JR東日本が 品川駅 の北側~高輪ゲートウェイ駅 の周辺で行っている再開発事業で整備される街「TAKANAWA GATEWAY CITY」の進捗を、2024年1月初旬時点でのまとめとして伝えします。

前回記事:高輪ゲートウェイ駅前の開発進捗 2024年1月版① JR東日本・品川開発プロジェクト「TAKANAWA GATEWAY CITY」 | コラム | 鉄道チャンネル (tetsudo-ch.com)

品川駅北周辺地区の再開発事業

品川駅北周辺地区の「品川開発プロジェクト(第1期)」では、4つの街区が整備されています。その中で品川駅に一番近い4街区の概要や進捗に関しては、前回ご紹介をしました。4街区の複合棟Ⅰに関しては、2025年3月と他の街区よりも一足早い開業を目指し、整備が進んでいます。

図:JR東日本 都市計画(素案)の概要から

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今回は、1~3街区の建物などを紹介をしていきます。2024年1月現在では、この1~3街区の開業は2025年度中(~2026年3月まで)の予定となっています。

この事業が完成した後の街の名称はTAKANAWA GATEWAY CITY となります。

高輪ゲートウェイ駅前の「TAKANAWA GATEWAY CITY」

TAKANAWA GATEWAY CITYは、下図のような5つの建物や公園・広場などが整備されるという計画となっています。前回ご紹介したように、明治初期の鉄道構造物で史跡指定をされた「高輪築堤」を、敷地内に保存をしながら活用をすることが計画されています。

西側・国道15号側からの街のパースと開業予定時期(図:JR東日本)

上図のうち、右の2つのタワーが2025年3月開業する4街区の複合棟Ⅰです。
全体の外観イメージが下になります。上の図の視点とは反対側になる、JRの線路を挟んだ芝浦港南側からの完成イメージ図になります。

東側・芝浦港南方面から見た完成イメージ(画像:JR東日本)

生活支援施設やエネルギーセンターが設置される複合棟Ⅱ

先行して開業する複合棟ⅠNorth の北側・田町駅方面に隣接するのが3街区となり、複合棟Ⅱという建物が建てらます。この複合棟Ⅱは、地上31階・地下5階、高さ166.86mの高層ビルで、オフィスや商業施設、クリニック、フィットネス施設、子育支援施設の他に、エネルギーセンター(地域冷暖房設備)が設置される建物になります。

複合棟Ⅱイメージ (画像:JR東日本)

複合棟Ⅱは、京急・都営地下鉄の泉岳寺駅に隣接し、フレキシビリティの高いオフィスフロアが設けられます。
(国道15線側の隣接敷地では、「泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業」という事業が進行中ですので、別の機会にご紹介をします。)

上のイメージにあるように、東側・JR線路側には線路方面が見渡せるようなテラスが設けられ、2階デッキは歩行者のメイン移動ルートになります。
フィットネス施設に関しては、「ジェクサー」のブランドで駅近くや駅ナカでのフィットネスクラブなどを運営しているJR東日本スポーツが、その運営に携わるようです。
エネルギーセンターに関しては、街のレジリエンス(回復力)を支える地域冷暖房設備を有し、街全体に環境性能の高いエネルギーを供給し、災害時も電力・ 熱を確保するような施設になるとのことです。

複合棟Ⅱには高輪築堤の保存・現地公開スペースも

この複合棟Ⅱのある3街区には、高輪築堤の第7橋梁部を含む約80mの現地保存のための場所も設けられます。
開発に向けた調査中にこの高輪築堤の一部が見つかった影響から、その保存空間を確保するために、複合棟Ⅱは当初計画よりも建物位置を東側・鉄道の線路側へ地上4m・地下12m移動をして都市計画変更を行いました。

高輪築堤の「第七橋梁部付近」を眺めるスペースも設置予定 (画像:JR東日本)

この高輪築堤の保存空間においては、ARやVR 等の最先端技術を活用して開業当時の鉄道が走る景観の再現を行うなど等、高輪築堤を含めた地域資源等を知るきっかけになるような取り組みを検討するとしています。

