国交省が2026年7月6日に「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会」の最終とりまとめ案を示しました。成田空港は、滑走路の新増設などが行われ、2030年代に向けて3つの旅客ターミナルを一つの新ターミナルに集約するという計画です。これにあわせ、空港へ向かう鉄道アクセスも大きく見直されます。成田エクスプレス(JR東日本)の増発、スカイライナー(京成電鉄)の所要時間短縮などが盛り込まれ、成田空港周辺の駅に関しても京成高架駅の新設やJRの空港駅の再整備の方向性が決まりました。国土交通省が描く成田空港の〝未来予想図〟とはどのようなものなのでしょうか?

開港当初はターミナル直結駅なし

1978年の開港当初、空港ターミナル直結の鉄道駅がなく、当時の京成「成田空港駅」から連絡バスなどでターミナルへ向かっていました。大きな転機となったのは1991年。現在の成田空港駅が開業し、JRの成田エクスプレスと京成スカイライナーが空港ターミナル直下へ乗り入れるようになりました。

さらに、2010年には成田スカイアクセス線が開業。スカイライナーは日暮里~空港第2ビル間を最速36分で結び、都心と成田空港の距離感を大きく縮めました。もともと東京駅と成田空港を結ぶ成田新幹線用地として整備が進められた区間を、1991年にJRが単線で活用し、その後、京成が成田スカイアクセス線を整備しました。

JRと京成2路線が首都圏との交通を担っています (図:国土交通省)

3路線の乗り入れがあるものの、成田空港の手前の区間には、JRと京成の単線区間が存在しており、列車の運行本数を増やすのが難しい状況になっていました。

こうした中、国交省の「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会」の第4回会合はは7月6日に実施され、とりまとめ案が示されました。成田空港では、滑走路の新増設などにより、将来的な年間発着容量を現在の34万回から50万回へ増やす計画が進んでおり、これにあわせた旅客ターミナルの見直しや、空港駅と空港周辺の鉄道施設も大きく見直されることになります。

新滑走路の増設で進化する成田空港

国交省によると、滑走路の新増設により成田空港の発着回数が50万回に達した場合、旅客数は年間7,500万人に増える見通しです(内訳は国内線旅客1,900万人、国際線旅客5,600万人)。一方、現在の施設での取扱容量は5,700万人/年とされており、2025年度実績は年間4,077万人となっています。また、貨物量も年間300万トン規模に増えるとされています。(2025年度実績は、年194万トン)

新しい旅客ターミナルはワンターミナル方式で計画

旅客取扱施設については、現在3つに分かれている旅客ターミナルを一つに集約するワンターミナル方式に優位性があるとして、ワンターミナルでに新旅客ターミナル整備を目指すとしています。

新しいターミナルイメージ(右下は現在のターミナル配置) (図:成田国際空港会社)

ターミナル形状は、ロングピア型での整備を目指し、二次交通との接続や空港の経営戦略などを踏まえて、引き続き検討が行われます。

新ターミナル形状・段階整備のイメージ (図:国土交通省)

新ターミナルは、航空利用旅客の施設としてだけではなく、交通の結節点、商業施設・オフィス等の機能をもたせ、北東アジアのハブ空港にふさわしい質や魅力を兼ね備え拠点を目指します。

【参考】 【2030年代の成田空港】世界最大級の巨大ターミナルへ 3ターミナル集約の「ワンターミナル」構想と「新駅誕生」で第2の開港へ! https://tetsudo-ch.com/13020079.html

新ターミナルのイメージ(図:国土交通省)

鉄道・バス・タクシー・新モビリティ等二次交通との接続拠点として駅と直結させることを計画しており、航空機を利用する旅客だけではなく、地域住民や空港従業員にとっても訪れて楽しめる施設がつくられます。

新ターミナルエリアの断面イメージ(図:国土交通省)

また、日本を訪れた方が最初に見る“日本の姿”になる場所でもあるため、これから始まる滞在への期待と高揚感を抱くような日本最大のインバウンドのゲートウェイとなるよう、国籍・年代・性別を超えた様々な人に印象に残るような空間づくりが行われます。

新ターミナルと駅の接続エリアのイメージ(図:国土交通省)

