コロナで大打撃 2020年度の三セク鉄道は40社すべてが赤字 ローカル鉄道の存在意義を考える【コラム】
観光列車やイベントで国内外の観光客を呼び込む
三セク鉄道の歴史をたどれば、国鉄時代末期、JRへの移行を前に「民間企業のJRは、採算の取れない地方ローカル線は経営できません。沿線自治体が設立した三セク鉄道が引き継ぐか、バス転換するかの判断は、地元の皆さんにお任せします」ということで、多くの三セク鉄道が誕生しました(もちろん国鉄やJRが勝手に決めたわけではなく、法律で規定されていました)。
ただ、地方圏の人口が減少に転じる中では、沿線住民の利用だけで鉄道の経営を成り立たせるのは難しく、三セク各社は魅力的な観光列車を運転。沿線の観光関係者や旅行会社とタイアップしたイベントの開催などで、都市や海外から観光客を誘致してきました。
「鉄印帳の旅」も、そうした流れの中に生まれたヒット商品です。しかしコロナは、三セク各社の営業努力を、いとも簡単に打ち砕きました。
若桜鉄道は輸送人員が増える
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会社別の輸送人員は、39社すべてがマイナスといいたいところですが、鳥取県の若桜鉄道だけプラスになりました(2019年度35万4000人、2020年度36万6000人)。
若桜鉄道の矢部雅彦総務部長にうかがったところ、理由は沿線の鳥取県立八頭高校への通学生の利用増。八頭高校はスポーツ教育に力を入れ、オリンピック選手も送り出しています。
鳥取県などは、八頭高校のスポーツ教育を地域づくりに生かそうと、鳥取市方面からから八頭高校に通学する生徒に通学定期代を補助。それで鉄道通学生が増えました。私には、地方鉄道の生き方を示すように思えます。