下った所で松山隧道(96.6m)に入ります。ここから塔ノ沢駅までに4つ隧道があります。

出山隧道(124.7m)で180度Uターンをして早川橋梁を渡ります。当たり前ですが、往路とは逆方向です。銀色の塗料は錆止めでしょうか。

右側は上だけ銀色に塗装済みです。早川橋梁は東海道本線天竜川に架けられていたトラス部分を移設して使っていますが、オリジナルは1888年(明治21年)製造です。と言うコトは作られてから130年も経っているのです。なんで鉄橋ってこんなに長持ちするんでしょう。すごいですよね〜。

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杉山隧道に入ります。148.9m先の出口がずいぶん下の方にあることが分かります。

箱根登山鉄道で一番長い大ヶ嶽隧道(317.9m)。トンネル内も80パーミルの勾配です。

塔ノ沢駅は、大ヶ嶽隧道と塔ノ峰隧道に挟まれたカーブのホーム。駅の標高は153m。

ここで下り列車の交換待ちをします。箱根湯本駅から上ってくると交換列車が停まっているのです。しばらく停車しました。右の階段で下りホーム(駅舎・駅出入口)と行き来します。3両編成対応でホームが延長される前は、箱根湯本側に構内踏切がありました。

下りホーム側の駅舎。登山鉄道では唯一の終日無人の駅。1920年(大正9年)に開業しています。駅舎はオリジナルでは無いと思いますが建築された年月日は不明。駅に通じる道は軽自動車も通れない程の細い道、地図でも確認できません。何だか秘境駅みたいですが駅前には深澤銭洗弁天の売店「しのや」さんがあってお守りやお札を販売しています。

上りホームの右上に深澤銭洗弁天があります。弁天様は大正時代の相場師で松井証券操業者の松井房吉さんが寄贈したものです。当時、駅周辺の温泉街は松井証券の社員旅行や宴会で賑わったそうです。芸者さんも大勢いたのだとか。車内はガラガラです。

停車時間内では、弁天サマまで行けないので、カメラで寄ってみました。

運転士さんも交換待ち。ホームを延長した際に見えている塔ノ峰隧道の中にポイントを移設したのですが、駅の敷地に外部から重機は搬入できません。何しろ軽自動車も入れないのです。機材・資材は強羅駅に駐められていたモニ1形電動貨車で運べるモノに限られ、トンネル拡張は人海戦術、手掘りで作業が行われたのです。

次は終点・出発点の箱根湯本駅です。

【私鉄に乗ろう95】箱根登山鉄道 その20 に続きます。

追記:

このコラムは、2019年9月に書かれたものです。御存知の様に、2019年10月12日に関東から東北に上陸した大型で強力な台風19号は、関東甲信越と東北地方に甚大な災害をもたらしました。台風によって亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。被災された皆様にお見舞い申し上げます。

また台風19号は箱根登山鉄道にも甚大な被害をもたらしました。箱根周辺では、1,000ミリを越える前代未聞の雨量が記録されたのです。ニュース映像などを見る限りでは路盤や橋梁などの被害は凄まじい状態です。長い歴史と風雪に耐えてきた箱根登山鉄道が箱根湯本駅と強羅駅間で運休という事態になっています。現在は代行バスが運行されています。幸い箱根登山ケーブルカーは10月16日から運行が再開されています。

被害に遭われた箱根登山鉄道にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧を心からお祈りいたします。

また復旧などの情報も随時。お知らせいたします。

(写真・記事/住田至朗)