箱根登山鉄道鋼索線、一般的には箱根登山ケーブルカーと呼ばれます。関東では最古のケーブルカー。路線距離は1.2km。高低差が214mなので178.3パーミル、粘着式の普通鉄道とは比較になりません。最大勾配は200パーミルです。

しかし、筆者が子供の頃から何度も乗っている東京高尾山のケーブルカーには608パーミルという日本の鉄道での最急勾配があるので200パーミルなら余裕です。風景を楽しみながら乗ってきました。

箱根登山鉄道鋼索線は、1921年(大正10年)開業、1918年(大正7年)開業の生駒鋼索鉄道に続く日本で2番目のケーブルカーです。スイスから軌条、車両、巻き上げ装置などを輸入して作られました。1995年(平成7年)箱根登山鉄道線は3両編成化されました。鉄道線乗客の大半がケーブルカーに乗り換えることを受けて、輸送力増強が必須となり、新しい2両編成の車両に置換されました。この時に軌間が987mmから983mmに改軌されています。

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定員は2両で251名(乗務員1名を含む)と、箱根登山鉄道の3両編成(3000形アレグラ号で75名、3両で225名)以上の輸送力があります。

ウィークデーですが、とにかくケーブルカーも満員。仕方が無いので人気(にんき)の無い一番後に陣取って後方展望を撮ります。ケーブルカーは登山鉄道の線路と直角に敷設されています。奥が登山鉄道の2番線ホーム。

出発しました。後方なのでワイヤがありません。

強羅から240mで最初の公園下(こうえんしも)駅に着きます。

停止位置。

駅名標。標高は574m。両側のドアが開きます。

公園下駅を出発。

ケーブルカーは超簡単に言うと、長いケーブルの先に車輛がぶら下がっていてバランスしています。頂点(一番上の駅)でそのケーブルを出した方が下り、ケーブルを引いた方が登ってくる仕組みです。だから駅間は同じにして両側にぶら下がる車両の位置を揃えています。

ですから公園下駅から公園上(こうえんかみ)駅間も240m。

簡単な図にすると、こんな按配です。

強羅-240m-公園下-240m-公園上-120m
/行き違い所/
○———-————-600m————————○
———————600m—————-○
120m-中強羅-240m-上強羅-240m-早雲山

駅名標。標高は611m。すでに高尾山の山頂を越えました。この駅では何度も乗り降りしました。家族の勤め先の保養所がこの駅にあって、幼かった鉄道ファンの息子を連れて、ロマンスカーと箱根登山鉄道とケーブルカーを乗り継いで公園上駅まで何度も来たのです。帰路は早雲山からロープウェイ、海賊船で元箱根からバスで箱根湯本というコースでした。約20年前の春先の頃です。

公園上駅を出ると中間地点の行き違い所があります。

では、次回【私鉄に乗ろう95】箱根登山鉄道 その14 に続きます。

追記:

このコラムは、2019年9月に書かれたものです。御存知の様に、2019年10月12日に関東から東北に上陸した大型で強力な台風19号は、関東甲信越と東北地方に甚大な災害をもたらしました。台風によって亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。被災された皆様にお見舞い申し上げます。

また台風19号は箱根登山鉄道にも甚大な被害をもたらしました。箱根周辺では、1,000ミリを越える前代未聞の雨量が記録されたのです。ニュース映像などを見る限りでは路盤や橋梁などの被害は凄まじい状態です。長い歴史と風雪に耐えてきた箱根登山鉄道が箱根湯本駅と強羅駅間で運休という事態になっています。現在は代行バスが運行されています。幸い箱根登山ケーブルカーは10月16日から運行が再開されています。

被害に遭われた箱根登山鉄道にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧を心からお祈りいたします。

また復旧などの情報も随時。お知らせいたします。

(写真・記事/住田至朗)