サケにやさしい工事!?

工事区間の河川にはサケが遡上し、工事期間も一部制約を受けます。特に南リアス線は被災した橋梁が多く、事前にそれぞれの漁業協同組合と入念に打ち合わせる必要がありました。

なるべく十分な工事期間を確保するため、三鉄の担当者とともに漁協の事務所を訪れ協力要請した結果、漁協の協力を取り付けることができました。冬期間の工事は除雪の工夫も必要でした。

工事の仕上げとなる監査では、建築限界車に代わり三鉄のモーターカーに建築限界フレームを取り付けて確認しました。

鉄道を造る技術者集団・JRTTへの社会的信頼感高まる

沿線住民が手を振って列車を歓迎(左)。ホームでは大漁旗を持った住民が到着客を出迎えました。

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こうした工事を経て三鉄は全線で運転を再開。2014年4月6日、三鉄の全線運転再開を記念する式典が宮古市で開かれました。

三鉄の復旧工事は2014年4月に三鉄の全線で運転再開することが至上命令でしたが、三鉄はもちろん、JRTTや施工業者、沿線自治体など関係する人たちの熱意や協力で、無事達成することができました。

工期通りに完成できた最大の理由は、地元の理解を得られたからといえます。JRTTには三鉄から感謝状が贈られ、〝鉄道を造る技術者集団〟としての存在感や社会的信頼も高まったはずです。

あっという間の3年間

式典でJRTT職員の心に残っているのは、普代村元村長があいさつで防災への心構えを説いた、「2度あった津波の被害が、3度あってはならない」だそう。技術研究会で特別報告したJRTTの現場長は、三鉄の復旧に現地で携わった3年間を、「今振り返れば、あっという間の3年間だった」と回顧しました。

建設所や工事課をはじめとするJRTT全職員の心は、「三鉄を復旧させて、被災地に希望の灯を灯そう」で一致しました。報告で聞いた、「本当にいい仕事をさせてもらった。技術者冥利に尽きる」の言葉は、今も取材した私の心に強く残っています。

文:上里夏生
(写真:鉄道・運輸機構提供)