複数社にわたって相互直通運転する都市圏の鉄道で動いている技術のひとつが無線式列車制御システム(CBTC:Communications-Based Train Control)。

この無線式列車制御システムの仕様を共通化する検討が重ねられ、2021年3月にそのガイドラインが定まった。

現状と課題、共通化のメリット

相互直通運転する列車の現状は、たとえばB社B線で走る場合は、B社B線(Cメーカー製独自仕様)用のアンテナ・無線機・車上制御装置で走り、相互直通先のA社A線に入ると、A社A線(Dメーカー製独自仕様)用のアンテナ・無線機・車上制御装置で走っている。

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そのため、車両には各社の独自仕様にあわせたアンテナ・無線機・車上制御装置などを複数搭載することになり、コストや車重、設置スペース、メンテナンスなどの量が増えるといった課題があった。

この各社仕様を共通化し、共通仕様に準拠したアンテナ・無線機・車上制御装置にすることで、車載機器が減り、導入コスト・メンテナンスコストなどが削減できるというメリットを生む。

国土交通省は今回、都市鉄道向けCBTC仕様共通化検討の結果をまとめ、インターフェース仕様共通化ガイドラインと無線回線設計ガイドラインを定めた。

インターフェース仕様共通化ガイドライン

◆ 制御装置に求められる機能の整理

地上・車上制御装置に求められる機能を整理

例)列車位置決定機能、停止限界決定機能 等

◆ 伝送方式に依存しないCBTCの考え方の整理

無線装置のみを更新して最新技術を適用するための考え方を整理

例)列車制御機能と情報伝送機能を独立して構成 等

◆ 交換される情報の内容の整理

求められる機能を実現するために地上制御装置~車上制御装置間で授受される情報の内容を整理

例)列車位置情報、運転方向情報、停止限界情報 等

◆ 仕様決定時に協議・認識共有が必要な内容の整理

相互直通運転を行う事業者間で具体的な仕様を定めるさいに、協議・認識共有が必要な内容を整理

例)安全余裕の考え方、列車位置情報の表現方法 等

◆ システムが異なる場合の対応方法

異なるシステム間で相互直通運転を行う場合の対応方法を整理

例)制御電文に設定した空き容量を活用して路線状況に応じて必要となる情報等を授受 等

無線回線設計ガイドライン

◆ 無線通信システムの設計・評価方法の整理

無線回線設計の基本的な手順、評価指標等を整理

例)伝搬損失、雑音・干渉波強度の計算・想定方法 等

◆ 無線通信システムの仕様を決定する手順の整理

前提条件から無線通信システムの仕様を決定する手順を整理

例)前提条件:列車本数、制御周期 等

例)決定する仕様:周波数、 通信容量、通信周期 等

◆ 相互直通運転に際して必要となる設計の考え方

相互直通運転を行う場合に必要な内容、留意事項を整理

例)基本的に各仕様を一致させる必要があるが、周波数が同一帯域であればソフトウェアにより対応可能 等

◆ 無線装置の仕様の例示

導入済等のシステムの前提条件や仕様を例示

(画像:国土交通省)