9月23日、福井県の新ブランド米「いちほまれ」が首都圏で販売を開始した。これまでのコシヒカリをはじめ、ハナエチゼン、イクヒカリ、あきさかりといった福井発の品種にまた新たなブランド米が誕生し、この「いちほまれ」の首都圏進出を機に本格的に東日本への拡販を狙う。

その前日の22日夜、鯖江市内での仕事を終えて、駅前ののれんをくぐる。へしこやうざくに箸をうろうろさせながら、カウンターのなかの人、こっちの人といろいろ話す。

「まだまだ、ってか米原でしょ。こっちは」

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北陸新幹線の敦賀延伸、さらには小浜を経て京都・大阪へ至るルートがニュースになるけど、福井以南は「基本、米原」。京都・大阪へ、東京へ出るときは、北陸線の敦賀や米原を経由する道が「いまもむかしもそう。これからもでしょ」という。

「いちほまれ」首都圏進出にあわせた都内発表会で福井県関係者は、「福井の米は京阪神への流通が多く、なかなか東京圏へは届かなかった。この「いちほまれ」首都圏販売を機に、東日本へ本格的に送り込む。福井県の米をもっといっぱい食べてほしい」と話していた。福井出身の道端アンジェリカもゲスト登壇し、「自分が生まれた福井県からみなさんの手元にこの新たなブランド米が届くことがすごくうれしい」と伝えた。

長浜港を中継地とする鉄道・汽船時代

それでも県関係者は「鯖街道などにみるように、基本は京都・大阪を向いている」ともいう。福井県の公式ホームページには「鯖街道」についてこう記されている。

「古代、京都の朝廷へ食料を献上する御食国(みけつくに)のひとつだった若狭。日本海の海の幸が、福井の小浜から京都の大原を結ぶ若狭街道を通って運ばれていました。特に18世紀後半からは多くの鯖が水揚げされ運ばれたことから「鯖街道」とも呼ばれています。若狭湾で獲れた鯖に一塩し、夜も寝ないで京都まで運ぶと、ちょうどよい味になっていたとか」

この小浜を経る鯖街道時代を経て、北陸線の線路が敦賀から長浜まで南下してくると、物資の流れは変わる。長浜(滋賀県)までは鉄道で、長浜港から浜大津までは琵琶湖を行く汽船で物資が運ばれる時代へ。のちに、北陸線の線路は東海道線の米原まで到達し、京都・大阪と東京を結ぶ長距離列車が走り出す。

最近では、北陸新幹線の敦賀以西について、小浜を経由するルートにほぼ決まった。

福井の人は、いまも人・モノの流れが「だいたい米原を経るんじゃないか」というが、こうした流れから、22日の発表会見で県関係者では、「でもこれからは、北陸新幹線の延伸もひかえている。人や物資の流れは、かつての鯖街道、小浜経由も新幹線で結ばれ、金沢・長野ルートで東京圏と結ばれる機会も増えてくるだろう」とも。

鯖街道から北陸道・中山道の流通へ、鯖街道時代と重なる小浜ルートへ――福井発新ブランド米「いちほまれ」の拡販の狙いに、新たな兆しがみえた。

(写真左の男性は福井県 西川一誠知事、中央は道端アンジェリカ)