初代門司駅の遺構から〝お宝〟発見 学会が求める現地保存は実現できるか?(福岡県北九州市)【コラム】
北九州市の移築関係事業費執行されず
北州市は当初、発掘調査を終えた後は埋蔵文化財を別施設に移し、複合公共施設を建設する方針でした。これに待ったをかけたのが鉄道史学会や建築史学会。2024年1月、「遺構は日本の港湾都市の形成過程を示す貴重な文化資源。現地での保存・公開が望ましい」の要望書を北九州市に提出しました。
日本イコモスも、北九州市に「現地での全面保存が望ましい」と要望しています。
専門家の提言を受けた現地では、2024年に入って「緊急シンポジウム」(2月24日)、「遺産発掘報告会」(3月3日)、「講演会・初代門司駅の出現」(同16日)、「市民考古学講座」(同28日)の4件のセミナーが連続開催。市民の関心も高まりつつあります。
北九州市議会もこうした動きに呼応。2023年度補正予算案に計上されていた移築関係事業費2000万円は、2024年3月議会で減額動議が可決され、結局執行されませんでした。
市議会は公共施設集約には賛成するものの、遺構の保存方法には慎重な検討が必要とします。武内和久市長も2024年3月28日の会見で、「議会あるいは市民の皆さんと十分な議論を尽くして、事業を適切に進めたい」と述べています。
鉄道の世界では保存車両は多数ありますが、土木遺構の前例は多くないはず(土木学会の選奨土木遺産は近鉄難波線大断面シールドトンネルなど多数あります)。ほぼ同時期にクローズアップされた東京の高輪築堤などと相互に情報交換しながら、最適な形で保存・公開されることを期待したいと思います。
乗りたい!! 門司港レトロ観光線


ラストは鉄道ファン目線で、門司エリアを散策。スタートは、現在の門司港駅から至近の「九州鉄道記念館」。初代門司駅や門司機関区を活用した鉄道ミュージアムで、北九州市がJR九州と無償賃貸契約を結び2003年8月に開館しました。運営は、JR九州も加わった「九州鉄道記念館運営共同企業体」。施設内には9600形、C59(以上SL)、EF10、ED72(以上EL)などが保存展示されます。
記念館から乗車できるのが、観光鉄道「門司港レトロ観光線(愛称名・北九州銀行レトロライン)」。休止になっていた鹿児島線の貨物支線を北九州市が取得し、第三セクターの平成筑豊鉄道が運行します。

路線は九州鉄道記念館~関門海峡めかり間2.1キロ。小型ディーゼル機関車(DL)に2両編成の客車を連結します。途中駅は出光美術館とノーフォーク広場(いずれも駅名)。終点の関門海峡めかり駅前には、ステンレス製EL・EF30や旧形客車が展示されます。
記事:上里夏生