東海道新幹線は、2027年からミリ波方式列車無線を採用する。

東海道新幹線は現在、指令と列車内の通信に、沿線に敷設したLCX(Leaky Coaxial:電波が漏れ出るケーブル)を使用するLCX方式列車無線を使用し、安全・安定輸送の確保、利用者への情報提供、異常時対応などに活用している。

JR東海は、東海道新幹線における安全・安定輸送の確保やメンテナンスの省力化、セキュリティ強化をさらに推進するため、より高速で大容量の通信が可能となるミリ波方式による列車無線の開発を進めてきた。

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今回、その実用化の目途が立ったことから、ミリ波方式列車無線を東海道新幹線全線に整備。2021年12月から工事を始める。導入費用は約440億円。

豪雨モードを開発、約300倍の大容量通信

◆ミリ波の特徴

ミリ波は、30GHz~300GHz の周波数帯の無線の総称で、波長がミリメートル単位と短く広い周波数帯を使用できるため、高速で大容量の通信が可能に。

いっぽう、雨により電波が弱くなる性質があり、特に豪雨時には受信した信号が弱まり雑音に埋もれるため、屋外で列車との通信に使用する場合、通信が不安定になるという問題があった。

◆技術開発のポイント

豪雨時に通信が不安定になるという問題を克服するために、同じ信号を繰り返し複数回にわたって送信し、受信側で足し合わせ、雑音を除去して明瞭な通信を可能とする「豪雨モード」を開発した。

これにより、豪雨時においても指令と列車間の安定した通信が可能となり、列車無線にミリ波方式を採用することができた。

◆施工概要

従来のLCXに代えて、沿線の平均 500m毎に電化柱に地上アンテナを設置。また、車上では、地上アンテナと通信を行うため、両先頭部に車載アンテナを設置し、指令と列車間の通信環境を整備する。

ミリ波を使用することで通信速度は最大1Gbpsで、LCX方式の400MHz帯の電波と比べ、約300倍の大容量通信が可能となる。

メンテナンス省力化、車内セキュリティなどへも応用

ミリ波方式列車無線は高速で大容量の通信が可能となることから、指令と列車間の情報伝達能力が大きく向上し、ICTの活用の幅が大きく広がる。

JR東海は今後、ミリ波方式列車無線を使って安全・安定輸送の確保やメンテナンスの省力化、セキュリティ強化につながる具体的な活用方法について、さらに検討を進めていく。活用方法の検討事例は次の3点。

◆メンテナンスの省力化の推進

運転台に設置する高画質カメラの画像や、車上で取得したデータを伝送し、地上側で解析をすることで、現在、係員が行っている巡回検査等の一部を置き換えられる。

◆安全・安定輸送の確保

運転台に設置する高画質カメラの画像により、飛来物や倒竹木、小動物の衝突などが発生したさい、指令でのより迅速な状況確認を行うことで、運転再開までの時間を短縮できる。

◆車内セキュリティのさらなる強化

車内防犯カメラの伝送容量が飛躍的に大きくなり、より多くのカメラからきめ細やかな画像伝送が可能となり、異常時の車内の状況を、より迅速かつ詳細に把握できる。

画像:JR東海
記事:鉄道チャンネル(https://tetsudo-ch.com/