1970年代後半に「ブルートレイン・ブーム」というものががありました

「定本」という言葉を久しぶりに見ました。簡単に言えば「標準となる本」ということです。

1970年代後半に「ブルートレイン・ブーム」というものがあり、それ以降、40年に渡って山の様な「ブルートレイン本」が出版されてきました。その頃小学生・中学生でブームの中心にいた人たちも、現在40台から50台の「責任や立場で最もシンドイ」世代かもしれません。彼等が、一過性のブームでは無い、ステディーな鉄道ファンとして斯界の基盤となってくれていることを願いたいです。

当時、運賃値上げや新幹線、高速バス、航空機との競合で減少する寝台車需要への集客を図った国鉄自身のPRなどが「ブルートレイン・ブーム」の始まりだった様ですが、個人的には、SLブーム、スーパーカーブームの終息で苦境に立った出版業界・メディアが新たな「メシのタネ」にひねり出した「次の一手」だった印象があります。というのはブームの真っ最中に、実際には多くの「ブルトレ」が廃止されていったのです。

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当時、ブームとは無関係に、東海道新幹線よりも高額な「急行銀河」の20系52cmの3段寝台に好んで乗っていました。狭くて窮屈でしたが、深夜、駅での長時間停車でホームの夜気(深更の空気の匂いって独特ですよね)を呼吸したり、24時間営業をしていた名古屋駅ホームのきしめんを食べるのを楽しみにしていたコトを思い出します。何よりも、狭い寝台で聞く、ちょっとソフトに聞こえるレールの継ぎ目のリズム! 嗚呼、懐かしい・・・。

肝心の「定本」の中身

まず「本誌は2008年に講談社より発刊された「さらばブルートレイン!」を再編集したものです。」という点です。だから「さらばブルートレイン!」を底本に、改めて「定本」と名乗った所以なのでしょうか。

ともあれ、

ブルートレインの出発から終着までの行程を徹底ルポ。列車の停車駅や車内の雰囲気を丁寧に描きつつも、“乗り鉄の王様”である著者の記憶や夜行列車への思いが交錯し、往年の寝台特急や寝台急行が甦る乗車記です。さらに「銀河」、「あかつき/なは」、「みずほ」など、昭和の懐かしさあふれる夜行列車の情景を追憶しています。

・・・となると、著者の芦原伸さんのファンにはたまらない内容ですね。しかも、

歴代全32のブルートレインを解説。全列車の写真とトレインマークも掲載し、資料性にも優れた完全保存版の1冊。

というのは、「ブルートレイン」に関しては書架にこの1冊があれば良い、という条件を満たすかもしれません。

発売は、2017年10月16日(月)。定価は1、500円(税込)で全国の書店、オンライン書店で購入できます。

個人的にSLブームやブルートレイン・ブームに、素直になれないのは、当事者の旧国鉄が、ヒステリックに蒸気機関車を敵視し、廃止した車両を必要以上に急いで解体していたことや、ブルートレインを使い古した雑巾の様にあっさり廃止した姿勢が忘れられないからです。

JRのSL復活運転の宣伝を見る度に、今さら、何を言ってるの?と苦笑してしまうのです。SLの基本インフラ(ボイラー製作など)を消去してしまったのですから、現行の動態保存車両が壊れてしまえばそれで全てはお仕舞いなのです。

およそ必要性希薄なリニアに膨大な予算を傾けるのも大いに疑問ですが、一方で性急に廃止した大船渡線の駅舎を不必要なまでに破壊して「二度と鉄路を復活させない」という荒い鼻息にも閉口します。北海道や能登半島の路線を含め、コストをかけた復活騒動を繰り返すのではないかと、今から疑っています。

要は、目先の「未来」にしか利益を見出せないマーケティングの結果なのですが。(笑)