2~3街区の間には、東西をつなぐ連絡通路も整備中

高輪ゲートウェイ駅の周辺はJRの車両基地があったことから線路スペースが広く設けられていたため、国道15号線(第1京浜)が走る山手線の内側と、旧海岸通りが芝浦~港南を繋いでいる山手線の外側を、東西に結ぶための道路が少ないのが現状です。今回のこのエリアの開発の中では、この東西間の移動難を解消するために、複数の道路設置が予定されています。
歩行者道の一つは、高輪ゲートウェイ駅のすぐ南に作られる高架の連絡通路で、もう一つが2街区と3街区の間にできる「第二東西連絡道路」という、人と車両の両方が通行できる幹線道路になります。

図:JR東日本 都市計画(素案)の概要から

この道路整備は港区が行っているもので、元々あった「高輪橋架道橋下区道」(あまりにも高さが低く、おばけトンネルや首曲がりトンネルなどと呼ばれていたトンネルです)という車両の一方通行道路を、少し移動して車両相互通行ができる「第二東西連絡道路」を新しく造るという事業になります。
下の画像の、(上写真)高さの低い一方通行だった道路を、(下図)のような幅が広く緊急車両の通れる高さのある道路へ、変更をする工事を行っています。

港区の「第二東西連絡道路」の工事説明会資料より

この道路の完成ですが、歩道の完成が2026年度、対面で車両が通れるのは2031年度予定と、完成までは時間がかかりそうです。

隈研吾氏の特徴的な外装デザイン、文化創造棟

3街区・複合棟Ⅱの北側にあたる2街区には、公園と一体となった低層建物「文化創造棟」が建設される予定です。各種プログラムに対応可能な展示施設やホール等を備え、次世代に向けた文化育成・交流・発信の拠点となります。

文化創造棟イメージ (画像:JR東日本)

地上6階、地下3階のこの「文化創造棟」は、外装デザインアーキテクトに隈研吾氏(隈研吾建築都市設計事務所)を迎えています。
最寄りJR駅の高輪ゲートウェイ駅舎のデザインを行ったのも 隈研吾氏 で、この駅舎は、折り紙のジオメトリーを持つ白い膜による大屋根と、ホームから天井までの大空間が印象的な建物となっています。
文化創造棟に関して 隈研吾氏は「施設内部で行われるダイナミックな活動が躍動感を持って 外部に滲み出す象徴的なデザインとしました。緑と木によって 形作られたスパイラルにより、建物全体で日本の四季を表現しています。」としています。

隣接する公園レベル等から屋上庭園まで連続して繋がる道を設け、そのの周りに数々の緑を配置するという特徴的なデザインは、かなり周囲から目を引く存在になることでしょう。

文化創造棟イメージ(画像:JR東日本)

文化創造棟の中に、様々な展示・パフォーマンス空間

この地上6階、地下3階の文化創造棟内の各フロアは、ホワイエやロビーを通じて繋がるという想定になっています。上図左下の展示室は、5階に設けられる自由レイアウトが可能な天井高6.5m、面積約1,500㎡(ホワイエを含む)の大きな展示室空間になります。地下3階には、固定席で最大1,200席、立席で最大2,000名を収録する、面積約1,000㎡のライブ/パフォーマンスのホールが設けられます。
その他にも、緑と触れ合える憩いの場となる屋上庭園や、靴を脱いでくつろげる約100畳の畳の空間(4階)など、さまざまな規模や形式のコンテンツに対応した複数の空間が創出されます。

文化創造棟内のイメージ (図:JR東日本)

この文化創造棟におけるプログラムを企画・運営するための組織として、準備室長に国内外で活躍する内田まほろ氏(2002‐2020年 日本科学未来館 キュレーター)を迎え、一般財団法人 JR東日本文化創造財団が2022年4月に設立されました。全館をJR東日本関連組織の直営として企画・運営することで、世界中に新しい文化フォーマットを提示し、「100年先に文化をつなぐ」施設を目指すことになります。

文化創造棟と一体となった公園に、高輪築堤の保存スペース

先ほどの3街区に続き、2街区内の文化創造棟と一体的に整備される公園にも、高輪築堤の一部40mほどが、保存されることになっています。

(画像:JR東日本)

