「鉄道技術展2021」に見た鉄道の未来(中編) 「なぜ鉄道は、人を惹きつけるのか」 デザイナーズ・イブニングで考える【コラム】
鉄道趣味市場は年間400~500億円!?
パネルディスカッションには、機芸出版社取締役で雑誌「鉄道模型趣味」の名取紀之編集長、元名古屋鉄道代表取締役副社長で鉄道友の会の柚原誠副会長、女子鉄アナウンサーの久野知美さんの3人がバネリストとして登壇。近畿車輛の南井健治上席執行役員・営業統括責任者が、モデレーターを務めました。
名取編集長が明かしたのは、鉄道趣味の市場規模。あくまで推計ですが、年間消費額は400~500億円程度。鉄道旅行などを除いた数字で、「空前の鉄道ブーム」とされる中でも、それほど巨大な市場が存在するわけではありません。
名取さんは、「乗り鉄、撮り鉄、鉄道模型、鉄道の種類でも新幹線、在来線、JR、私鉄からナローゲージまで、さまざまな楽しみ方ができるのが鉄道趣味。インターネットで何でも分かる現代、鉄道趣味誌は新しい鉄道の見方や楽しみ方を提示する必要がある」と役割を説きました。
下降式の窓を下ろしてホーム、そして街を見る
柚原副会長のタイトルは、「下降窓を下ろして外を見る、そのとき。」。ヨーロッパの鉄道にも造けいの深い、柚原さんの印象に残るのはドイツやスイスの鉄道だそう。両国の車両は、フレームレスの下降式一枚窓が主流です。駅に到着して窓を下ろし、ホームや街の様子を見る。「それこそが鉄道ファンのだいご味」と話しました。
さらに、鉄道デザインに話を広げて「鉄道に関心のない人にも、列車や車両に興味を持ってもらう。そのために必要なのがデザインだ」と述べました。
「おけいはん」が鉄道趣味の原点
女子鉄アナウンサーとしてテレビなどで活躍する久野さんの、鉄道好きの原点は京阪電気鉄道。京阪が採用する、つなげて一曲になる駅メロ(駅の発車メロディー)や、女性イメージキャラクターの「おけいはん」から関心を持ったそうで、女性ファンを増やすには、切り口を変えたPRも必要と提案しました。
ディスカッションでは、「日本の鉄道の魅力を高めているのは、鉄道事業者の社員や職員。まじめに勤務して、安全で正確な列車運行を支える。こうした〝人が支える鉄道〟の一面を実感できるのは、世界でも日本の鉄道だけだ」(柚原さん)の発言もありました。(ちなみに柚原さんは、「鉄道員」の呼び名が大好きだそうです。)