読鉄全書 池内紀・松本典久 編 東京書籍【鉄の本棚 23】その7

2019.06.13

本書の共同編集者である松本典久さんの「シベリア鉄道の旅」(1991年)

実は松本典久さん、この本を読むまで存じあげませんでした。1955年(昭和30年)生まれ。大学卒業後出版社勤務を経てフリーランスの鉄道ジャーナリストで多くの編著があります。と言っても鉄道趣味歴の浅い私は未読。

シベリア鉄道と言えば、航空機以前は日本から最も早くヨーロッパに渡る手段でした。ウラジオストクからモスクワまで約1週間の鉄道旅。関川夏央さんの『女流 林芙美子と有吉佐和子』(集英社/2006)で林芙美子が1931年(昭和6年)シベリア鉄道でパリを訪れた時の評伝を読んだことを思い出しました。岩波文庫から『林芙美子紀行集 下駄で歩いた巴里』も刊行されています。この中のシベリア鉄道の既述が面白かったと記憶しています。林芙美子さんってホントに物怖じしない不思議な感覚を持った作家だったのですね。

同じく関川夏央さんの『東と西ー横光利一ーの旅愁』(講談社/2012)にもヨーロッパを周遊した横光利一がシベリア鉄道で帰国してます。

余談ですが高校生の頃に新潮文庫などで横光利一を読みました。『春は馬車に乗って』や『日輪』は大正時代の作品だったのですねぇ。

当時の文庫は「名作」が収録されていて、同時代の作品が文庫化される様になったのは、1971年(昭和46年)に創刊された講談社文庫が嚆矢だったと思います。最初に買った講談社文庫は星新一さんの『N氏の遊園地』だったかな。大庭みな子さんの『三匹の蟹』や中山義秀さんの『咲庵』なども初期の講談社文庫で読みました。咲庵は明智光秀の雅号です。中山義秀さんは横光利一さんの親友でした。

さてシベリア鉄道、松本さんはモスクワからウラジオストクを目指して9289kmの鉄道旅に出ます。1991年(平成3年)1〜2月の鉄道旅。その年の12月にはソビエト連邦が崩壊してしまうので、ソ連時代のシベリア鉄道の貴重な記録です。松本さんは、その後も何度かシベリア鉄道に乗られた様です。

ところがシベリア鉄道、正確にはチェリャビンスクからウラジオストクまでの7416kmを指すとのことです。特にモスクワからシベリアまでのルートは、1904年(明治37年)の全通開業時、2001年以前の本線(北ルート)、南ルート、更に現在の本線があります。

松本さんのルートは、モスクワ・カザン駅から「シベリヤク号」でスベルドロフスク〜ノヴォシビルスク。ここで下車して数日を過ごした松本さんは「ロシア号」に乗り換えて担当車掌さんと仲良くなってウォッカを酌み交わしたりして3日後にイルクーツクでまた下車。3日間を過ごしてイルクーツクから「ロシア号」に再び乗車。二泊四日でハバロフスク。ここで「アキアン号」に乗り換えてウラジオストク。この旅に三週間かかったそうです。

前面展望はちょっと難しそうですが、シベリア鉄道にも乗ってみたいですね。景色を見ていると退屈しないので。

(写真・記事/住田至朗)

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