鉄道の駅、車内は騒音に満ちています。最近は映像による案内情報も表示される車両が増えてきましたが、やはり案内情報の中心は案内放送です。聴取能力の低下しがちな高齢化の進む社会で「聞き取りやすさ」は重要なテーマです。

音声の聞き取りやすさを向上させる「音声明瞭化技術」が都営地下鉄五反田駅で実用化されたというニュースです。神戸に本社をおくTOA(株)が聴取実験などから独自開発した「音声明瞭化技術」が実用化されています。

以下はTOA(株)からのメッセージ。

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TOAは案内放送システムで、あらゆる公共空間における快適なコミュニケーションの実現を目指しています。そのための独自の取り組みとして、加齢による難聴者が聞き取りやすい音の調査を実施。高齢者を対象とした聴取実験結果から、「はっきり聞こえる」という印象を得られる度合いや、音声の了解度(音声の聴き間違いの度合い)は音声の周波数や音圧の違いで変化することが分かっています。また健聴者に対する同様の実験では、騒音が大きい環境下での聴取条件で了解度が改善する結果が得られました。

これらを踏まえてTOAは、構内アナウンス放送の明瞭度改善を課題としていた都営地下鉄五反田駅改札口にて、音声明瞭化技術の実用化を試行。これまでスピーカーの増設だけでは十分な効果を得られませんでしたが、本技術を活用した音響設計により、放送がただ“聞こえる”だけではなく“聞いて理解できる”ようになりました。もちろん、高齢の難聴者にとっても明瞭で聞き取りやすく、一人でも多くの方に確実に情報を届ける、という点でも貢献しています。

またTOAは、実施した聴取実験の概要とともに、了解度改善効果が期待される音響設計や音響調整を行うための注意点、および工夫について、論文にて報告。「鉄道と電気技術」誌にて「環境に応じた駅放送設備の音響改善」というタイトルで発表しています。駅改札口という聴取実験の条件と異なる音響空間において、聴取者に明瞭化した音声を届けるために必要な、使用する機器や環境の特性を考慮した調整について紹介しています。

ちょっと専門的ですが、実際の実験内容などについての「環境に応じた駅放送設備の音響改善」。(https://www.atpress.ne.jp/releases/181666/att_181666_1.pdf)

鉄道に乗っていて困るのは、駅や車内の案内放送が環境騒音で聞き取れないことです。最近の案内放送は録音されたモノが増えて、聞き取りやすくなってはいます。しかし肝心の緊急事態、例えば列車の遅延などの場合は駅の係員や車掌のアナウンスになります。これが、個人差が激しくて、モニター技術が発達しているにも関わらず、ほとんど聞き取れない音量・発音で案内放送が行われることも多く、実際に困ることがしばしばあります。「音声明瞭化技術」を活かして欲しいと切に思います。