福島市と福島駅東口地区市街地再開発組合は、JR福島駅東口再開発ビル複合棟の基本設計を公表しました。再開発ビルは駅東口から徒歩1分の敷地に、公共エリアと民間エリアを併せた大規模施設となる見込みです。大屋根広場や屋上広場を中心に12のシーンを演出するほか、公共部には親子向けの遊び場を設置。民間部は当初案から1フロア削減し、地上10階建てに見直されました。2029年度中の開業を見据え、駅西口方面への自由通路整備を核とした東西一体の都市再整備と連動させ、中心市街地全体の回遊性を高めるとしています。

広場の老朽化、商業施設撤退も

福島駅東口の再開発事業では、民間エリアと公共エリアの2つからなるビルを建設する計画が進められています。従来から広場の老朽化や商業施設の撤退が課題となっており、歩行者空間の減少が指摘されてきました。大型店舗の撤退や利用者・店舗の減少は、中心市街地全体の賑わいの低下に直結すると懸念の声も上がっています。

こうした中、県都の玄関口としての魅力を維持・向上させるため、地権者らによる再開発組合を設立し、国や県からの補助を受けながら具体的な計画を詰めていたということです。再開発のコンセプト「FUKUSHIMA EGG(にぎわい・文化・つながり)」は、卵が新たなストーリーを生むように、市民や観光客にさまざまな体験を提供する拠点を目指しています。

公共エリアは多機能スペースとして整備へ

総事業費は当初の492億円から約100億円増の最大で約620億円を見込み、現在は2025年度内に詳細設計を固め、2026年度下期に着工、2029年度中の開業を目指すとしています。

4階 屋上広場

公共エリアは地上4階建て、建築面積約5500㎡で整備される予定です。
1階は可動間仕切りホールとオープンスペースを併設した多目的エリアで、物産展やポップアップストア、観光案内コーナーなどに活用可能としています。

2階は「ライブラリーラウンジ」とし、地域資料やビジネス書、児童書を配架。タブレット端末やプロジェクターを備えた小会議室を併設し、学生の自習、リモートワーク、シニア向け講座など幅広い世代の学びと交流を支援するということです。

3階は「ファミリーゾーン」と位置づけ、デジタルセンサー連動型のゲーム機、組み立て式遊具、ものづくり体験コーナーを設置。保護者が見守りやすいガラス張り休憩スペースや授乳・おむつ替えコーナーを備え、小学生以下の子どもを持つ家族が安心して過ごせる環境を整える予定です。

屋上の4階まで、変化に富んだスペースが道のようにつらなります

4階は駅西口のペデストリアンデッキと直結する屋上広場で、ベンチや大型プランターを配置。季節のフラワーマーケットや野外上映会、朝ヨガなど、多彩なプログラムに対応可能で、眺望を活かした憩いの場であると同時に、防災拠点機能を兼ね備えているということです。

さらに公共エリア中央には最大1500人収容の「フレキシブルホール」を配置します。A・B・Cの3分割利用に加え、可動間仕切りで7パターンの空間構成を実現し、音楽ライブ、産業展示会、企業セミナー、学会など多用途に対応。吹き抜けのホワイエは、行き交う人々の自然な交流を演出する設えになっているといいます。

ホワイエ

民間エリアは見直しへ

民間エリアについては、当初は地上11階建てを想定していましたが、物価高騰を踏まえ1フロアを削減し、地上10階建てに合理化したと説明しています。

2階には地元企業主体のフードホールを導入し、地域食材を生かした複数の飲食店舗を横丁形式で展開予定。3階にはTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ提供の「SHARE LOUNGE」を県内初出店し、ドロップイン利用可能なカフェ兼コワーキングスペースとして整備。高速Wi-Fiや電源を完備し、打ち合わせや読書、リモートワークに活用できるといいます。

上層階にはオフィス区画、医療クリニック、住宅を集約し、居住・就労・商業をコンパクトに融合させる設計。民間エリアと公共エリアはホワイエで連結し、回遊性を高めるとしています。

「東西一体の街づくり」

福島駅

再開発ビルは、防災拠点としての機能を備えつつ、ビジネス・文化・交流のハブとしても活用される予定です。地域産品の物産展や音楽ライブ、学会、セミナーなど、多彩なイベントが日常的に開催されることで、観光振興や若者の中心市街地定着、地域経済の持続的発展が期待されます。
また、駅西口跡地の大型商業施設や公共空間と連携し、コンパクトシティ+ネットワーク型まちづくりを推進。バス路線再編や自転車走行空間の整備など、モビリティ施策も併せた総合的な都市再編が求められます。

屋上広場から駅前広場方向を見下ろす イメージパース

こうした中、福島市とJR東日本は7月25日、福島駅東西一体の街作りを推進するための連携覚書を締結しました。
覚書によると、新東西自由通路の整備と駅前広場の再構築に関する調査検討で相互協力を行うことが盛り込まれています。自由通路は、再開発ビル公共エリアの4階屋上広場と直結し、雨天時でも快適に移動できる歩行者動線を形成する計画です。

福島駅の新東西自由通路等の調査検討を推進

これにより、駅東口から駅舎を経て自由通路、駅前広場、さらには西口の大型商業跡地までがシームレスにつながり、訪日観光客やビジネス利用者の回遊性向上が見込まれます。今後は、年度内をめどに調査結果をまとめ、具体的な整備計画と事業スケジュールを策定する予定です。

(写真:福島市)
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