湘南の〝ジェットコースター〟

大船駅に停車中の5000形車両。最近の鉄道車両らしく前面にはワイドなガラスが使用されています。

さて、本サイトをご覧の皆さんにもモノレールに乗車していただきましょう。始発は大船駅。JR大船駅とは2階フロアで連絡します。路線は鉄道でいえば全線単線。3両編成の列車がホームに滑り込んできます。

湘南といえば、皆さん何を思い浮かべるでしょうか。海や江ノ島、音楽好きの方なら加山雄三さんにサザン(オールスターズ。鉄道で「サザン」といえば、南海電気鉄道の和歌山特急ですね)かも。でも湘南モノレールの沿線に、そんなステレオタイプの湘南は全然ありません。

路線が走るのは、主に鎌倉市西部の起伏に富んだ丘陵地帯。湘南モノレールのホームページにある、「最高時速75キロ、まるでジェットコースター! 激しいアップダウンに、トンネル、カーブ、急勾配(こうばい)。アトラクション満載のコースをお楽しみいただけます」の表現は、あながち誇張とばかりはいえません。

鎌倉の森を走る登山電車

住宅街を行く大船駅の発車後。沿線の建物からは、どこか〝庶民派のモノレール〟の印象を受けます。

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大船駅を発車後、列車は直ちに加速。眼下は一車線の道路で、東京都心のビル街を悠然と走る東京モノレールとは、かなり雰囲気が異なります。列車は右へ左へとカーブを切り続け、かなりのアップダウンが続きます。

「湘南の」の枕詞に続く風景は、普通なら「海」でしょうが、残念ながら湘南モノレール沿線に海はなし。特に湘南深沢駅からは上り勾配で森に突っ込み一瞬、登山電車に乗車している感覚にもとらわれます。沿線にはトンネルもあり、鎌倉山隧道(ずいどう。ご存じと思いますがトンネルのことです)は全長450メートル。終点の湘南江の島駅近くには、250メートルの片瀬隧道もあります。

ここで、最初に書き忘れた湘南モノレールの歴史を思い出しました。路線選定には多数の案があったそうですが、最終的には京浜急行電鉄が当時、所有・運営していた自動車専用有料道路・京浜急行線(現在は市道)の上空を利活用したそうです。鉄道とモノレール、形態は違っていても湘南モノレールと京急には、間接的な関係がありました。

森やトンネルを抜けると、いよいよ終点の湘南江の島。地形の関係で、駅ホームは駅ビル5階の高層にあり、1階に降りると目の前を江ノ電(江ノ島電鉄)が走ります。以上で大船から14分間の旅は終了。1キロ足らず先に江の島、そして湘南の海が広がります。