午前6時4分 串本駅着 朝食と絶景でおもてなし

クシェットの窓からのぞく「本州最南端の駅」という看板

午前6時過4分、「WEST EXPRESS 銀河」は本州最南端の串本駅へ到着しました。出発は8時ということで停車時間は2時間弱。串本駅では二つのおもてなしが用意されていました。大小の奇岩が一直線に並ぶ「橋杭岩」の鑑賞と、レストラン空海で提供される『漁師の朝ごはん』です。

看板には「吉野熊野国立公園 ここは 串本 橋杭岩」と記されている
南紀熊野ジオパークガイドさんがご案内

国の名勝天然記念物にも指定されている「橋杭岩」は、梅雨時ということもあり神秘的な雰囲気を醸し出していました。日の出の素晴らしさでも有名で、夏の6時台はすでに明るくなっていますが、11月頃になると串本駅到着時と日の出時刻が重なります。秋から冬にかけての「WEST EXPRESS 銀河」の旅で期待したい観光スポットです。

朝食はレストラン空海の「漁師の朝ごはん」

朝食は地元レストランでいただく「漁師の朝ごはん」――お品書きには「カツオのたたき丼」とありましたが、実際にはカツオのたたきとご飯は分けて提供されていました。写真左上の竹の小鉢に入っているのは「トコブシ」という地元の貝で、同じく地元の食材を使った「亀の手味噌汁」と一緒にいただきます。

みそ汁の具「亀の手」

見た目は特撮映画に出てくる怪獣の足のようですが、これがみそ汁の具「亀の手」です。分類としては甲殻類で、和歌山だけでなく高知や愛媛など四国でも食されているそう。提供された「亀の手」には切れ目が入っており、二つに割って中身をいただくようになっています。お味はなかなか。良い出汁が取れるそうで、みそ汁の具にぴったりです。

橋杭岩と漁師の朝ごはんを堪能したら、再び串本駅へ。報道公開時の発車標には「試運転」と表示されていました。

実際の運行時には「銀河」の名が刻まれるのだろうか

9時37分、新宮着で夜行の旅はおしまい

「WEST EXPRESS 銀河」の窓から見える紀伊半島の海も別格 できれば晴れた日に見たい

8時に串本を発車すると、一時間ほどで紀伊勝浦へ。停車時間は5分ほどですが、紀伊勝浦では「勝浦の鮪」缶詰3種、熊野七宝きくらげの販売等が行われます。これは中行・夜行どちらでも実施されるもので、女性専用席の方には熊野の香り漂うアロマスプレーのプレゼントも。

南紀のリゾートといえば「白浜」が有名ですが、和歌山の海はどれも綺麗なもので、朝日も上ったこの時間帯は座席やデッキ、フリースペースで沿線の風景を眺めるのがおすすめです。夜行の紀南行きにおいて、「WEST EXPRESS 銀河」の大きな窓が生きる絶好のタイミングと言えるでしょう。

そうして9時37分、「WEST EXPRESS 銀河」は新宮へ到着しました。南紀コース下り夜行の終着駅にして、JR西日本とJR東海の境界駅です。

駅でのお出迎えの様子も見事なもので、駅構内では地酒や特産品の物販が盛んに行われていました。地域の活性化を目指す地元大学生らの姿もあり、また別室では比丘尼姿の語り部による「熊野曼荼羅絵解き」の実演も行われました。

新宮に着いて感じたのは地元の熱意の高さ。JR西日本和歌山支社によれば「山陰コースが動き始めた頃から地元の方の関心が高く、何とか和歌山に呼べないかということで少しずつ話をいただいていた」とのことで、この半年間のチャンスを確実に地域振興につなげていこうという意志を感じます。

新宮駅ロータリーにも「WEST EXPRESS 銀河」のロゴが

「WEST EXPRESS 銀河」は元より「移動そのものを楽しむ」のがコンセプトの列車です。他の県内観光地への導線については旅行者自身に委ねており、明確には案内していません。和歌山には他にも熊野古道や那智の滝など有名な観光スポットがあり、新宮から更に足を伸ばすのも自由です。

新宮から引き返してアドベンチャーワールドへ行くも良し、鉄道ファンなら紀州鉄道に乗りに行ったり、新宮から「ワイドビュー南紀」に乗車するもよし。楽しみ方は無限大です。今や貴重な夜行列車の旅、自身の手で最高の旅を作りましょう。

新宮駅に停車する「パンダくろしお」 粘れば銀河との並びも撮れるかも?

文/写真:一橋正浩