天下の険をスイッチバックで登る

箱根湯本駅に停車中の3000形+3100形「アレグラ号」。アレグラは、箱根登山鉄道と姉妹提携するレーティッシュ鉄道が走るスイス・ロマンシュ語のあいさつ。まるで模型の電車のようなデザインです

箱根湯本に戻り、箱根紀行を続けましょう。小田急ロマンスカーの反対側のホームに待ち構えているのが箱根登山鉄道。路線は小田原―強羅間の15.0キロで、1888年に開業した小田原馬車鉄道がルーツです。電気鉄道としての箱根湯本―強羅間の営業開始は1919年で、1世紀を超す歴史を持ちます(会社としては2018年に創業130年を迎えました)。

〝天下の険〟とうたわれた箱根の山を登るため、路線は急こう配の連続。途中に3回のスイッチバックがあり、そのたびに運転士さんと車掌さんが持ち場を変えて、車両の前後を行ったり来たりという光景は、鉄道ファンの皆さんならよくご存じでしょう。

乗車して感じたのは、観光鉄道というか観光客の利用が多い路線の性格を鉄道側がよく意識しているという点。車内放送では、彫刻の森美術館や小涌谷温泉などの沿線スポットを案内するほか、トンネルや橋りょうをはじめ歴史ある鉄道施設も説明します。

最新鋭の観光電車と旧形電車が同居

箱根登山鉄道の車両にも触れましょう。電車は事業用車を除けばモハ1形、モハ2形、1000形、2000形、3000形、3100形の6種類。ただし3100形は3000形を片運転台・2両固定編成にしたもので、3000形と大きな違いはありません。いかにも登山電車然とした旧形の1形、2形と、観光鉄道らしさを打ち出した1000形以降でスタイルがはっきり分かれるのが特徴でしょうか。

急カーブが続く箱根登山鉄道は、通常の鉄道車両のようにホロで車両をつなげません。連結面の〝ずれ〟を乗客に見てもらおうと、アレグラ号は連結面の窓を大きくとっています
箱根登山鉄道の車両といえばずばりこれという方も多い旧形のモハ1形。真ん中の車両は1940年代末に採用された青と黄色に塗装されています

最新鋭で、2014年に1両編成の3000形、次いで2017年に2両固定編成の3100形がデビューした「アレグラ号」は、連結面や側面の窓をワイドに広げ、箱根や富士山の眺望を満喫できます。一方で、旧形の1形、2形に魅力を感じるファンも多いでしょう。私の現地取材日は、旧形も営業運転されていました。

登山鉄道終点の強羅駅は箱根の山の交通結節点といったポジションで、途中の宮ノ下駅もあわせて路線バスに乗り継げます。今回は、ケーブルカーに乗り換えて芦ノ湖に向かいました。

前編はここまで。後編では、ケーブルカーやロープウェイ、さらには箱根湯本駅前のにぎわい、湯本駅近くにある小田急グループの日帰り温泉施設などをリポートしたいと思います。ぜひご覧ください。

記事:上里夏生(写真は一部を除き筆者撮影)

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