古民家ホテル、新型高速船遊覧クルーズ、流れ星新幹線…… 地域を元気にするJR九州
新型高速船、沖ノ島遊覧コースに出航

2件目のニュースは、鉄道を離れた海洋観光の話題。JR九州グループのJR九州高速船の新型高速船「QUEEN BEETLE(クイーンビートル)」が2021年3月20日、博多港発着の沖ノ島遊覧コースで初就航しました。
クイーンビートルは本来、2020年7月に福岡―韓国の釜山航路にデビューの予定でしたが、コロナの影響で日韓間の国際交流はほぼ停止状態にあります。JR九州高速船は日韓航路の再開まで、日本人向け国内周遊クルーズで新船を運航することにしました。
クイーンビートルは、同社4隻目の高速船。3隻保有するジェットフォイル「ビートル」の老朽化に備え、オーストラリアの造船会社に発注しました。高速性と運航安定性を兼ね備えたアルミ船体の三胴船(トリマラン)で、全長83m、定員502人。JR九州の観光列車のデザイナーとして知られる、水戸岡鋭治さんのドーンデザイン研究所代表が内外装を手掛けるのも注目点といえます。
本当は日韓を結ぶ外航船ですが……

クイーンビートルは本来なら外航船で、国内運航に関しては、国土交通省から特別な許可(沿岸輸送特許)を受けました。JR九州と、旅行会社のHISが旅行商品として設定する博多港発着の遊覧コースでは、福岡県宗像市の世界遺産の沖ノ島と大島を海上から見た後、博多港に帰港します。
ツアー初日は、ほぼ募集定員いっぱいの234人が乗船。特典として、乗船客には宗像大社の紙御朱印3種類を進呈しました。同じ沖ノ島遊覧は3月21、27日も実施されました。
韓国人観光客を日本に呼び込むための新船が、ターゲットを日本人に変えたツアーで成功したのは、単なる偶然ではありません。実はコロナ前、年間2000万人もの日本人が海外に出国していました。年間何十回も海外出張するビジネスマンもいるので、あくまで単純計算ですが、日本人の6人に1人は海外旅行していたことになります。
海外旅行していた人たちを国内に引き戻す
しかしコロナで、おいそれと海外に出掛けられなくなりました。そこで毎年海外に出掛けていたような旅行好きの人たちの目が、国内に向くようになったというのです。
株価急騰に象徴されるように、現下の経済状況はそれほど悪くない。昨年のGo To トラベルのような動機付けがあれば、旅行需要は必ず回復できます。そうした流れに、クイーンビートルは乗ろうとしているのです。
本格的なコロナ収束まで、あと4~5年は必要とされます。JR九州高速船の内航ツアーは、日本の旅行業界が目指すべき「世界を見てきた日本人に満足してもらう、本物志向の国内旅行」といえそうです。同社は引き続き、2021年4月の土日には、11時発と14時発で福岡湾遊覧コース、17時の夕方発で糸島沖遊覧コースを設定しています。