JR室蘭本線は、函館本線・長万部~岩見沢までの本線211.0㎞と、東室蘭~室蘭まで7.0kmの支線で構成する路線です。沼ノ端~長万部、沼ノ端から室蘭に特急が走るなど、札幌圏と道央・道南を結ぶ幹線ですが、岩見沢~沼ノ端は本数が少なく、ローカル線のイメージを色濃く残しています。のどかな沿線の情景を全6回に分けて紹介します。

鉄道の街として栄えた誇りが今も息づく 「追分駅」

広々とした構内が在りし日の繁栄を物語っている

室蘭本線を南下した列車は、岩見沢駅から数えて9つめの駅、追分に到着します。追分駅は北海道炭礦鉄道により1892年8月1日に開業しました。駅名は室蘭本線と夕張線(現在の石勝線)の分岐点であることに由来しています。かつては「鉄道の街」として知られ、扇形機関車庫に蒸気機関車がひしめき合っていた時代もありました。1976年4月に発生した火災により扇形機関車庫が全焼。蒸気機関車5台(さよなら運転のD51-241と79602、D51-465、D51-603、D51-1086)をはじめ、たくさんのディーゼル機関車が焼失してしまいました。

鉄道の街らしい史跡

 

追分駅前には、火災で焼失したD51-465の動輪と主連棒が展示されています。D51は1935年に製造され、北海道の貨物輸送の花形として活躍しました。動輪を支えている左側のレールは1898年にアメリカのイリノイ社で製造され、日本に輸出された鉄路です。阪鶴鉄道(1896年開業)に使用されたのちに、1916年に追分機関区転車台の側線になり、1983年の転車台改造時に発見されました。右のレールは北海道官設鉄道の発注により1900年にアメリカのカーネギー社が製造したものです。展示品の一つ一つに北海道開拓の証が刻まれています。

道の駅あびら D51ステーション

その迫力に力強い鼓動が聞こえてきそう

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追分の鉄道の歴史を知りたいのなら、追分駅から徒歩13分ほどの場所にある「道の駅あびら D51ステーション」に行ってみましょう。鉄道資料館にD51-320が展示されています。今でも油や石炭の匂いを放ち、走り出すのではないかと思える迫力。ほかにも追分駅やSL関連のプレートが展示されており、鉄道の街として息づいてきた足跡をたどることができます。

北海道の鉄道の一時代を築き上げたキハ183系

屋外には、クラウドファンディングにより保管が成功したキハ183系を展示。ピカピカに塗り替えられた車体に、追分駅になじみ深い「特急おおぞら」のヘッドマークが掲げられています。D51と並ぶ「二枚看板」として、訪れる人々を楽しませています。

鉄道に関するオリジナルグッズも販売

道の駅では、鉄道に関するグッズを販売。デゴイチせんぱいや、キハくんなど、ここでしか買えないオリジナルグッズも多数取り揃えられ、鉄道ファンならずとも旅の思い出に欲しくなる商品が並んでいます。

忘れ去られたように客車が横たわっている

安平町鉄道資料館にも立ち寄ってみましたが、道の駅にほとんどの資料が展示されているためか、すでに閉館しているようです。広々とした敷地内に、ポツンとスハ45が取り残されています。朽ち果てた姿は役目を終えて静かに眠っているようでした。

文/写真:吉田匡和