上図のように、高輪築堤が、公園内や文化創造棟から眺められるような整備が完了するのは、この2街区の開業より少し遅れた2027年度を予定しています。

最も田町駅寄りの1街区には高層住宅棟が

今回の開発区域の中で、最も北側・田町駅寄りの1街区に誕生するのが「住宅棟」です。この住宅棟は、地上44階・地下2階で、高さ172.12mとなります。TAKANAWA GATEWAY CITYの文化創造棟を除く4つの棟は、複合棟ⅠSouthの158.68m~住宅棟の172.12mまでという、どれも高層な建物になります。
(近隣の国道15号線沿い東側にある、住友不動産 三田ツインビル西館が高さ約179m、その隣・札ノ辻交差点隣接の住友不動産 東京三田ガーデンタワーが高さ約215m、線路を挟んだ東側では港南エリアのNTTドコモ品川ビルが約145mになります。今回建つ4つの建物は、泉岳寺駅周辺としては目立つ高さの建物になるのがわかります。)

この住宅棟には、住宅の他にインターナショナルスクールや商業施設などが入ります。

住宅棟(画像:JR東日本)

住宅棟は、エクスパッツ(外国人ビジネスワーカー)にも対応した国際水準の高層高級賃貸住宅で、テラス型住戸を含むレジデンスになるとされています。
海外拠点の外資系企業などから日本の支社などに派遣されている、外国の富裕層を対象にしているようで、全戸約860戸のうち約200戸(2018年の都市計画・素案作成時)が国際水準居住施設としての整備が予定されているようです。

図:JR東日本 都市計画(素案)の概要から

低層部にインターナショナルスクールが入ることで、周辺に居住するエクスパッツやその家族にとっても暮らしやすい環境となることが期待されます。インターナショナルスクールの運営は、東京インターナショナルスクールが担う事が発表されています。港区という事で、この街の以外の周辺地域にも多くの外国籍の方が住んでおり、良い立地なのだと思います。

1街区の北側に隣接する広場は、植栽や水辺空間等によりビオトープ(生物空間)として多様な生態系に配慮した計画と し、豊かな自然を感じられるエコロジカルな環境が整備されます。

オフィス・住宅の運営はJR東日本グループで

この新しい街を開発するにあたり多様なパートナーの提携・参加を発表していますが、JR東日本のグループ企業も多く参加を予定しています。
商業施設部分のルミネの他にも、オフィスの運営に関してはジェイアール東日本ビルディング、そして住宅棟の賃貸住宅部分ではジェイアール東日本都市開発が担当をすることが発表されています。

1~3街区の現状は?

さて、現在の状況を写真でご紹介します。

下写真は、国道15線沿いから南東方向を向いています。右にあるビルが4街区の複合棟ⅠNortheでかなり上階まで建物外装が見えてきています。その奥、写真左側が4街区で建設中の複合棟Ⅱになります。

(撮影:2024年1月6日)

下写真は、同じく国道15号線沿いから見た複合棟Ⅱになります。ここは現在、日々進んでいると感じられます。その奥、左側にはまだ、何も建物は見えていません。この複合棟Ⅱがある場所と同ブロックの国道15号線下が、京急・都営地下鉄の泉岳寺駅のある場所になります。

(撮影:2024年1月6日)

下写真は、3街区と2街区の間位の位置から、2街区方面を見ています(撮影者の背中側が3街区に建築中の複合棟Ⅱになります)。写真の左が国道15線が方面、写真の奥に向かって札ノ辻交差点・田町駅方面、写真右手に映るのがJR線路とその線路を挟んだ東側に建つ芝浦地区の建物になります。・
こちらには、文化創造棟と住宅棟が建設されていきます。現在はまだ、基礎部分・地下部分の工事段階のようです。
(2024年1月時点では、この場所には、JRの線路下を通り東西をつなぐ道路にアクセスをするための、歩行者用仮通路が設置されています。)

(撮影:2023年12月22日)

下の写真は、上と同様に3街区と2街区の間位の位置から、3街区方面・南方面を向いて撮影した写真です。複合棟Ⅱが間近に見えています。

(撮影:2023年12月22日)

