10月1日、東京駅7番のりば。13時52分。横殴りのどしゃ降り雨をボディに受けながら、E657系がゆっくりと入ってきた。

常磐線 特急ひたち15号、いわき行き。15M。通常は8番のりば発着、きょうは7番から15時53分、定時に発車した。

このとき、台風16号ミンドゥルが関東地方に最接近中で、内房線や外房線などで運転見合わせ、房総特急わかしおなどは計画運休していた。

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そんななか、このあと茨城の海辺を、台風16号の進路に並走するように走る特急ひたち15号は、上野を出ると、いつものように取手あたりから加速していき、減速することなく決まった力行で突っ走る。

雨水が横へと流れていく車窓には、暴風で人の気配がみあたらない街や集落が映る。

1両に10人以下、車内ワゴン販売に酒類なし

車窓へ目を向けると、この日の特急ひたち15号は、勝田車両センターE657系19本のうちの14番目、K14編成。近畿車輛がつくったくるま。

東京を出たとき、最後部車両のクハE656-14には、座席最後部にひとりだけ。その次の2号車には、座席最高部に2人がけにひとりずつ、後部側に出張男性1人、再前部にやはり2人がけ座席にひとりずつ座っていた。

車両の後ろよりに座るのが定番のこちらは、車両一番前の壁を目の前にして座る人が「新幹線でみかけるけど、在来線特急でもやっぱりいるんだ」と思ってしまう。

JR-EAST FREE Wi-Fi(JR東日本)につないで、ノートパソコンを打ち始めると、金町を通過したころ、車内ワゴン販売が水戸寄りからやってきた。酒類はまだ積んでなかった。

となりの窓側に座る同行者は、弁当を片付けると、石岡を過ぎたあたりからうとうと。

緊急事態宣言あけ初日、昼過ぎの特急ひたち15号は、たまに身体がもってかれそうなほどの横Gを加えながら、ピーンというパルス音を車内に響かせるモーター音を発しながら、台風16号の暴風のなかをしたたかに走っていく。

ちなみに、台風16号の名、ミンドゥルは、命名国が北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国。朝鮮語でタンポポを意味するという。次はミートゥーの水戸。

水戸にはEF81 98や、DE10が2両いた。出張先まであと1時間ちょっと。えっ!? 大甕の手前に支障物があってこの列車は停車するって!

「常磐線は、大甕~常陸多賀駅間での線路に支障物の影響で、水戸~いわき駅間の上下線で運転を見合わせています。係員が現地に向かっています。復旧作業が終わり次第運転を再開します」

―――得意先との約束の時間に間に合うのか。

画像:鉄道チャンネル(この日とは違う、取材時のE657系車内)
記事:鉄道チャンネル(https://tetsudo-ch.com/