アクセス性と独自アプローチ、三菱地所とスタートラインが描く「都心発、障がい者支援施設」のトレンド

2018.12.11


 
 
法定雇用率ってことば、知ってる?

厚生労働省HPにはこんな記載がある。

「障害者がごく普通に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる「共生社会」実現の理念の下、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)」

この障がい者の法定雇用率が、2018年4月1日から引き上げられ、いま企業や団体はどう障がい者を雇用し、どんな仕事環境をつくっていくか、定着率をどう上げるかといった課題に直面してるんだって。

こうした背景があるなか、東京・丸の内に、障がい者雇用の支援・活躍・情報発信の新たな拠点が出現。その名も『インクル MARUNOUCHI』。

<インクル MARUNOUCHI>

丸の内といえば三菱地所グループ。その三菱地所グループが、約90社・450名の障がい者の支援・定着サポート事業を展開するスタートラインと協業してオープンさせた、「超都心型障がい者支援施設」だ。

障がい者雇用をワンストップ、都心サポート拠点へ

このインクル MARUNOUCHI は、「仕事したい」という障がい者をはじめ、障がい者雇用にかかわるすべての人が対象。

障がい者雇用について「知ってみる」「見てみる」「相談してみる」「感じてみる」「やってみる」がすぐそこで体験できるという場。

サービス内容は、個別相談窓口の運営、企業と障がい者をつなぐ採用支援、障がい者の働きやすい環境創り支援、安心感と一体感を備えたサテライトオフィスサービス、企業間勉強会の開催、セミナー運営など。

「丸の内エリアの優れた利便性やコミュニティを活かし、障がい者雇用に関する情報発信・サテライトオフィスの提供、エリアに向けた障がい者のサポートなどさまざまな支援サービスを提供」

「三菱地所グループが描く『障がいの有無に関係なく、誰もが働きやすい丸の内エリアの実現』をめざす」(スタートライン)

精神障がい者の半数が1年で退職してしまうという実情

フロア構成などは、インクル MARUNOUCHI をみてもらうことにして、なぜこうした障がい者雇用支援施設を都心に構えるか。

12月の記者発表には、三菱地所 街ブランド推進部 大谷典之統括、スタートライン 眞島哲也 インクル MARUNOUCHI 担当などが登壇。障がい者雇用まわりの市場背景についてそれぞれが語った。

まず、「障がい者には、知的障がい、精神障がい、発達障がい、高次脳機能障がいの4種類がある」と眞島担当。

「そのなかでも、身体障がい者の求職数はやや減少にあり、精神障がい者の求職数が急増してる。さらに、精神障がい者の職場定着率が最も低く、1年で半分が辞めてしまうという事情がある」

こうした実情にあるなか、スタートラインのサテライトオフィスは、82.7%という高い定着率を保っている。

独自の手法と分析で就業定着を支援

「そのポイントは、安心できる環境づくりとセルフマネジメント向上にむけた取り組み」(眞島担当)

同社では、そのセルフマネジメント向上のカギとして、準備、採用、定着支援という3つのフェーズをあげる。

「まず企業の課題整理・課題分析を行い、なぜやめたか、どう雇用してきたかなどを整理する。中長期障がい者雇用の施策立案や、評価制度、活躍ややりがい、キャリアアップを企業といっしょい取り組んでいく」

「次の採用フェーズでは、企業と障害者のミスマッチ、イメージの食い違い(そご)を減らすことがポイント」

「そして定着支援フェーズでは、定期面談や業務指導、目標設定、キャリアパス、受け入れ部門への理解を深めていくなどの対策を施す」(眞島担当)

スタートラインでは、「ACTという手法で障がい者にアプローチし、先行事象(Antecedent)、結果(Consequence)、行動(Behavior)というABC分析から課題解決へと導いていくという。

―――このあたりは、実際にインクル MARUNOUCHI で事例とフローを実感してみて。

じゃあ、こうした障がい者支援施設に、三菱地所がかかわる理由はどこにあるか?

ディベロッパーと障がい者雇用支援事業者が組む初の事例

丸の内エリアといえば三菱地所。同社は、丸の内エリアの企業やテナントにむけた「健常者も障がい者も隔たりなく、過ごしやすい街づくり」をめざしたアクションを展開。

今回も、「東京駅前というアクセス性、企業の本社オフィスや拠点事務所にちかい『サテライトオフィス』という、障がい者にとっていい環境で働いてもらえるし、本社や事務所へも通いやすい」(大谷統括)といったメリットに共感してインクル MARUNOUCHI にむけた協業を決めた。

「三菱地所としてはテナントむけの営業支援にもなる。インクル MARUNOUCHI のように、ディベロッパーと障がい者雇用支援事業者が組む事例は、国内初かもしれない」(大谷統括)

「ビルごとにあるテナント会などでも営業連携していく。また、人事連絡会や人事コミュニティーのなかで、スタートラインも参画してもらい、街づくりとしての視点でアプローチ。新しい働きやすい街をめざせるんじゃないかとも思っている」

「健常者と同じく100店舗の現場でいっしょい働いてほしい」

このインクル MARUNOUCHI に、すでにサテライトオフィスを構えた企業もある。

ファッションやアート、カフェ、デザインなどを手がける TRANSIT GENERAL OFFICE INC.もそのひとつ。

同社担当は、インクル MARUNOUCHI にサテライトオフィスをつくった理由について、「障がい者雇用に本格的に取り組み始めたとき、そのノウハウがまったくなかった」と話す。

「このインクル MARUNOUCHI でノウハウを吸収して、ゆくゆくは100店舗の現場で、障がい者も健常者と同じく、いっしょに働いてくれるといいなと思っている」

―――都心のどまんなか、丸の内から変わる障がい者雇用の現場。これはちょっと楽しみだし、わくわくする。

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