23時42分、和歌山着 夜食にラーメンを

和歌山駅に到着した「WEST EXPRESS 銀河」

京都から新大阪、天王寺、日根野を経て23時42分頃に和歌山へ到着します。駅の発車標には「WEST EXPRESS 銀河」と旅人を歓迎するメッセージが流れていました。ひょっとしたら実際の運行時には文面が変わっているかもしれませんが、試乗会時に表示された内容は次のようなものでした。

【歓迎 和み・和らぐ・和歌山へようこそ。多くの温泉やグルメ、世界遺産の熊野古道など、和歌山にはたくさんの魅力が詰まっています。おもてなし第一弾は、「和歌山ラーメン」です(ラーメンの記号4つ)「傾いているラーメン屋」として、メディアに多く取り上げられ、地元に愛される「まる豊」。これからの長旅に備え、細麺に豚骨醤油スープがよく絡んだマイルドな味わいの「まる豊」の和歌山ラーメンをごゆっくりご堪能ください。West express 銀河は、魅力溢れる紀南エリアへと皆様をご案内いたします。朝日が差し込む頃、本州最南端の串本では、カツオを使ったタタキ丼が楽しめる「漁師の朝ごはん」をご用意しております。「はたやま」や「太公望列車」を彷彿とさせる和歌山での夜行列車の旅をどうぞお楽しみください。】

この絵文字がユニーク

長いよ!と思わず呟いてしまうほどの気合の入った歓迎メッセージですが、和歌山での停車時間も負けず劣らず長い。出発時間は午前1時ですから、80分弱停車することになります。この時間を楽しめるよう用意されたおもてなしが、先の発車標にも出てきた「まる豊」のラーメン。

傾いたラーメン屋「まる豊」和歌山ラーメンの有名店です

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「まる豊」はかつて地盤沈下により店全体が傾いたラーメン屋として知られていましたが、2017年に現在地へ移転してからは、あくまでデザインとして「傾き」を取り入れたお店として営業しています。

豚骨醤油の和歌山ラーメン

いただくのはシンプルな豚骨醤油ラーメンで、細麺といい具材のチョイスといい、どことなくデパートのレストランで食べる懐かしの味を思い出します。写真では若干分かりづらいですが、中が半熟の味玉じゃなくてゆで卵の輪切りだったりするのが「分かっている」チョイスですね。

夜行列車の旅で夜食にラーメンを提供するというのはあまりにも顧客のニーズを理解し過ぎているムーブであり、JR西日本もまた悪魔的な誘惑を用意したものだと感心します。確かに「夜食」のラーメンはお世辞にも身体に良いとは言えませんが、夜行列車の旅でそんな細かいことを気にするのは野暮というもの。美味しくいただきましょう。

ラーメンをご一緒させていただいたとあるライターさんは胃薬を持参していたそうで、消化器官に自信のない方は各自そうした対策を取るといいでしょう。なお、和歌山駅と「まる豊」の間にはセブンイレブンがあり、飲料その他不足したものは列車に戻る前に購入できます。

午前1時、和歌山発 消灯

デッキから撮影した消灯後の2号車 座席の様子

先に述べた通り、午前1時に和歌山駅を出発すると「WEST EXPRESS 銀河」の車内照明が落とされ就寝モードへ入ります。次に車外へ出られるのは6時4分 串本駅着のタイミングですから、就寝時間はおよそ5時間ほど。2号車(普通車指定席)などは上の写真のように足元の照明だけ灯るようになっていますが、デッキやフリースペースは夜間も明るいままです。

1号車 グリーン車指定席「ファーストシート」は向かい合う二つの座席を倒し、寝そべって夜を過ごせる仕組みです

記者はリクライニング座席で一夜を明かしましたが、ゆっくり走ることもあってか揺れも気になりませんでした。走行音に関しては、「WEST EXPRESS 銀河」登場前に「117系の爆音で眠れないのでは」「そもそも夜眠りたい人がWE銀河に乗るのか?」といった声も散見されたのですが、ご心配なく。不安なら耳栓でも持参すればいいかな、という程度です。前の座席との間隔(シートピッチ)も広いためリクライニングを倒す罪悪感もありません。夜行バスに慣れた人が眠れない要素は一つもないと言って差し支えないでしょう。

どちらかといえば「夜行列車の旅」「午前零時の夜食ラーメン」といった要素が重なって興奮で眠れない方が多いのでは、と思います。そんなときはフリースペースへ足を運んだり、じっと夜の車窓を眺めているのがいいでしょう。記者はしばらくの間、カーテンと窓の間に身を潜らせていました。和歌山駅の発車標でも触れられていた「はたやま」や「太公望列車」運行時も、そんな風に夜を過ごした方はいたのでしょうか。