日高本線様似
写真は様似。2014年3月撮影。

JR北海道は先日11月9日(水)に「一連の台風被害による日高線(鵡川・様似間)の復旧費について(概要)」を発表した。

まず平成27年(2015年)1月、高波による土砂流出で鵡川〜様似間が不通になっている。さらに9月の台風17号によって厚賀・大狩部間、豊郷・清畠間で路盤が流出した。その修復費用が38億円。

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項目別では以下。

①厚賀・大狩部間 防災対策費(最低限)    30億円
②厚賀・大狩部間 平成27年9月被災箇所復旧費 2億円
③豊郷・清畠間  平成27年9月被災箇所復旧費 6億円

そして平成28年夏の台風被害による復旧費が48億円かかると発表した。

①台風7・9・11号による被災箇所復旧費     2億円
②台風10号による被災箇所復旧費        17億円
③厚賀・大狩部間 防災対策の強化       29億円
 ※護岸改築、斜面吹付枠工

上記の復旧費用が86億円。

さらに沿線自治体への説明会で示した、今後10年間で最小限の安全性確保・運転実現のために必要な防災、土木建造物の老朽化対策費が53億円必要としている。

JR北海道が出している数字のトータルだけで139億円にもなる。

一方、JR北海道が平成28年2月に公表した数字を見ても、運行が不通になる前の平成26年、日高本線の輸送密度は298人/日、営業収益が1億4300万円に対し営業費用が16億8700万円かかっている。つまり年間15億円以上の赤字を出す路線なのだ。ちなみに営業係数(100円稼ぐために必要なコスト)は1179円という数字である。JR北海道に心底同情したくなる。

この路線を走らせるために139億円を投資しても資金はまず回収出来ない。

以上を踏まえて、JR北海道が廃止を予定している駅をみてみる。データは2010年の国勢調査の数字。

西様似。
西様似

終点様似の隣駅。1937年(昭和12年)開業。もちろんかつては有人駅で列車交換設備もあった。

駅を中心にした半径500mの範囲に147世帯322人が暮らしている。生徒学生は1人も居ないが小売店は1軒ある。半径を1kmに広げると287世帯645人が住んで居る。やはり生徒学生はいないが小売店は5軒に増える。半径を2kmにするとおそらく様似の集落が含まれるのだろう。日高本線は曲がりくねっていて営業キロは2.9あるが直線距離は2km少々だ。襟裳国道に沿って住宅や店舗がある。694世帯1607人の住民がいて、生徒学生も32人となる。小売店は20軒に増える。

この住民数で鉄道利用者が殆ど居ないのは不思議な気もする。

鵜苫。”うとま”と読む。
鵜苫

西様似の隣駅。1937年(昭和12年)開業。島式ホーム1面1線。かつては2線の列車交換可能な駅だった。

鵜苫

駅を中心に半径500mに47世帯102人が暮らしている。西様似より住民は少ないが、生徒学生は4人居る。小売店は無い。半径を1kmにすると112世帯269人に増える。生徒学生も22人が居て、小売店は3軒。さらに徒歩30分圏内の半径2kmでは276世帯689人が住む。生徒学生は変わらず22人だが、小売店は1軒増えて4となる。

こう言っては何だが予想外に人が住んで居る。しかし誰も鉄道を使わないのは何故なのだろう。

ちなみに同じ日高本線でも、筆者の大好きな大狩部駅、正に太平洋の波に洗われる様な駅だ。
大狩部

ここは住民が多くない。駅から半径500mには14世帯31人だし、生徒学生も居ない。小売店も無い。半径を1kmにしても19世帯42人しか住んで居ない。生徒学生も0、小売店も0だ。さらに半径を2kmにするとようやく101世帯253人になる。生徒学生も20人になり小売店も2軒ある。

しかし実際に筆者が日高本線に乗っていた時、始点の苫小牧から乗車して大狩部で降りた人が数人(も)居たのだ。鉄道利用の法則は分かり難い。

仮に今すぐ復旧工事に取りかかったとしても運行が可能になるのは4年後と言う。日高本線はどうなるのだろう。

※写真は全て筆者が撮影したものです。