瀬戸大橋を新幹線が渡る!? 地元で熱く盛り上がる四国新幹線、実現の可能性は?

2020.11.14

瀬戸大橋は上部が高速道路、下部が鉄道の二層構造。鉄道橋としては既に新幹線の走るスペースが確保されています。 瀬戸大橋イメージ写真:まちゃー / PIXTA

現在、整備新幹線では北海道(新函館北斗―札幌)、北陸(金沢―敦賀)、九州(西九州ルート、武雄温泉―長崎)の3線3区間が工事中ですが、それに続く高速鉄道を求める動きが各地の〝新幹線空白地域〟で活発化しています。特に熱心なのが四国で、行政や経済界で構成する「四国新幹線整備促進期成会」は2020年10月20日、政府に要望書を提出しました。

本格化する人口減少社会にあって今以上の高速鉄道ネットワークが必要かどうかは議論の分かれるところですが、ここでは四国新幹線について、歩みとともに構想の詳細や実現の可能性を考えましょう。地元が早期整備の実効策として重視する「単線新幹線」についても紹介します。

四国に新幹線を 半世紀の悲願

話は50年前にさかのぼります。整備新幹線を規定する、全国新幹線鉄道整備法(略称は全幹法)は1970年に公布されました。目的は「新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図ること」。当時、東海道新幹線による経済効果が認識され、全国で新幹線を待望する動きが起こりました。時代は高度成長期。都市と地方を高速鉄道や高速道路で結び、日本全体を発展させようというばら色の夢が広がっていました。

法律に基づいて整備計画が決まったのは東北、北海道、北陸、九州(鹿児島ルートと西九州ルート)の4新幹線。つまり現在建設中の新幹線は、50年前から計画があったわけです。四国新幹線は整備新幹線となりませんでしたが、国土軸形成に必要との認識から1973年に基本計画が決定しました。しかし、オイルショックや、バブル経済崩壊を引き金にした「失われた10年(20年)」と称される経済低迷で、40年以上にわたり目立った動きはありませんでした。

北海道、北陸、九州新幹線で四国も目覚める

四国だけが新幹線の空白地帯となっていることを表すパンフレット。 画像は四国新幹線整備促進期成会の資料から

地元で四国新幹線実現の動きが活発化するのは2010年代半ばからです。理由の一つは北海道、北陸、九州新幹線の建設が進み、新幹線の整備が一巡。その後に続く高速鉄道の建設計画がないことから、四国経済界が四国新幹線の計画路線から整備路線への格上げを求めたこと、さらには2015年に北陸新幹線が金沢延伸開業して北陸来訪客が大きく増え、新幹線による経済効果が改めてクローズアップされたことがあります。

地元での連絡調整には2014年に発足した「四国の鉄道高速化連絡会」が当たっていましたが、2017年7月に「四国新幹線整備促進期成会」に改組。メンバーを県単位から四国4県の市町村や商工団体などに拡大して組織拡充や強化を図りました。

期成会の主要メンバーは徳島、香川、愛媛、高知の四国4県と四国経済連合会(四経連)ですが、特徴的なのはJR四国が一定の役割を果たしている点。期成会会長は四経連の千葉昭相談役、副会長はJR四国の社長、会長を歴任した泉雅文JR四国相談役が務めます。

2016年に北海道新幹線が新函館北斗まで開通して、JRグループ旅客6社で新幹線を運行しないのはJR四国だけになりました。JR四国は2020年11月6日発表の2020年度中間決算で140億円の営業赤字を計上しましたが、理由の一つに〝ドル箱路線〟がないことが挙げられます。「JR四国が将来的とも、地域の基幹的公共交通機関の機能を担うため新幹線が必要」という論調には賛成、反対を別にして一定の理解が必要でしょう。

東西方向に四国新幹線、南北には四国縦貫新幹線の2ルート

淡路島―徳島間の鳴門大橋も二層構造です。新幹線の車窓から鳴門の渦潮を見られる日は来るのか。 イメージ写真:Kiriko / PIXTA

四国新幹線には2つのルートがあります。一つは「四国新幹線」で、大阪市を起点に徳島市、高松市、松山市を経て大分市に至ります。本四間のうち、明石―淡路島の明石海峡大橋は道路橋なので新幹線は通れません。新幹線は大阪から和歌山市に南下し、紀伊水道を橋かトンネルで越えて淡路島に入ります。淡路島―徳島間の鳴門大橋は道路・鉄道併用橋で、新幹線が通れます。路線延長はあくまで概算ですが約480km。愛媛と大分の間の豊予海峡は海底トンネルでつなぐ構想がありますが、実現は難しいかもしれません。

もう一つは「四国縦貫新幹線」。岡山が起点で、瀬戸大橋を経由して香川県宇多津から高知に至ります。四国の真ん中を南北に縦貫する鉄道で、延長は約150kmです。

初期の資料には四国新幹線、四国縦貫新幹線のルートとともに大まかな駅位置が示されていました。 画像は四国の鉄道高速化連絡会などの資料から

四国新幹線整備促進期成会は、架橋やトンネル建設が必要となる大阪―徳島間と愛媛―大分間を棚上げして、東西方向は徳島―高松―松山間、南北方向は宇多津―高知間を整備(建設)路線と考えます。期成会パンフレットによると、整備延長302kmで、概算事業費1兆5700億円。費用便益比は1.03で経済波及効果は年間169億円と試算します。

一般に費用対効果、英語の頭文字でB/C(ベネフィット/コスト)と表記される費用便益比は投下した事業費でどの程度の経済効果が得られるかを表します。四国新幹線のB/Cは1.03で、卑近な言い方をすれば元が取れる計算です。

単線の線路を新幹線が行き来する

四国新幹線整備促進期成会が四国新幹線実現の有力手段とする単線新幹線は、2017年に「日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)」が提起しました。JAPICは建設や金融系の企業、業界団体、研究機関で構成する一般社団法人です。

JAPICは本州から四国への入り口に当たる岡山―宇多津間のみを複線、他を単線とすることで概算事業費を1兆円に抑えられるとしました。期成会は事業費を1km当たり50億円としましたが、単線化でトンネル断面積、橋梁幅員などが抑えられ、建設費は複線の6割程度で済むとします。単線比率の高いJR四国には、独自技術の蓄積があり、技術活用で新幹線への単線採用も可能としました。

四国新幹線は2037年開業がターゲット

最後に期成会が10月末、国土交通、財務の両省や自民党本部に提出した要望書の内容を紹介しましょう。

要望書は新幹線のない四国が産業や観光振興、地域づくりなどの効果を限定的なものにしている点を懸念。「国の2021年度予算編成で、四国新幹線の整備計画格上げに向けた措置を講じる」「JR四国の自立的・持続的な経営の確立に向けた国の支援の継続、同社の中長期計画に新幹線をはじめとする地域の意見が反映されるよう指導する」などを求めました。期成会は、「リニア中央新幹線が大阪延伸予定の2037年を一つのターゲットに、四国の新幹線の開業を目指す」を目標として掲げています。

文:上里夏生


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