新ターミナルでは、世界最高水準の乗継利便性を実現するために、館内APM(Automated People Mover、広大な空港ターミナル内やサ搭乗棟間、周辺施設を結ぶ無人自動運転の旅客輸送システム)等の新たな交通システムの導入が検討されています。

成田空港の新しい鉄道駅の整備

成混雑期の京成スカイライナーと成田エクスプレスは、2030年代前半にピーク時混雑率が100%を超える見込みです。さらに、アクセス特急や京成本線も2030年代半ばには混雑率150%超が見込まれています。空港にある「成田空港駅」「空港第2ビル駅」も2030年代半ばごろから駅利用者が2023年度比で150%を超え、混雑が深刻化するとされています。
今回の案で大きなポイントとなるのは、京成線では成田スカイアクセス線の高架・複線化と高架新駅の整備、JR線では成田空港駅~空港第2ビル駅間などの複線化です。

京成の成田アクセス線は高架の新駅を想定、京成本線の東成田駅と一体運用を目指す(図:国土交通省)

京成の成田スカイアクセス線に関しては、現在ある京成本線の東成田駅近くに高架での新駅を設け、両駅一帯での運用を行います。JR線は、現在の成田空港駅と空港第2ビル駅を利用しながらも、既存の京成線の空いた部分を利用して駅の再整備を行うことを目指す方針です。

成田空港周辺の鉄道施設整備イメージ

京成は、スカイライナーなどが走る成田スカイアクセス線を大きく増強します。
現在の東成田駅付近には、3面5線の高架新駅を整備する計画です。新駅には、新ターミナルへ向かう南側の改札口と、第2ターミナルへ向かう東側の改札口を設ける方向で、東成田駅との一体的な運用も検討するとしています。

空港周辺では成田スカイアクセス線の新線整備や単線区間の複線化を進める方向です。さらに、印旛日本医大駅~新鎌ヶ谷駅間では有料特急列車専用の新線を整備し、複々線化する構想も示されています。

成田空港駅及び空港周辺の鉄道施設の整備(図:国土交通省)

JRでは、空港第2ビル駅~東関道交差部付近で、既存の成田アクセス線跡地を利用して複線化を行い、東関道交差部付近~成田駅の区間も複線化を行います。既存京成線を改軌して両駅のホームを増強し、両駅間ともに複線化。あわせて、現在の成田空港駅にも、新ターミナルへ接続する改札口を新たに整備する方向です。

京成は新型有料特急の都心・羽田との直通構想!JRはNEX増便でさらに便利に!

京成では新型有料特急を押上、品川、羽田空港方面へ直通させる構想も盛り込まれました。事業費や技術的な課題を精査したうえで、2026年度中の着手を目指すとしています。

新型有料特急の直通構想の第1フェーズでは、2028年度に押上駅までの乗り入れを目指すとしています。
第2フェーズでは、技術的な課題などの解決を前提に、2030年代に都営浅草線を経由して京急線品川駅まで直通。さらに京急線を経て、羽田空港第1・第2ターミナル駅までの直通運転を目指すということです。押上~空港第2ビル間の所要時間が、現在の最速30分台前半から20分台後半へ短くなる可能性があります。

押上・品川・羽田空港方面への直通構想(図:国土交通省)

整備が進めば、京成線ではスカイライナーと新型有料特急をあわせて1時間あたり最大6本、アクセス特急を1時間あたり最大3本へ増やせる可能性があります。スカイライナーの日暮里~空港第2ビル間は、現在の最速36分から30分台前半へ短くなる見通しです。

京成スカイライナー
京成スカイライナー(写真:鉄道チャンネル)

JRでは、成田エクスプレスを1時間あたり最大3~4本へ増やせる可能性があるとしています。また、現在JR東日本が整備を進めている「羽田空港アクセス線(仮称)」を活用したルートでの乗り入れについても、今後の検討課題に挙げています。

成田エクスプレス(N'EX)
成田エクスプレス(写真:PIXTA)

今回の整備では、京成線とJR線の動線を分け、旅客案内の改善や改札内外の混雑緩和を図る狙いがあります。鉄道アクセス全体では、現行比で約1.8倍の輸送力確保を目指すとしています。成田空港は、滑走路やターミナルだけでなく、鉄道アクセスも含めて大きく姿を変えることになりそうです。

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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