成田空港で2025年5月25日、3本目のC滑走路建設と2本目のB滑走路の延伸工事が本格スタートした。供用開始(完成)は2029年3月予定で、空港の機能強化をグループの成長につなげる姿勢を打ち出すのが空港アクセスを受け持つ京成電鉄だ。

京成が2025年5月21日に策定・公表した、2025~2027年度の3年間を対象にした中期経営計画「D2プラン」。企業価値向上の柱に「成田空港利用者の将来的増加に備えた輸送サービス強化」を打ち出す。

サービス強化の実効策が「新型有料特急の導入準備」。次代に向けた検討事項には、「成田スカイアクセス単線区間の線増を意識した鉄道施設改良」に加え、「次期スカイライナーの検討」を挙げる。

発展や力強さ示す頭文字「D」

京成は2022年度に、2030年度まで9年間の長期経営計画「Dプラン」を公表。プラン名の「D」に「発展」(Development)、「力強さ」(Dynamic)、「革新的」(Drastic)、「日々実践」(Day by Day)の思いを託した。

Dプランは計画期間を3期に分け、第2期が2025年度からの3年間だ。D2プランの期間中には、「人口減少に伴う地域間競争顕在化」、「労働力不足の進行」、「環境配慮を求められる企業経営」といった外部環境変化を予測。なかでも最大級の変化をもたらすのが成田空港の機能強化になる。

具体的には、新滑走路完成などで航空旅客数は現在の年間4000万人が7500万人に、空港内従業員(空港ショップなどで働く人)も4万人が7万人に増える。

どうなる次期スカイライナー

要注目は、押上~成田空港の新しい有料特急。D2プラン期間中、車両新製に着手する。

もう一つ、ファンの関心を集めそうなのが「次期スカイライナー車両の検討」。鉄道界のフラッグシップ車両の一つの京成スカイライナー、現在の2代目AE形(2010年デビュー)は初代AE形(1973年)、AE100形(1990年)に続く3代目で、仮に新型車両が登場すれば4代目になる。

現行スカイライナーは8両編成。京成は輸送力増強策として長編成化を視野に入れる。

施設面の輸送力増強策が、成田スカイアクセスのネック解消。スカイアクセスは成田湯川~成田空港間が単線で、複線化に向けて国レベルの検討が進む。京成も線路容量拡大の必要性を中計に明記した。

【参考】成田空港への鉄道アクセス輸送力強化、国レベルで検討(千葉県成田市)【コラム】
https://tetsudo-ch.com/12999565.html

空港アクセス関連投資は累計8000億円規模

駅や車両基地関係では、成田空港駅の線路配置を再考。京成本線と成田スカイアクセスが一本のホームを共用する縦列スタイルで、列車発車順などに制約を受ける。

車両施設では、2029年3月完成に向け整備が進むのが宗吾車両基地(千葉県酒々井町)の拡張。工場近代化に合わせて留置線を増設し、車両収容力を増強する。

【参考】京成、宗吾車両基地の拡充工事起工式を実施 京成酒々井~宗吾参道間に新工場 2028年度末頃までの完成見込む(※2024年4月掲載)
https://tetsudo-ch.com/12955289.html

2040年代までの概算値では、空港アクセス強化関連の投資額は総額8000億円程度(規模感を示す数字で実際の設備投資額とは異なる)。

京成は、超長期的視点で投資に取り組み、企業グループの成長とともに環境に配慮したサステナブル経営にも注力する。

新社長に天野専務執行役員

京成はD2プラン実現に、新しい経営陣で臨む。2025年6月27日予定の定時株主総会と取締役会で、小林敏也社長は代表権を持つ会長、新しい代表取締役社長には天野貴夫代表取締役・専務執行役員が就任する。

天野取締役は1988年入社で、鉄道本部運輸部長、京成建設社長などを歴任。国土交通省記者クラブでの会見で、「地域に密着しながら堅実に発展する京成グループをつくり上げたい」と抱負を語った。

記事:上里夏生

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