新交通システムで〝島〟に帰る

六甲ライナーの新鋭・3000形車両。港町神戸にふさわしい「船」をイメージさせる前面傾斜のシルエットは、住吉川や六甲の景観にマッチしたデザインとのことです(写真:のりえもん / PIXTA)

RDEを締めくくったのは、鉄道デザイナーのプレゼン。日本鉄道車輌工業会(鉄車工)によるプログラムとして、3人のデザイナーがそれぞれのこだわりを披露しました。ここでは代表して、川崎車両(川崎重工業車両カンパニーから改組)の小菅大地さんがデザインして2018年にデビューした、神戸新交通の3000形車両を取り上げます。

JR神戸線住吉と六甲アイランドを結ぶ六甲ライナーの車両デザインは、六甲山ろくと神戸港を結ぶ路線の特性を踏まえ、「海の手(海の方)と六甲の山並みをつなぐ新交通」の全体コンセプトを立てました。

六甲ライナーの乗客の多くは、六甲アイランドの住人。小菅さんは、島(六甲アイランド)に暮らす家族を想定し、一日の仕事を終えて「島(自宅)に帰るお父さん(お母さんも)」のくつろぎや安らぎ、そしてお父さんの帰りを待ちわびる子どもたちの思いを、3000形のデザインに込めたそうです。

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私自身、六甲ライナーへの乗車経験はないのですが、小菅さんの話を聞くうち、「次回の関西紀行では神戸に行ってみよう」と思いました。これこそが、「鉄道デザインの力」かもしれませんね。

次週は、鉄道技術展2021会場で気づいたこと、考えたことなどをアトランダムに記して連載を締めくくりたいと思います。引き続き、ぜひご覧ください。

鉄車工のプレゼンで、ある車両デザイナーはこんな笑い話もしていました。「つり革の写真を見て普通の人は『つり革だ』思うだけだが、デザイナーは『○○鉄道の××形』と考えてしまう。これも一種の職業病かも」(イメージ画像:コマワリ / PIXTA)

記事:上里夏生