長をみてみよう。

エアロジーラボ製ハイブリッド型最新ドローンを導入

そんな和気町ドローン物流実証実験の特長はこの6項目。

◆日本初 最長30㎞に及ぶ目視外・補助者無しによる運航システム構築実証

◆目視外・補助者なしによるドローン機体のリモート制御実証

◆長距離・大容量輸送に適した混合油によるハイブリッド型最新ドローンの活用

◆実運用を見すえた1名運用体制の構築実証

◆実運用を見すえたシェアリング型ビジネスモデルの実証(複数多地点配送、害獣駆除、スマート農業など複数用途で地域全体で活用)スマート農業においては、コニカミノルタのリモートセンシング技術を利用

◆セルラードローンや無線LAN(2.4GHzなど)を活用した運用実証

実施構成員は、レイヤーズ・コンサルティング、ファミリマート、NTTドコモ、コニカミノルタ、エアロジーラボ、和気町。

ということで、実はこの和気町ドローン物流実証実験は、コンビニ配送以外の仕事もする。

ドローン空輸便をスマホや顔認証で決済する時代へ

そう。和気町ドローン物流実証実験では、ドローンの飛行中に、赤外線センサーで害獣生息状況データを収集したり、NDVI(葉色)センサーで葉色・茎数データを収集し、稲の生育状況のムラを分析したりと、コンビニ配送以外の仕事もする。

ここで気になるのが集金。記者説明会では、ファミリーマートがクルマで2週間に1度、集金しに行くという。

この集金については、「もともとアプリ決済や顔認証決済なども試したかったが、今回のテストではコスト面で対応できなかった。ちかいうちに実現させたい」と草加好弘 統括マネージングディレクター。

―――ドローンで運ばれたファミマ弁当をキャッチして、スマホや顔認証でピッてやって支払い完了という時代も、すぐそこまできている。

鉄道チャンネル編集部