三陸鉄道を復旧させた鉄道マンの熱い思い JRTT「三陸鉄道復興鉄道建設所」の記憶【取材ノートから No4】
工法を工夫、法面はコンクリート保護

少々専門的になりますが、ここでは復旧工事の内容を鉄道構造物別に見ましょう。津波で流出した盛土は法面(斜面部分)をコンクリートで保護、頂上部分の施工基面上を強化路盤としました。津波による盛土への大きな被害はなかったものの、地震動による揺り込みで沈下した盛土の補強には、盛土補強材を法面強化工に応用した工法を採用しました。
地震動で損傷した橋梁の橋脚は、コンクリートによる巻き立て補強を実施。鋼製の支承部は吸収力のあるゴム支承に交換し、移動制限装置を設置しました。
限られた工期内に工事を終えるため、JRTTは多種多様な工夫を凝らしました。エピソード的に紹介すれば、通常の盛土法面の施工では盛土の完了後、構造物は下部から上部へと順番に法面を施工し、最後に施工基面となる天端(線路を敷く盛土の頂上部分)を仕上げます。
しかし今回は、早期に施工基面を軌道に引き渡す必要があったため、天端を先に施工し、その後に法面を施工する工法を採用。逆順の施工で工期を短縮しました。
安全確保に最大限注力
先に述べた通り、南リアス線盛―吉浜間は延長が21kmに及ぶことから、全体を3区間に区分しました。最も注意するのは、もちろん安全確保。万一何かがあれば全体の工程に影響を生じ、予定通りの運転再開が難しくなる可能性もあるからです。
万全の備えを敷くため、JRTTは現場に正副2人の監督員を配置しましたが、幸い大きな事故を発生させることなく、工事を終えることができました。
直接の工事を離れた話題では、現地での宿舎確保に苦心。現地と東京支社との会議に、インターネット会議システムを活用したのも有益でした。「JRTTは、2020年のリモートワークを先取りしていたのかも」と思ったりもします。
被災地復興の様々な工事が重なる中では資材確保も課題で、一部には発生材、再生材を利用しました。例えば、島越駅付近は従来の高架構造から地域防災の機能を担う盛土に変更しましたが、盛土には近隣の国道工事からの発生材を使用しました。