そのまま少し東側に進み、JR線の下を通る地下通路を見てみます。
下写真は、地下通路に入り、高輪側を見たところです。ここはまだ「高輪橋架道橋下区道」という昔の通路のままの区間です。車道が無くなり道幅は広いものの天井が非常に低く、大人の頭ギリギリの高さなのがわかります。

(撮影:2023年12月22日)

そこからさらに、東側へ進みます。
通路が切り替わり暫定歩行者通路である「旧放水渠内通路」の部分に入りました。この通路は、高さもあり圧迫感が軽減されていて、以前よりも快適な歩行者専用道です。2026年度には「第二東西連絡道路」という新しい道路の歩道部分が完成する予定のようです。(歩道部分が2026年度、車道の部分は31年度の予定だそうです)
まだ少し先ですが、開通すると便利になりそうですね。

(撮影:2023年12月22日)

下写真は、JR線の上を通る「札の辻橋」の上から、高輪ゲートウェイ方面を見たところです。左奥の高い建物が複合棟Ⅰの2つの建物、その手前に中層階まで建ち始めているが複合棟Ⅱです。
右側の高いクレーンが並んでいる場所が住宅棟が建つ場所で、その左の小さなクレーンが並ぶ場所が文化創造棟の場所になります。

(撮影:2024年1月9日)

「未来への実験場」その他の進捗状況

品川駅北周辺地区の「品川開発プロジェクト(第1期)」で作られる、「TAKANAWA GATEWAY CITY」の街の概要や、2024年1月までの進行状況を、ざっとご紹介してきました。

JR東日本は、この「TAKANAWA GATEWAY CITY」に関しては、
「未来への実験場」~100年先の心豊かなくらしに向けて多様なパートナーとつくりあげる環境先導のまちづくり~ というコンせプトを打ち出し、かなり早い段階から、新しい街を作り上げるべく着々と準備を進めているようです。

前回の①記事で紹介をしたように、KDDIや東京大学などと行う、新しい街での新しい取り組みの準備は、既に始まっています。

これに加え、2023年9月にはJR東日本とシンガポール国立大学に間で、日本とシンガポールの両国でスタートアップエコシステム(新規で事業を立ち上げる企業を支援するための環境やインフラ整備)を TAKANAWA GATEWAY CITY を拠点に構築し、スタートアップ企業の東南アジアなど海外への進出を支援するような取り組みが行われることも発表されました。

JR東日本とシンガポール国立大学の提携発表の様子 (写真:JR東日本)

また、街周辺のエリアマネジメント推進のための「一般社団法人高輪ゲートウェイエリアマネジメント」という法人を既に2022年4月に立ち上げ、2023年10月に「高輪地区まつり」を近隣地区の施設・ウォーターズ竹芝で開催したり、2023年12月に高輪ゲートウェイ駅改札内の鉄道テラスにて「Music Space in Winter」という音楽イベントを開催したりと、高輪・港南地区をはじめとした周辺地域の関係者・施設と一緒になった取り組みを、既に始めています。(街が開業してからもこの法人は、地域の活性化や近隣地域との連携、安心安全ための環境づくりなどに、寄与していくことになります。)

最近では、JR東日本がNTT東日本やKDDIと共に、高輪ゲートウェイ駅や品川港南エリアで、鉄道運行データや人流データを活用した案内誘導サービスを検証する取り組みが発表されています。この取り組みは、この新しい街開業後の「都市OS※」の実装や、他の地域との連携までを視野に入れた検証のために、2025年3月までと1年以上にわたり実施されるというものになります。品川駅周辺エリアにおけるエキマチ一体の新たなスマートシティモデルの実装を目指すとしています。
(※都市OS:街の設備や街の人に関するデータを収集・分析して、そのデータを活用した新たなサービス創出を可能とするデータ基盤。)

JR東、NTT、KDDIの実証で目指す将来像 (画像:JR東日本)

「TAKANAWA GATEWAY CITY」を含む品川駅の周辺では、この他にもJR東海のリニア中央新幹線関連の工事や、京急品川駅の地平化改良工事などの品川駅周辺の開発など、色々なものが進んでいます。

近年の都内であまり見かけないほどの大規模な地域開発になりますので、何か進捗があれば「鉄道チャンネル」でもお伝えをしていきたいと思います。

(鎌田啓吾)