日本初の鉄道団体旅行を企画した南新助の生涯を描く 日旅の創業120周年を記念した小説が刊行

旅行業界で鉄道旅行を得意分野にするのが日本旅行。現在はJR西日本グループの同社の創業は1905年11月で、2025年に120周年を迎えた。節目の年を記念して創業者・南新助の生涯を描いた小説「旅行屋さん 日本初の旅行会社・日本旅行と南新助」が刊行された。
日本旅行は現在の滋賀県草津市で創業された。南が打ち出したのは、日本初の列車利用の高野山と伊勢神宮への団体旅行。3年後の1908年には国鉄(当時は鉄道院)の貸切臨時列車を利用した、長野県・善光寺参詣の団体旅行を催行。これが日本の旅行業の第一号とされる。
物語のアウトライン。時代は明治、鉄道開通に賛美両論が巻き起こる草津村の村長・南信太郎は駅の開業に尽力し、立ち売り弁当の販売を開始する。志を継いだ息子の新助は、地元の人々や鉄道への恩返しの思いを込めて、伊勢神宮、善光寺への団体参拝を実現させる……。
日本初の旅行会社が実践したのは、旅行業ならぬ「旅のお世話」。日本旅行の社史に一部フィクションも取り混ぜながら、笑いと涙の〝旅行屋さん〟の奮闘記を描く。
著者は、2018年刊行の「がいなもん 松浦武四郎一代」で第3回北海道ゆかりの本大賞などを受賞した、作家の河治和香(かわじ・わか)さん。カバーイラストを、アニメ映画「銀河鉄道の夜」の監督として知られる杉井ギサブローさんが手掛けたのも話題だ。
四六判並製、280ページ、実業之日本社刊。電子書籍もある。
記事:上里夏生
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